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茜。

 自販機でジュースを買い、僕はゆっくりと歩く。

5月の中旬なのになんて暑いんだろう…もう、夏が来たのか?。

「花水木…もう、終わりだろうな。」

ちょっとセンチメンタルな気持ちになる。

普通は夏の終わりとか、卒業シーズンの辺りになるとそういう気持ちになるんだと思うけど、

不思議と僕はこの花水木の花の時期が終わりを迎えようとするこの時期に、なぜか、なる。

 ふと、咲良の家を見る。

咲良の部屋の明かりはまだついているようだ。

僕は大きくため息をつき、自分の家の門のドアを開けようとした時、何処からかすすり泣く声がした。

「…。」

僕は、ドアを開けるのを止め声がする方へ歩く…。

泣いていたのは、茜ちゃんだった。

座り込み、顔を埋め泣いている。

「茜ちゃ…ん?。」

「ひっく。」

茜ちゃんは僕の方を見ようとはしない。

「茜ちゃん…。」

「…。」

僕は茜ちゃんの隣に座り、茜ちゃんの頭をそっと撫ぜる。

「茜ちゃん…も、見たの?。」

茜ちゃんは小さな声でそう聞いた僕の言葉にびっくりし、僕の顔を見た。

涙でぐしゃぐしゃの顔…いつも明るく元気で煩いぐらい喋る茜ちゃんの泣き顔を、長い間お隣さんをしているが初めて見る。

「しゅ、瞬…も…知っ…て、たの?。」

震える詰まった言葉にならないような声で言う。

「うん。」

「っく…そう…なんだ…。」

苦笑いする茜ちゃん。

「…。」

「そうだよね、見えるよね?。あんなにオープンにされてたら…イヤでも見えるよね?。」

「うん。」

「でも、なんであんなに綺麗なんだろう?。」

泣きはらした顔で咲良の家を見つめる茜ちゃん。

僕と同じ事感じたんだ、あのふたりの行為を綺麗と感じたんだ。

「…。」

「あんな綺麗な姿見せられたら、私…。」

「茜ちゃん?。」

「ひなたくんに…うんん、ごめん、なんでもない。」

どんな気持ちなんだろう?、彼氏とその妹の行為を見て、どんな気持ちがするんだろう?。

僕だったらきっとはらわたが煮え繰り返りそうな感じがすると思うけど…。

「茜ちゃん?。」

「うん?。」

「あ、なんでもない。」

聞けない…こんなに泣き腫らした顔の茜ちゃんに聞けるわけがない。

「私、中入るね。」

立ちあがる茜ちゃん、ほのかにいい匂いがする。

「あ、うん。おやすみ。」

「おやすみ。」

僕も立ち上がり咲良の家を見つめ家に戻る。

咲良の部屋の電気はもう…消えている。



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