[第5話]この砂時計は世界に1つ
[第5話]この砂時計は世界に1つ
「君のことだから、
守れなかったとか、私に会いたくて寂しくて、
どーしようもなくなると思うの」
頭から血を流し
意識も朦朧とし始めている中で
サヤは喋り続けた
「だから人生最後の、
ワガママ言わせて」
「なんだ!」
ドンドン握るサヤの手の力が
弱まっているのを感じる
「私のことは忘れなくてもいい、
寂しくなってもいい、
だけど死なないで、あなたの寿命が尽きるまで
私、まだやりたいこといっぱいあったの、
でももう無理だから、君に託すね
お願い、私の分まで生きて、」
「お願い」
“私の分まで生きて”
それがどんなに俺にとって辛いことか
サヤはきっと知っていた
それでもサヤはワガママを言った
サヤの両親と喋っていると
サヤはあまりワガママを言わない性格らしい
俺にしか見せないサヤの一面
そんな所も大好きだった。
だから、俺は、
「わかった。」
涙を流しながらも
彼女の最後のワガママを受け入れることにした。
「愛してる」
俺は必死に彼女にそう伝えて
手のひらにキスをした。
スマホからアラームのような音が聞こえた。
――
俺はまた自分の家のリビングにいた。
「サヤ、、」
目を開け周りを見ても
サヤはいない
でも何故だろう
俺はもう死にたいとは思っていなかった。
俺はずっとサヤのワガママを聞いていた。
両親にもワガママを言えない子だ
俺にだけ言ってくるワガママ、
それを聞いてあげなくちゃとずっと思っていた。
砂時計は机の上で割れていた。
「さて、生きてあげますか」
そう言って俺は立ち上がった。