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春…薄い桜色のカーテン。

 僕はいけないものを見てしまった…。

あー、見るんじゃなかったと後悔もする。


 でも、それはとても綺麗な光景だった。


 暖かい春の夜、僕は机に向かい眠気眼を擦りながら実力試験のテスト勉強をしていた。

僕の部屋は二階にあって窓は北向きにある。

僕はただなんとなく道路一本離れた白い家の窓にふと目をやる。

夜だというのに開けっ放しの窓…電気の明かりで分かる部屋の中と薄い桜色のレースのカーテン。

その、桜色のレースのカーテンが春の夜風にそっと気持ち良さげに揺れている。

(いかん、催眠術にかかりそう。)

頭を左右にぶるぶると振り、勉強再開、背伸びをし大きく息を吐いた僕は風に大きく揺れたレースのカーテンの隙間に目を疑った。


妻夫木咲良つまぶきさくら

 

 僕んちと咲良の家が挟む道路でここはA市とB市にみごと分かれる。

だから小中は当たり前の様に違って、高校に上がり僕は近所に住む咲良を知る。

『砺波くん、家近所だね。』と、咲良がニッコリ笑い話かけてくれたのはつい最近の事だ…。

 透き通るような白い肌、頬と唇は薄いピンクで愛らしい瞳をしている、こんな美少女が道を隔てて

住んで居たなんて驚きだった。


話がそれた…。

 

 その咲良が部屋の中、裸体で立っている。

初めて見る生の裸体に僕の目は釘づけになる。

しばらくして見覚えのある男が部屋に入ってくるやいなや裸体の咲良を抱きしめそっとキスをした。

薄い桜色のレースのカーテンはそんな二人を優しく包むように夜風に揺れる。

 すーっと通った首筋、顎をそらに向ける咲良、男は咲良の白いほどよい胸の横からそっとキスをする…。

キスをされる度に開いてる様に見える咲良の口。

僕はそんな咲良がいつもより一段と綺麗に見えた。

風に靡くレースのカーテン、変わる場面。

初めて見るその営みに僕はいやらしい気持ちではなく、美術館で美しい絵画を見ているそんな感じで

見惚れていた。

男は咲良の身体を上からきっと足の爪先まで愛すとふたりは窓から姿を消した…。


 綺麗過ぎる光景…薄い桜色のカーテンに包まれた美しい情事。

しばらく放心状態…テスト勉強どころではなくなった。



 

 ピ、ピ、ピ、ピ、ピ。

「うんんん〜。」

寝たのか寝てないかの分からないような状態で僕は鞄に教科書を詰め込み、朝食も食べずにぼーっとTVを見る。

「瞬、時間だよ。」

母さんの声でハッとし鞄を持って玄関に向かう、ドアを開けると真っ直ぐ先には、咲良の家。

僕は咲良の部屋の窓を見つめ、小さくため息をつく。

(さ、行こう。)

進行方向を見た俺の前に咲良の家を悲しそうに見つめる隣の家の1つ上の茜ちゃんが立っていた。

「どうしたの、茜ちゃん?。」

「あ、おはよう瞬。」

茜ちゃんは僕を見て優しく微笑む。

「どうしたの?、元気ないね。」

「うんん、何もないよ。」

そう言えば、茜ちゃんは咲良の兄貴、妻夫木ひなたと付き合ってるんだ。

「今日は、彼氏と行かないの?。」

「えっ?、あ、向こうで待ち合わせ。」

茜ちゃんはなぜか戸惑っている様子で言う。

「ふーん。」

「瞬、途中まで一緒に行こうか?。」

「うん。」

なんとなく片言の言葉。

いつもならベラベラ煩いほど喋ってくるのに、ほんと今日は変だと思いながら、僕と茜ちゃんは歩道橋を昇り、茜ちゃんがいつも咲良の兄貴と待ち合わせしている歩道橋の下まで歩く。

「茜、おはよう。」

咲良の兄貴が茜ちゃんに声をかける。

「あ、うん。」

目を合わさずに素っ気無い茜ちゃん。

そんな茜ちゃんを見、僕は咲良の兄貴の顔を見た。

「あ…。」

思い出す、桜色のレースのカーテン越しの情事。

裸体で立っている咲良の部屋に入って来た見覚えのある男。

見覚えのある男…それは、咲良の兄貴、ひなただった。

えっ、どう言うこと?。

あ、なんだ?。

なんて言うんだこういうの…なんて言うんだった、こう言うの?。

咲良と兄貴…咲良と兄妹…兄妹の情事…あ、近親相姦?。

頭が変になりそう。

変になりそうな頭を必死でくい止めようとしていると、今度は後ろで走りながら咲良が呼ぶ。

「お兄ちゃ〜ん。」

うわ〜っ、どんな顔してふたり見ればいいんだぁ????。

僕が思わず茜ちゃんの顔を見ると、真っ青?な顔で黙って突っ立っている。

えっ、さっき悲しそうな顔で咲良の家を見つめてた茜ちゃん…まさかっ、まさか茜ちゃん…?。

茜ちゃんも昨夜のふたりのことを見てしまったんだと僕は気づく。

うわ〜。

「あっ、おはよう。砺波くんも一緒だったんだ。」

「あ、うん。」

嬉しそうにニッコリ笑う愛らしい咲良と昨日の咲良が交差し、僕はとっさに目をそらす。

しまった目をそらしたら変に誤解されちゃうだろうが…目をそらす必要はないのに…咲良達は俺が見ていた事を知らない…。

なんて色々考えている僕の手を咲良はギュッと握り走り出した。

「邪魔したら行けないから、先行こう。」

「えっ、あっ?。」

僕の手を強く握りしめる咲良の白い手を見て、僕はなぜか不思議な気持ちになった。








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