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・暗部に入る
暗部に入ることを決めた二人は山籠りの生活から、王都の地下での生活に移り変わった。
二人は部屋を出る時は必ず黒装束で目元以外を隠し、他の暗部にも姿を見せないよう徹底させられていた。
そんな二人にはまず暗部の人間からの教育が行われ、その内容は心を押し殺す思考方法や、足音や気配を消す手法。 いかに素早くターゲットを抹殺し痕跡を残さないかなど様々な物であった。
「よし、必要最低限の知識は詰め込んだ。
いよいよお前ら二人には実際に任務をこなしてもらう」
暗部に入り数週間が経った頃、暗部の男はポケットから一枚の女の子の写真を見せてきた。
「このターゲットはエルフの森を抜けた先の村に住んでいる」
暗部はもう一枚同様の写真をアキレアに手渡すと二人に背を向け部屋の扉に手をかける。
「それだけですか、、?
何故殺すのか理由は教えてくれないのでしょうか?」
勇者はただターゲットの少女と居場所を聞かされただけという状況に驚きを隠せなかった。
「お前らがターゲットを殺す理由を知ってどうする?
理由を聞いても聞かなくても殺す事は確定事項だ。
下手にターゲットの情報を知ると同情が生まれかねない。 これが初任務になるお前らは特にな」
男はそう言うと部屋から静かに出ていってしまった。
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勇者とアキレアは風を切るように素早い走りでエルフの森を駆け抜けていた。
途中でエルフの集落の横を通るが気にせずに森を抜けると情報通り小さな村を発見する。
「とりあえずは視察だな」
アキレアの言葉に勇者は黙って頷くと近くにある一番高い木を登って村の様子を観察する。
「のどかな街だ、、」
村の中では人が穏やかに談笑しあい、子供達は無邪気に遊んでいた。
「いたぞ」
アキレアは一組の親子に向かって指をさす。
野菜などが入った手提げを持つ母親と手を繋ぐ少女は写真と同一人物であった。
どうやら親子は家に帰る道中のようだ。
「本当にやるのかい?」
勇者はまだ覚悟が決まっていないようでアキレアに問いかける。
「あぁ。
それが俺らの選んだ道だろ?」
アキレアは勇者と違い迷いの無い真っ直ぐな瞳で親子の同行を観察していた。
「決行は夜皆が寝静まった頃だ。
それまではあの少女がどこか行かねぇように見張ってようぜ」
アキレアと勇者は百メートル以上離れた位置から村を観察しているため、こちらが気取られる心配はない。
そう思っていた矢先、少女は突如振り返り勇者とアキレアの方を向き二人と目を合わせた。
「バカな、、」
アキレアと勇者は予想外の出来事に呆然とするが、少女は構わず母親に話しかけると母親と別れ、勇者とアキレアのもとに一人で歩き出す。
「おい、、どうする?」
標的が一人でこちらに向かってくるという、通常では起こり得ない状況にアキレアは撤退も考慮していた。
「好都合じゃないか。
あの子にどんな企みがあろうと僕たちの任務に変更は無い。 そうだろ?」
勇者は先ほどのアキレアの覚悟を聞いて腹が決まったようだ。
「そうだな!」
勇者の強い意志を感じアキレアも同意する。
二人は木から降りると向かってくる少女を静かに待つ。
「来たか」
少女の歩みは少しふらついており、たびたび咳き込んでいる事から体調が優れていない様子である。
「お前ら、私を殺しにきたのだろう?」
少女はその幼い容姿とは裏腹にとても知的な喋り方であった。
「何故気づいたんだい?」
勇者は自分達が殺しにきた事を悟っている少女に不気味さを覚えながらもその理由を問う。
「コホッ、、
お前たちの殺気が駄々漏れだったからな。
まぁ私意外には気づかれないほど小さなものだが」
少女は辛そうに咳き込みながらも答える。
「あの村の中で殺されたら村がパニックになるだろう。 だからこうしてわざわざ出向いてやったんだ。
早く殺せ」
少女は両手を上に挙げて抵抗の意思が無い事を主張しながら膝を折り地面に座る。
流石のアキレアも目の前の少女が無防備な状態でこちらに殺しを迫ってきている状況に戸惑っているようで勇者を一瞥する。
この少女を殺す?
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少女を殺さず、暗部には偽の報告をする→148ページへ




