3.憩いのとき
2人きりで落ち着いたところで、王と王妃に挨拶しにいかなくてはいけない、と紫蘭に言われた。今日は疲れているため、明日の朝とのことだった。未だかつてない経験に、会ってもいないのに、緊張してしまう。それをみてとった、紫蘭が意外な行動に出た。
「なにを思いふけっている?今、目の前には私がいるというに、他の者のことを考えているだろう?・・・面白くない」
「!だ、だからって、いきなり抱きしめて、ほおにキスはびっくりするよ。し、しちゃだめってことじゃなくて」
「私は、明日の謁見のことについて、考えてただけなのに・・・・・」
「そう気追うな。自然体の鈴音が、父王達も喜ばれる。そうだ、先にいっておくことがある。謁見で私の弟にあうことにもなるからな」
「弟・・・第2王子様?」
「そうだ。 遙翔 という。今年11歳となったところだ。今年11歳となったところだ。まだやんちゃでな、こちらも少し手を焼くところだ」
仕方のないやつだ、と笑む彼の顔は親しいものだけにみせるもので、いかに遙翔王子を愛しているかが、わかるものだった。一体どんな王子なのか。私とは打ち解けてくれるのか。その時、紫蘭が席をたったので、服の裾をひいて引きとめた。
「どうしたの、紫蘭?どこかへ行くの?」
「ああ、すまない。これから、残っている仕事をせねばならん。王太子としての務めだ。そなたを正式な正妃とするための手続きも入っている。が、こちらにも少々難題があってな・・・」
「難題?・・・ってなに?」
「手を焼く相手が一人いてな。相手の家柄が高い分、うかつな行動もできかねるし。知っておくべき権利があるから、教えておく。斉蓮と並び称する家格の家の、娘がいる。 侑 紗南という。年は15歳。近いうちに、あわせることになるだろう。そのため、候補という形をとったのだ。・・・すまないな。すぐに戻る。夕食は共にしよう。それまで、くつろいでいてくれ」
そういうと、憂いを含んだ目で鈴音をみつめ、そばまでくると抱きしめ、ぽんぽん、と幼子をあやすように頭をかるくたたいてから、紫蘭は仕事へと向かっていった。
「・・・ライバル登場、ってことになるのよね?その子と争うってこと?まだ私、陛下や王妃様にお会いもしていないのに。大丈夫かなぁ。ううん、紫蘭を信じよう。大丈夫よ、きっと」
うんうん、と納得して鈴音は紫蘭が帰るまでの時間つぶしを、どうしようかと思い悩んだ。
候補とした形の理由を書いてみました。これから大変そうです☆