表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/17

9 初めての馬車旅と、アスパラが主役のごちそう野宿

 アーサーは馬車の旅は初めてだった。


 空が茜色に染まり始めたころ、陽が完全に落ちてからでは、隊列は進めないので野宿となった。


 野宿も初めてだ。

 御者さんが材料や道具が入った道具箱からいろいろ取り出して夕食の用意を始める。

 枯れ木や枝がそこかしこにあって、調理に使ったり、座ったりできる。

 なるほど。木々のあるところまで来たのはそういうことなのかあ。


 これから向かう畜産農家はいわば領主館のお隣さん。だがお互いの土地が広大な上に、開墾していない原野があり、馬車で一日の距離にあった。


 ご飯ごはん。どうやって用意するんだろ。

 アーサーは興味津々で様子を見守った。

 

 火の調達は【火スキル】、水の調達は【水スキル】の持ち主がテキパキと行う。かなり旅慣れているようだ。


 白アスパラガスを【収納スキル】にいっぱい詰め込んだ御者さんのほかにも、もう一人【収納スキル】持ちの人がいて、その人が香辛料を収納BOXから取り出した。


 商人たちは我慢できなかったんだろう。(トイレじゃない)

 領主館のアスパラガスが緑と白と両方調理されて夕食として出された。


 緑はベーコン巻き、白は茹でられてジャガイモやソーセージと一緒に仲良くバターソースがかけられている。胡椒が効いてるぅ!贅沢ぅ!

 アーサーは小躍りしそうになった。肉だ、肉だあ!

 沢山盛られた皿を渡される。

「ほら坊ちゃん、食べ飽きてるかもしれんけど、腹いっぱい食べるといいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 茶色は至高!ババくさいなんて言ったらダメゼッタイ。


 

 商人たちは感動のあまり口々に絶賛し始めた。

「なんだこれ、本当に凄い美味い……」

「噂通りですね…もぐもぐ」

「こりゃ柔らかくて、一般のやつとは比べ物にならんな……繊維のもさもさした感じが一切しない」


 噂の出処どこだろ。物々交換のご近所さんだろうか。気になるアーサーだったが、商人は大量にお買い上げいただいたお客様だ。

 ……あのタライの雨音大合唱をもう聞かずに済むと思うと、商人さんは大事にしなきゃって、長男魂が疼いちゃう。生産者情報大事。


「あ、緑のほうは冷暗所に置いておけば、来年の春まで腐らずに美味しく食べられますよ。去年までもそうだったんで。どうなってるんでしょうね、うちの野菜」


「「「まじか!」」」


 商人たちの声がハモった。実は購入し過ぎたので、売れ残って腐らせちゃったらどうしようと、心配してたのだ。


「白はさすがにそこまで持たないですけれど、岩塩と砂糖で作る、ソミュール液を入れた瓶に詰めて保存すると次の収穫時期までいけます。ソミュール液にハーブや香辛料を加えて沸騰させた、ピックル液に漬けてもいいかもです」


 まるで料理研究家だ。

 話だけ聞いていたら、間違いなく辺境伯家の嫡男とは誰も思わないだろう。


「長男だからいろいろ手伝うのが当たり前だったんです。料理長に教わったんですよ。この調理法も美味しいですね!トンウマ」


 アーサーの言葉に、商隊の一行は(苦労してるんだなあ)とホロリとした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ