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あがってはシャワーの様に落ちてくる花火。

ずっと4人の気持ちが交互してる場面で読みにくいかもしれません。

 4人の気持ち…。

二人の兄妹。

二人の幼馴染。

 

 僕の気持ちはもうはっきりしている。

今は、それを咲良と茜ちゃんに言うべきか言わずにこのままでいるべきかを考える。

ベットの上で天井を見つめながら家の前を通る車の音に耳を傾ける…。


 

 茜ちゃんに言われた事を考えてみる。

私は瞬くんを好き…大好き。

時間が経てばきっとお兄ちゃんは元に戻れると思うけど…。

でも、お兄ちゃんをこのまま知らんふりして見捨てる訳にはいかない。 

いつも私を守り優しくしてくれたお兄ちゃん。

あの川辺に雨の中傘もささずに心配して迎えに来てくれたお兄ちゃんを思い出す。

急いで自分の服を私に着せてくれたお兄ちゃん。

今度お兄ちゃんをこの場から救ってあげるのは私なんだと、今、確信する。


 

 私は、咲良ちゃんには勝てないとあの時感じた。

ひなたの妹以上に感じた咲良ちゃんへの気持ち。

ひなたに言ってあげるべきかな?あなたの咲良ちゃんのお母さんへの感情は過去のものなんだよ。

あなたは目の前にいる咲ちゃんを愛しているんだよ。って。



 最近ふと目を閉じると、八重子さんではなく咲良の顔が浮かんでくる。

八重子さんが亡くなってから色々な事を考えていると、八重子さんを好きで胸がドキドキしてたのは小学校の時親父と八重子さんが再婚した数日までのような感じがしてきた。

忙しい両親に代わって咲良を守ってやらなければといつも思っていた。

あの咲良の笑顔をずーっと見たいたい…。

でも咲良には大切な人だと想う人ができた…。

兄の俺を必要としてはくれないのか…。


 

 明日は花火大会の日だ…。



 僕は咲良に電話をする。

「明日、気晴らしに一緒に花火を見に行こう」

『うん』

僕が何かを言いたいか知ってるのか、咲良しは小さな声で返事をする。

「じゃぁ、夕方の六時頃咲良の道の方の歩道橋の下で待ってるから」

『うん、じゃぁ…』


 私はひなたに電話をした。

去年の花火大会の帰り道約束した。

『来年も絶対一緒に行こうね!』

ひなたは電話に出てくれるかな?

呼び出し音10コール。

やっぱり会いに行った方のが早いかな?

私は諦め、PWRHLDのボタンを押そうとする…。

『はい』

「ひなた?」

『ああ、茜…』

「知ってる?明日、花火大会だよ…」

『あ、そうか…もうそんな日になるんだ』

「気晴らしにちょっと行かない?」

『うん、そうだね…』

「じゃぁ、去年と一緒の所で夕方の六時頃待ってる」

『うん』


 

 今日は雲一つない真っ青な晴れた日。

でも、僕の気持ちはこの空の様に晴れた気持ちではなかった。

咲良に別れを告げる。

そう決めたから…。

 午前中はまだ終わっていない宿題を片付ける。

振られる時よりも振る時の方が辛い感じがする。


 「瞬っ、母さん達行ってくるからね」

「何処に行くんだよ」

「言わなかった?毎年恒例のバーべキューよ」

毎年恒例、花火大会の日に茜ちゃんの親達と複数のご近所が集まってするバーベキュー。

「あ、そうか」

「冷蔵庫に素麺入れといたから昼はそれ食べて、夜は適当に食べて」

「分かった」

「じゃぁ、バイ!!」

人の気も知らないで…。

ウチの親と茜ちゃんの親、僕たちの事知ったらどう思うかな?きっと殺されるだろうな…。

笑っちゃう。

人の人生どうなるかなんて誰にも分からないね。

まだ高校生になりたてなのに…そんな事思う僕は親父か?

ああ、また勉強どころじゃなくなった。

「寝よっ」

僕は椅子からぼてっと床に落ちた。

親達がワイノワイノ楽しそうに話している。

僕はそれを聞きながら深い眠りについた。



 「暑いっ」

エアコンのタイマーが切れた暑い部屋、深い眠りについていた僕は目を覚まし起き上がりお腹をボリボリ掻く。

「んっ、何時だ?」

携帯電話で時間を見ると五時三十分。

やっ、やばい。

僕は急いでシャワーを浴び服を着替えた。

はぁ…なんか頭がぼーっとする…。

部屋に戻り、咲良の家の方を見と咲良が家から出てくる。

浴衣姿の咲良…。

「さっ、行くか」

財布をジーンズの後ろのポケットに突っ込み家を出、待ち合わせの場所に走っていく。

「お待たせっ!」

「時間前だね」

ニッコリ微笑む咲良の浴衣姿、紺色の浴衣の生地がただですら肌の色が白い咲良をより一層白く綺麗に見せる。

「咲良、すごく似合ってるよ」

「ありがとう」

しばらく見つめあってたら後ろから茜ちゃんが歩いてきた。

気まずい。

「瞬達も花火大会?」

「ああ…」

黄色い浴衣姿の茜ちゃんらしい茜ちゃん。

何度も見た事があるけれど今日は違う気持ちで茜ちゃんを見る。

色っぽくて抱きたい…と想う。

咲良がいてもやっぱり茜ちゃんを好きだと想う。

咲良と茜ちゃんを交互に見ていると、

「お待たせ、茜」

咲良の兄貴が歩いてきた。

咲良の兄貴は僕をちらっと見、茜ちゃんの手を引っ張り歩き出す。

「あっ、ひなっ…」

茜ちゃんは振り返り僕をちらっと見ると咲良の兄貴を見た。

なんだよ茜ちゃん結局上手くいってんのかよ。

ぎゅっと拳骨を握る。

「さっ、私達も行こうっ!」

ずっと茜ちゃんを見ていた僕の気持ちに気づいたかの腕に自分の腕を絡ませ咲良は歩き出す。

「あ…うん」

咲良の存在を忘れてた。

僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



 人が行き交う中、僕は咲良との別れの事を考えている。

ぎゅっと僕の腕を掴む咲良。

言わなきゃ…帰りに言わなきゃ…。

ヒュールルル、ッバ〜ンッ。

花火が上がると足を止めて空を見上げる人々。

しばらくの間、辺りが明るくなる。

僕は花火では咲良の顔を見て、まだ言うつもりではなかった言葉を次に上がった花火の音と同時に言う。

「僕達、終わりにしよう…」

こんな時に言うなんて僕はなんて汚いんだろう。

花火の音と見物人の声で聞こえてないかもと、言った後で思った僕に咲良はコクンと頷く。

「今日言われると思ってた」

思いもしなかった言葉が返ってきた僕は驚いた。

「…」

「この花火大会が終わったら、私達も終わりね」

咲良は、きっと気づいてたんだ…。

僕は俯き、「ごめん」と誤った。

最低だね僕…。


 思ったより冷静に終わりを迎えられそうな気がする。

色々考えて、もう決めた。

私はお兄ちゃんと歩いていこう。と決めた。

今度は私がお兄ちゃんを…お兄ちゃんがママを見ていようが、私はママの代りだろうがそんなのはもうどうでもいい…お兄ちゃんを元の元気なお兄ちゃんにできるなら、私はママの代りをしよう。

でもこの決心を、私は瞬くんには言わない。

瞬くんへの最初で最後の私の意地悪…。



 ひなたはずっと空を眺めてる。

去年もこの川原で二人座って見たね。

「ねぇ、ひなた」

「ん?」

「前も言ったけど、ひなたはきっと咲良ちゃんが好きなんだよ」

「…」

「ひなたは、今、お母さんが好きなんだと思い込んでるだけだと思うの…」

ひなたは私の顔をじっと見つめる。

「…」

「今考えないで思い出すのは誰…?」

私が聞いた質問にひなたは俯き、「咲良」と答える。

「でしょ?私でもお母さんでもない、咲良ちゃん…なんだよ」

「…」

「ひなた?」

私はひなたの顔を見て微笑む、ひなたも私を見て微笑む。

「ごめん…そう、みたい…」

「謝らないで」

謝られなくてもいい。

私の気持ちはもうひなたにはない。

でも、この事はひなたにはナイショ…。


 茜には悪い事をしたと思う。

告白してきた茜を可愛いと思ったのは本当の事…。

でも、可愛いと思うがそれ以上の気持ちは沸かなかった。

ごめん…茜。

最後までごめん…な。 


 

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