グラスの中を揺れる氷。
瞬くんと茜ちゃん…とても切なく見えた。
愛し合ってるの?
私達みたいに好きではなく、ただの恋愛のおままごとのようなモノではなく、愛を感じた。
茜ちゃんが年上だから…?それは違うような感じがする。
あれから何処にも行く所がなく、仕方なく家に帰った私をお兄ちゃんとママは何もなかったかの様に接する。
きっとママはお兄ちゃんを受け入れないと思う。
茜は瞬の家から帰り、北側の窓からひなたの家のを見つめていた。
大好きなはずのひなたの事を考えると必ず瞬の所にいる。
安息を求めると必ず瞬に会いたくなる。
瞬は咲良ちゃんが好きなのに私が救いの手を求めると助けてくれる。
ただの言葉の慰めではなく…身体の奥底にある何かで…。
私は…自分の気持ちが分からない。
次の日、朝からひなたが家に来る。
「どうしたの?」
「明日から合宿だから…そろそろ返事貰おうと思って」
「あー」
返事…そんな事すっかり忘れてる。
「今からうちこいよ」
「あ、でも、私…」
「何もしないよ」
「あっ、でも」
戸惑う茜の手を引っ張りひなたは歩き出す。
ひなたの後姿…以前の私なら付き合って深い中になってもまだドキドキしてた。
私、ひなたの事を…。
ひなたの家に行くと瞬もいた。
…だから私を呼んだの?
瞬は私を見るとソファーの隅っこに座りかえる。
「あ、ありがとう。瞬も来てたんだ」
「うん」
「はい、茜ちゃんどうぞ」
「あ、ありがとう」
咲良ちゃんがアイスティーを出してくれる。
「お兄ちゃんも?」
「ああ…」
なんか変な感じ、グラスの中の氷が揺れるのを見る。
「はい。今日は二人どうしたの?」
「より戻しの返事貰おうと思って」
「えっ?」
ひなた以外の私達三人は驚いた顔でひなたを見る。
「俺は別れたつもりないんだけど…」
「あ」
「返事聞かせて?」
「あ、うん、いい…よ。」
私はちらっと瞬の顔を見るけど瞬は俯きグラスの中の氷をストローで回しアイスティーを飲んでいる。
「ほんと?」
複雑な気持ち…。
なぜか知らないけど僕は無償に苛立った。
咲良の家からの短い帰り道、僕と茜ちゃんは無言で歩く。
僕は家の前を通りすぎる。
「瞬、何処行くの?」
「あ、ジュース」
「買いに行くの?」
僕が苛立っているのが分かるのか茜ちゃんは遠慮した口調で聞く。
茜ちゃんが悪いわけではないのに…。
勝手に苛立ってるのは僕。
「私も行くよ」
「そう…」
茜ちゃんの顔を一度も見ず、僕は自動販売機に向かった。
「茜ちゃんはどれにする?」
ジュースをどれにしようか指でボタンを触りながら迷う茜ちゃんをちらっと見る僕に気づいた茜ちゃんは僕を見る。
僕はさっと視線をそらした。
「瞬、どうしたの?」
「何が?」
「機嫌…悪そうだね」
「そう…?それより茜ちゃん、咲良の兄貴とより戻って良かったね」
「えっ?」
茜ちゃんは買うつもりじゃなさそうなジュースの所のボタンを押す。
「ジュースこれでよかったの?」
僕は座り込み取りだし口のジュースを取り、茜ちゃんにジュースを渡そうと茜ちゃんを見上げると、
茜ちゃんが僕をじーっと見つめ涙をポロポロ流している。
「…」
「どっ、どうしたの?」
「…」
瞬に、良かったね。と言われてなぜか胸が苦しく悲しくなる。
ひなたに咲良ちゃんへの気持ちを聞かされた時もすごく悲しかった。
立ちあがり私にジュースを渡そうとする瞬に私は抱きついた。
「あっ…」
ガァンッ…。
瞬の手からジュースの缶が落ちる。
「茜ちゃん…?」
「…」
茜ちゃんが急に抱きついてきた。
ほのかにいい匂いがする。
僕をぎゅっと抱きしめる茜ちゃん。
「茜ちゃん…」
「…」
僕も茜ちゃんを強く抱きしめ返し、
「茜ちゃん?」
そして泣きながら僕の腰をぎゅっと握り締める茜ちゃんの両手をそっと外し、
僕は激しくキスをする。