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そう言えばこんな友達がいた。
ポケットから薔薇を落としたその子は小学校四年生で、拾ってあげたら「おにちゃ、どもありがとな」と頭を下げる代わりに首を傾げてみせる子だった。ポケットの中になぜ薔薇が入っているのだろうと思ったら、次に会った時にその子が教えてくれた。
「わこのこのぽっけ、ばらが出てくるの。抜いても捨ててもほら入ってる」
不思議なことに彼女が着ていたそのポケット付エプロンはポケットから薔薇が出てくるらしかった。
「そりゃすてきだ、でも気いつけよそんエプロンほしがってうばいにくる人いっかもしれねぇかあ」
「おにちゃ、考えすぎだって。こげな変なエプロンほしが人いるわけなかろに」
と、私の忠告は軽くあしらわれてしまった。
それからしばらく経ったある日、用品店でエプロンがハンガーに吊るされ、壁にかけられてるのを発見した。店の人によれば売ろうとはしたがポケットから薔薇が出てきてしまうから困っているとの事で、すぐさま私が引き取ってきた。
すぐにあの子を見つけて
「どうしてエプロン捨てちゃったのさ」
と、聞いてみたら
「クラスのおとこんこが変だって言うの。それにしゃんなおんなのひとはこんなエプロンきないらしいし。だからさいならした」
私に背を向けてそう話した。身体が震えていた。
「変なら変でええじゃんか!人間、変なとこあってもなんとかなるもんじゃ。そなんわらいとばしちまったらええと思うよ」
私から出た苦し紛れの慰めだった
「だったらそんエプロンにいちゃがもってたらいいん。わたしはもう捨ててしまったけ」
「さよならじゃ」
こうして、私たちはしばし別れた
それから数十年後のこと
久しぶりに実家のある街を歩いていると
「おにちゃ、おにちゃじゃあないか?」
と、私に話しかけてきたのはすらっとした背丈の婚約指輪を嵌めた女性だった
誰だろうと思っていたら
「あたしよ、薔薇のおんな、エプロンの」と
言ったことであの子だと気がついた
「で、おにちゃ、あん時のエプロン知らんか。
娘が信じてくんなくてさ、見つけにきたんよ」
困った顔をして彼女は言った
「ああ、実家にちゃんとしまってあるよ。今からくるか?」
「ええよ、てかおにちゃの家いくのはじめてだなぁ」
「そういやそうだな、ちゃんとついてこいよ」
「やーや、そんな歳じゃさすがにないやー手でも繋ぐかあん時みたいに」
「手は一度も繋いだことないっしょ」
「そっかあ」
街はすっかり変わったってのに私たちはなんにも変わってなかった。知らない家に真っ赤な薔薇が咲いていて、彼女の方を向いて笑ったら彼女も同じく笑っていた




