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5.見切りをつけたヴァージニア

 ある日ヴァージニアは、祖母のヴィクトリアに連れられて、王都にあるフィン家を訪れた。


 親族に紹介されたり、同じ年頃の子どもたちと話したり、楽しんでいると、書斎に連れて行かれたのだ。

 そこにはヴィクトリアと、その甥にあたるフィン家当主、管財人と書記がいた。そこでヴィクトリアの持っているネックレス、イヤリング、ブローチを譲られたのだ。

 これらは王立美術館に飾られている、ミトナーの有名な肖像画『喪服の婦人』に描かれたものだった。その場で正式な譲渡手続きが行われた。


 持って帰ったヴァージニアは、建具屋に作らせた隠しの中にしまったのだった。ヴァージニアは祖母から、大切なアクセサリを譲られ、そしてそれが書類に残る出来事だということから、心の内側からも、世の中からも守られているようなぬくもりを感じた。


 家臣に守られながら育ったヴァージニアだが、その後立て続けに悲劇に襲われた。

 ヴァージニアが十歳になったばかりの頃、最愛の祖母ヴィクトリアが病気で亡くなったのだ。家庭内で孤立しているヴァージニアにとって、祖母であり、母親であり、友人でもあったヴィクトリアが亡くなったのは、しばらく立ち直れないできごとだった。


 妻ヴィクトリアの死は、エリオット伯爵にも衝撃を与えていた。

 伯爵はだんだん元気がなくなり意欲が衰えていった。そしてある時ただの風邪をひいたが、なかなか治らずそのまま亡くなった。死期を悟っていたのか、その前に息子や側近、家臣たちを呼び集め、代替わりの儀式を行った。レオナルドの弟のキングズレー卿ももちろん呼ばれた。大勢の前で息子のレオナルドに、『軽挙妄動を慎み、周りの言うことをよく聞くこと』、と何度も言い聞かせた。


 そしてその場にいた人々に、息子への忠誠を誓わせた。人々は伯爵を尊敬していたため、それを破る気はなかった。だが不安を抱いていたものが多かった。そしてその不安はすぐに現実の物となった。


 レオナルドと弟のキングズレーの、どちらが跡継ぎに相応しいかと聞かれれば、ダントツでレオナルドだ。

 伯爵位にふさわしい怜悧な判断と、高い知性を備えていた。だがレオナルドはその功績をくつがえすほどの欠点があった。

 そしてキングズレーも同じ面があった。

 つまりは兄弟共に希に見る高い能力を持ちながら、それを消してしまうほどの欠点をかかえていたのだ。



 レオナルドにはどう考えても、支えとなる人物が必要だった。まだ二十九歳のレオナルドが一人で統治するのに、多くの者が不安を感じた。まして将来跡継ぎとなるヴァージニアの地位を、レオナルド自身が不安定にしているのだ。

 伯爵位を継いだレオナルドは、仕事はとても上手くやっていた。頭脳は優秀だし、また共感性に乏しい分、思い切りの良い判断をするのだ。時には非情な判断も必要な当主に、レオナルドは向いていた。レオナルドが統治した十年間で、エリオット伯爵領はまれに見る発展を遂げたのだ。


 だが娘の教育は滅茶苦茶だった。子育てにおいても冷徹で、跡継ぎであるヴァージニアを粗末に扱い、次女のアリスを甘やかした。トップである伯爵が、家内の秩序を乱す行為は許されなかった。主要五家が交代で伯爵に進言した。父親から家の当主を代替わりしたベンジャミン・サレンも、忠言した。だが芳しくなかった。




 ベンジャミンは疲れ切って自宅に戻った。四人目の子どもを妊娠している妻のロザリンドが、玄関近くまで出迎えてくれた。


「ロザリンド。駄目ではないか、こんなところまで出てきて。部屋で暖かくしていないと」


 ロザリンドはその言葉に嬉しそうに目を細めると、二人でロザリンドの部屋で一息ついた。ベンジャミンは平静を装っていたが、ロザリンドはなにもかもわかっているような顔で、聞いてきた。


「伯爵閣下の様子が思わしくないのね」

「……」


 ロザリンドは、部屋にいた使用人たちの多くを下がらせると、ベンジャミンの手を優しく撫でた。


「当主としては優秀なんだ。だがアリス様のことでは話にならない」

「まるでエラ様と会った時のようね」


 ベンジャミンは当時のことを思い出した。どんな忠言も聞き入れてくれなかったことを。そして思いどおりにした。ベンジャミンはロザリンドに聞いた。


「つまり……?」

「アリス様が次期当主になるでしょう。ヴァージニア様を押しのけて」

「まさか、そんな。いくらなんでも……」


 ベンジャミンは信じられなかった。なぜならそんなことは、常識ではあり得ないからだ。だがレオナルドに常識は通用しない。ベンジャミンは主立った家臣に相談した。皆信じられず、だがこれまでのレオナルドの言動を考えると否定することもできず、そうならないように対策するしかなかった。




 そんな折り、エリオット伯爵家は、訴訟騒ぎに巻き込まれたのだ。ヴァージニアが所有するネックレスを、アリスが奪ったことが発端だった。キップリング侍従長は、この件でアリスを厳しく叱責した。だがレオナルドと妻のエラが、許し甘やかしてしまうので、どうしようもなかった。それでもネックレスの持ち主であるフィン家に謝罪し、なんとか穏便に事を済ませようとした。


 ヴァージニアのネックレスの管理は、フィン家が行うことになった。そのためアリスの手がどうやっても届かなくなり、結果的に問題が発生しなくなることで、解決したように見えた。

 ところがエラが勝手にそのネックレスを取り寄せてしまい、アリスに与えたのだ。アリスはそれをまたも破壊し裁判沙汰となった。不思議なことに、エラは誰にもわからずに取り寄せていた。そんなことは誰かの協力なくしてできない。つまり……。


 キップリング侍従長の目には、こういう結果になることを、ヴァージニアもフィン家も望んでいたように見えた。要するにヴァージニアはもう、エリオット伯爵家に見切りをつけているのだ。


 正当な跡継ぎのヴァージニアを守れず、跡継ぎのほうから見切りをつけられるというのは各人、情けない気持ちで胸が一杯だった。そしてそれは家内の人間すべてに伝わり、皆が屈辱的な思いをした。



 その頃から、ヴァージニアは、ベンジャミン・サレンの妻ロザリンドの実家に通うようになった。エリオット伯爵家は天秤の家と呼ばれ、教育設備が整っているが、家庭環境の影響で勉強に集中できる状態ではなかった。ヴァージニアはその年齢で高度な勉強をしていた。そのためか同じように巻物の家と呼ばれているロザリンドの実家、アバン侯爵家を頼るようになったのだ。


 アバン侯爵家には、王宮に匹敵するほどの図書館があった。知り合いのメアリー・ステイブルフォード夫人がここの職員だったため、伝手を頼ったのだ。メアリー・ステイブルフォード夫人は、母親エラの親友だ。だがヴァージニアに同情的な態度を取っており、相談するとアバン侯爵家を紹介してくれたのだ。


 ヴァージニアがアバン侯爵家を頼ったのは、エリオット伯爵家の手が届かない人脈が新たに欲しかったからだ。ヴァージニアは自分の世界を着々と広げていた。そしてそれはエリオット伯爵家を見捨てるのと同じことだった。そのことに感づいているロザリンドは、自分の夫ベンジャミンの意に反する結果につながると憂慮した。だが誰もヴァージニアを止めることも出来ず、複雑な胸中だった。




 そんな時、レオナルドが突然、ヴァージニアの婚約を決めてきた。

 ジョージというウィリアムソン伯爵家の令息だ。ジョージの祖母は前王の異母妹だ。家臣たちはあわてた。なぜならエリオット伯爵家が天秤の家と呼ばれるのは、王家の血筋から遠いからだ。個人の能力を伸ばし、派閥に頼らず、独立性を保っているからこその価値があるのだ。


 そのことをレオナルドも知っているはずだ。だが説明するとその時は理解するのだが、なぜかしばらくすると、王家に近い血筋のほうがいいと言い始めるのだ。まるで昔、ロザリンドがいくら説明しても「女の子は花が好き」と上書きしてしまった時のようだった。


 当主が自分の家の価値を理解できない。そしてそれを潰す縁組みを持ってきた衝撃は大きかった。家の一大事だが、その内家臣たちは諦めた。レオナルドはジョージを、ヴァージニアの婚約者で、将来の当主の夫だと言っている。だがヴァージニア本人は既にこの家に見切りをつけたのだ。それにここまで来ると、もう未来は見えていた。



 ヴァージニアが王立学院に入学する時、盛大なお見送りがあった。エリオット伯爵家を支える家臣たちが集まり、ヴァージニアに挨拶した。ヴァージニアは入学の保証人をフィン家にしていた。つまりもうエリオット伯爵家と関わりを持つ気はないのだ。必要な荷物を寮に送らせ、それ以外のものはフィン家に送る。残ったもので、アリスに取られなかったわずかなものは、使用人たちに分け与えた。


 エリオット伯爵家の正当な跡継ぎは、今日家を出て行くのだ。見送りに実の両親である伯爵と伯爵夫人、妹のアリスは来なかった。関心がないのだろう。


 自分たちは当主をお支えするしかない。それに今までできることはやってきた。それでも自分たちの力不足が悔やまれ、ヴァージニアの出立に涙する者もいた。キップリング侍従長はヴァージニアの前で目を潤ませていた。


「お力になれなくて申し訳ありません」

「今日まで私を支えてくれてありがとう。進路はもう決めているの。そこに到達するまでの力をつけてくれたのはあなたたちよ」


「ご立派になられて……」

「体には気をつけてね。じいや」


 ヴァージニアはあっさりと出て行った。そして学院でアーサー第三王子殿下に認められるのだった。



 ヴァージニアが出て行った以上、残された者たちで、養子の選定に入った。アリスでは到底跡継ぎは務まらない。エリオット伯爵家の係累の中で、見合った年齢の子どもはそれなりにいる。だが伯爵家の当主になるのだ。優秀さは必要だろう。だが。


「私はそこまで優秀でなくてもいいと考える。それよりも人間として成熟している……、いや未成熟でも良い、素直であれば」


 キップリング侍従長がしみじみと言った言葉に、その場にいた家臣たちは感慨深いものを感じた。養子のリストには当時八歳だった、トマス男爵家のヒューバートもいた。そしてヒューバートはキップリング侍従長の推薦だった。


「ヒューバート君は、キップリング侍従長の推薦ですな。どのような少年なのですか」

「ヒューバート様は、キングズレー卿のお種です」

「ほほう。懐かしいですなあ。女たらしのキングズレー卿。その伝説はとどまることを知らない」


 数年前に亡くなったキングズレー卿の、モテ男ぶりは有名であり、キングズレー卿があちらこちらに産ませた子どもも幾人かいる。確認されていない子どももいるだろう。だからその情報はよくあることと片付けられた。


「キングズレー卿が、トマス伯爵家のマーガリート様に生ませたのが、ヒューバート様です」


 その場は急に湧き立った。

 キングズレー卿は前伯爵の次男だ。そしてトマス伯爵家は主要五家の一つであり、側近中の側近だ。そのトマス伯爵の長女マーガリートが産んだとなると、ヒューバートの立場は急にしっかりしたものになった。


 エリオット伯爵位に母親の地位を込みの継承順位をつけるとすると、ヴァージニア、アリスに続き、ヒューバートは三位になるのだ。

 これ以上相応しい子どもはいない。その場にいた人々は期待した。



 ◇◇◇◇◇◇



 ロウ・ウォルポールは、エリオット伯爵家当主レオナルドの側近だ。

 ウォルポール男爵家は、エリオット伯爵家の昔ながらの忠臣で、小さい家ながら並居る家臣の中から主要五家に名を連ねている。忠誠のウォルポール家と呼ばれ、代々の主君に重用されてきた。政治情勢が難しい時でも、ウォルポール男爵家だけは、エリオット伯爵家に最後まで仕えるだろうという、強い信頼があったのだ。

 ウォルポール男爵領は、広くはないがそれなりの農地をかかえていた。だが最近は小麦の値段が下がっていることから、価値を下げていた。そのため珍しい農作物の栽培に取り組もうと工夫していたが、そのせいで少なくない借金をかかえていたのだ。


 ところがある日大事件が起きた。そのウォルポール家が売り飛ばされそうになったのだ。

 きっかけはアリスだった。アリスがお茶会で、とある女性から、ウォルポール家の領地と、その隣の観光地を交換しないかと持ちかけられたのだ。隣には古くから温泉が湧いており、その関係で街道が通っている。規模は大きくないものの、一年中客足が途絶えない静かな人気のある観光地だった。

 アリスはその話に飛びつき、ウォルポール家と交換すると断言してしまった。その場にいた母親のエラはなにも考えず同意してしまった。そしてアリスはそのまま父親にねだったのだ。


 レオナルドはさすがに最初は断った。だが何度もしつこくねだるアリスの言うことだからと、そのまま流され交換しようとした。

 その場にいた家臣たちが許すはずもなく、家令とベンジャミンは、「そんなことをするなら、今ここで家臣全員の首をはねろ」と迫った。しぶしぶ引っ込んだレオナルドだが、なんとそのことをそのままアリスとエラに話してしまったのだ。これで、ウォルポール家は、主人のエリオット伯爵に売られそうになったということが、『事実』として世間に広まった。


 あまりの屈辱にロウの父親、ウォルポール男爵は、血圧があがりそのまま亡くなった。


 さすがのレオナルドも悪いと思ったらしく、男爵家の借金やその他諸々を負担して謝罪した。ロウを始め男爵家はそれを黙って受け取った。

 男爵の葬儀の席で、家族は気丈に振る舞っていた。呆然としている人が多く誰も泣いてはいなかった。男爵は子ども好きで、葬儀に出席したベンジャミン・サレンも小さい頃は可愛がって貰ったものだ。孫たちは懐いていたのだろう。しょんぼりしているものが多かった。


「ねえ、どうして、じいじ、いないの?」


 葬儀中に何度も聞いた子どもがいた。親は何回も耳障りのいい答えを言った。だが最後の方は声にならなかった。子どもは理由が知りたいのではない、いつも自分を抱っこしてくれる、男爵がいないことに不満を述べているのだ。

 つまり「寂しい」と言っているのだ。


「どうして?」


 子どものその声が、ベンジャミンや、ジーニアスの頭の中に住み着き、いくら追い出しても出て行かなかった。



 まわりはアリスと母親のエラに、ウォルポール家のことを軽々しく話してはいけない、と何度も言ったが、いつものとおり無駄だった。

 レオナルドもエラも、この問題をテストとして出されれば、完璧な回答をするだろう。「話さない」と。だが二人は現実社会では、それが上手く出来ないのだ。そして内情をぺらぺらと話してしまい、エリオット伯爵家の価値を下げていった。


 アリスにこの話を持ちかけた女性は、その隣のララ・クリスという女性と一緒に、アリスの上手く行かなかったという不満を、クスクス笑いながら聞いた。

 この頃には、エリオット伯爵家の内紛は有名なできごとで、当主が無能な次女に入れ込んでいることは、わかっていたからだ。アリスにちょっとした話を持ちかけただけで、伯爵家の評価は下がり、男爵家の価値は消し飛んだのだ。安い仕事だった。


 ララ・クリスは乳兄弟のアーサー第三王子殿下の前で、雑談をした時にその話をした。アーサーは満足げに頷いた。アーサーは別にララ・クリスに、何かを指示したわけではない。ただ臣下のヴァージニア・エリオット伯爵令嬢を重用するには、実家の存在がちょっとだけ邪魔なのだ。そしてララ・クリスはそれを知っていただけだった。




 最近、レオナルドを囲み執り行う主要五家の集まりは、簡単な報告をし合うだけになった。出席者たちは黙り込んで、なにかを考えるようになった。ウォルポール男爵家の席は、代替わりした息子のロウ・ウォルポールが座るようになった。

 家臣たちが男爵家の件で後始末に追われ、養子の選定に時間を取られている頃、アリスを当主にする決定がなされた。アリスが突然言いだしたのだ。ヴァージニアの婚約者を寝取ったと。そんなこと家に協力者がいなければできるはずもなかった。そしてアリスの世話をする者たちは、協力をしたわけではなかった。邪魔をしなかったのだ。

 この頃になると、伯爵家の中で働く者たちには、どこか諦めきった空気が漂っていた。どうせいくら止めてもアリスは決めたことを実行する。そして叱られるのは、協力しない使用人たちのほうなのだ。



 アリスの当主になりたいという願いを、「叶えてやろう」とレオナルドが言った時、使用人たちは覚悟していたように歯を食いしばった。「この家は終わりだ」と。

 だがそれでも多くの人間がこの事態に立ち向かった。採決を強行したレオナルドを説得し、アリスを諫め、アリスを次期当主にする書類を作るのに、やみくもに時間をかけた。だがレオナルドは外堀を埋めてしまったのだ。


 レオナルドが、どうしても行かないといけない用事で王城に向かった。用事が終わり、たまたま人がたくさんいる大広間で、強引に呼び止められ、なぜか世間話が始まった。

 そこへアーサー第三王子殿下と、その乳兄弟ケネス・クリス、そして官吏を束ねるリットン室長がやってきたのだ。


 ケネス・クリスは張りのある声で聞いてきた。


「もう跡継ぎは、決めてあるのかな?」


 レオナルドの侍従は、この質問に不穏な空気を感じ、すぐにレオナルドを止めようとした。

 だがレオナルドは、はっきりと大声で言ってしまったのだ。


「アリスにします」と。


 後からその時のことを聞かれた侍従は、「あれは罠だった」と語った。

 誰がこの罠を仕掛けたのかはわからない。

 だがこの頃になると、家を出たヴァージニアは官吏として働いていた。なにかの理由で国がヴァージニアを手に入れたがっているのだろう。


 ヴァージニアという駒を手に入れたいのなら、エリオット伯爵家に恩を売る方法もあったはずだ。だが正面から喧嘩を売ってきた。それほど、現当主は話が通じない人物と見られているのか。

 考えてみれば、アーサーや、クリス兄妹はヴァージニアと同じ世代だ。要するに国王夫妻とその側近たちは、レオナルドとエラを、学生時代に見ているのだ。人となりを知り、そういった対応を取っているのだろう。そしてエリオット伯爵家に戦う力がないと、侮っているのだ。



 エリオット伯爵家に残された次代の駒は、アリスだけになった。この事態は人々を絶望に陥らせた。国に見捨てられたのだ。エリオット伯爵家は。

 それからは、大忙しだった。養子候補になった少年は合わせて五人。教育をたたき込み、伯爵家の当主になれるよう育て上げた。その内の一人、ヒューバートが満足に育ったところで、残りの四人はヒューバートの側近としてさらに教育する。

 エリオット伯爵家に連なる家門はもう後がないのだ。


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