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茜色の花。

 わぁぁ。

こんな静かな所で…。

普通のボリュームの着信音が倍近い音で辺りに鳴り響く。

「はい」

『茜ちゃんっ!、今何処?』

心配そうに慌ててる瞬の声。

「何処だと思う〜。学校の保健室」

何もないよ、の声で話す自分。

『なんでそんな所にいるの?』

「静かでいいよ〜。瞬もおいでよぉ〜」

『分かった!。今から迎えに行くからそこいてよ』

えっ。

「…」

瞬の声を聞くとなぜだか自然に涙が出る。

「優しくしないでよぉ〜。あの馬鹿ぁ」



 僕は急いで茜ちゃんを迎えに走る。

咲良の兄貴は茜ちゃんを追いかける事もしないでただ、『部屋を飛び出して行った』と言う。

なんてやつなんだ。無責任にもほどがある…自分の彼女ぐらい責任持てよ…そう思う。


 コンコンッ。

窓を叩く僕に気づくと茜ちゃんは保健室のドアを開ける。 

「はぁ…はぁ…。茜ちゃん?、よく入れたね」

「瞬、あの噂は本当だよ」

そんなのん気な事言ってる茜ちゃん。

元気そうで良かったと安心する。

「こわ〜、よくこんな所に一人でいたね」

しーんと静かな不気味とも思える保健室。茜ちゃんがいたのが理科室と音楽室でなくて良かったと小心者の僕は思う。

「このくらいの静けさが今はいいの」

小さな声で茜ちゃんは言った。

「…」

月明かりで微かに見える茜ちゃんの顔の表情…。

「ねぇ、瞬知ってた?」

「ん、何を?」

「ひなたと咲良ちゃん…本当の兄妹じゃないんだって」

「…」

本当の兄妹…じゃぁ…ない?。

えっ?。

「あはっ、びっくりでしょ?」

本当の兄妹ではない…って言う事は…んんん…つまり…。

なんか頭が…。

なんか複雑な話になりそうだ…そう思いながら、なんなんだと思いながら…今の現状をよく理解できないまま僕は、

「そうなんだ…」と、だけ呟いた。

 でも少し経つとこんがらがった頭の中の片隅で、本当の兄妹と言う言葉が僕の心臓を締め付けながら暗闇へと連れ込む。

徐々に感じるショック。

心臓の鼓動がバクバクと大きく早く打つのが分かる。

「瞬?」

「…」

放心状態の僕。

「瞬」

ぼーと立ち尽くす僕に茜ちゃんはそっとキスをする。

「あか…ね…ちゃん?」

「私ね、なぜだか分からないけど、瞬がいたからひなたと別れられた」

「茜ちゃん、咲良の兄貴と別れたの?」

「…うん」

僕は咲良と付き合ってもない、ただ成り行きで寝ただけの存在。

同級生以上友達未満。

ご近所さん以上友達未満。

僕ってなんなんだろう…?。

告白をした訳でもないのにこっ酷くフラレタ感じ。

『瞬がいたからひなたと別れられた。』

茜ちゃん…。

「辛い時はいつでもそばにいてあげるから…」

「瞬」

「僕が慰めてあげるから」

「瞬…」

そっと茜ちゃんにキスをする。

傷ついた僕達…。

一緒に慰め合おう。

傷を癒そう。

僕と茜ちゃんはその夜、月に明かりに照らされた薄暗い静かな保健室で二度目の愛ない行為をした。

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