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夢想花  作者: ことみ
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5.紫蘭の事情

「食事の間」につくと、まだ紫蘭はきていなかった。まだ仕事がおしているのだろう。鈴音は着席し、紫蘭を待つことにした。


「鈴音様。食前酒の方はいかがなさいますか?桃酒のかるいものにございます。うかがってから、ご用意の方をと思いまして」

「いただくわ。ありがとう。・・・あなたの名前は?」

(ほたる)にございます、鈴音様。以後、お見知りおきくださいませ」


蛍と名乗った女性は、鈴音より2.3歳年上のようだった。長い髪を高く結い上げ、凛とした瞳は、意思の強さをうかがわせた。考えていると、視線が合いにっこりと微笑まれる。そのとき、紫蘭の訪れを知らせる声が響き渡った。鈴音が視線をむけると、紫蘭がややあわてた様子で、席に向かい着席した。


「待たせてすまなかったな。会議が長引いてしまった、許してほしい」

「いいえ。仕事はきちんとこなすべきよ。でも、ありがとう。急いできてくれたのね、嬉しいわ」

「ああ。まず、食事にしよう。話は食べながらということでな。蛍、食事の用意を」

「かしこまりましてございます。食前酒は、本日桃酒となっております」

「ああ、頼む」


蛍が後ろ女官に目配せをすると、料理が続々と運ばれてきた。斉蓮の屋敷で多少、慣れているとは思ったけれど、料理の数やそれを運ぶ人数はやはり、王太子宮のほうが多くて目をぱちぱちとしてしまった。


「まずは、乾杯の方を。初めての食事に、乾杯!」

「乾杯!よろしくお願いします」


席が離れているため、お互い杯を掲げて乾杯したあと、飲みほす。かるいもの、と聞いていたが思いのほか度数が高く、せき込んでしまう。大丈夫か、と心配げにきかれ若干涙目になりつつ、大丈夫と答える。どうも、日本の尺度ではかったのがいけなかったらしい。


「食事を共に、と言ったのだが、もちろん初めてここへきたというのもある。これからも共に食事をと思っているが、聞きたいことがあるだろうと思ってな。すでに、斉蓮にも早馬を飛ばしたそうではないか」

「ええ、そう。斉蓮様にも聞きたいことがあったし。紫蘭にもよ。あなたからじゃないと聞けないことも、あるはずよ。そうでしょう、紫蘭?」

「わかっている。まずは、軽く食事といこう。空腹では、まわる頭もまわらぬぞ?」


それもそうだ、と思い首を縦に振り、同意の意を示す。そのあとは、静かに食事を勧めていく。お互い無言も変だと思っていた矢先、琉香が鈴音の後ろに控え、報告する。


「お食事中のところ、大変失礼致します。旦那様よりの伝言にございます。謁見のあと、控えの間にて会い、話をしようとのことにございます。では、失礼します」


ありがとう、と礼を述べ、紫蘭に視線を向ける。待っていたかのように、紫蘭はこちらをじっと見つめていた。真剣ともいえる視線が、目があったとたん、ふっと柔らかな視線にかわる。緋色の瞳が柔らかくなるときが、鈴音は好きだと思った。彼の表情で一番好きと言えるかもしれない。


「時間がとれたようで、よかった。あやつも、最近は仕事に忙殺されていてな。私でさえなかなか会えぬのだ。・・・さて、私からの話なのだが、よいか?」

「ええ。一番聞きたいのは、あなたからだから。話して、紫蘭」


かちゃ、とどちらからともなく箸をおき、見つめあう。


「別れ際に話した、侑家のことだ。私がそなたを話を斉蓮からきくまでは、家柄や表向きの評判から、侑家の紗南が正妃候補の第一にあがっていた。だが、私も父王も侑家をこれ以上のさばらせる気はない。私が将来、王になったときに隣にたつのが、侑家であってはならないのだ。そこで、信頼のおける李 斉蓮のもとに異国のものが世話になっているときいてな。噂だけでは心もとない。斉蓮から話を聞いてみたのだ。そして、そなたに会いにいった」


そこまで話した後、紫蘭は鈴音を正面から見つめた。自分の探すべきものがみつかった、というような嬉しげな感情をこめて見つめたのだ。思わず、胸に手をやった。熱い視線に、体が少しずつ熱くなる感じがした。

長くなったので、ここできります☆

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