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・王族親衛隊に就任
王族親衛隊に就任する事になった勇者は親衛隊としての教育や修行を受けていた。
そんなある日、国王に呼び出された勇者は王室へとやってきていた。
「よくぞまいったぞ。
最近のお主の様子はグラジオラスを通じてよく聞いておる。 良く励んでいる様だな」
国王は王座に腰掛けながら勇者に語りかける。
「勿体なきお言葉です」
勇者は膝立ちとなり頭を下げる。
「うむ。 今回お主を呼んだのは相談に乗ってもらおうと思ってな。先日の魔物襲撃事件において娘のサクラが魔物に殺された事により大臣達は魔王への報復を進言してきた。 サクラは大臣達に偉く気に入られていたからな」
国王は苦い表情を浮かべる。
自分のせいで娘が死んでしまった事に僅かながらに負い目を感じている様だ。
「そこで今回閣議でギルドと国王軍の力を集結させ、魔王城へと攻め込むという案が可決され、最終決定権を持つワシの承認を待つのみとなった。そこでお主の意見も聞いてみたくなってな」
勇者は膝立ちの態勢を維持したまま国王の話を集中して聞いていた。
「お主は率直に考えて国王軍とギルドが力を集結させれば魔王を打ち取れると思うか?」
王様の言葉を聞き勇者は考える。
王国軍は言わずもがな精鋭の集団。
ギルドのギルド長も王族親衛隊の隊長と互角の戦いをすると言われるほどの逸材である。
そんな二つの組織が力を合わせる。
そこに勇者は大きな期待を抱いた。
「はい、必ずや魔王を討伐できる事でしょう」
勇者は力強く肯定する。
「そうか、、
分かった、それだけをお主に聞きたかった。
お主も討伐隊として派遣される事だろう。
お主の活躍、心より祈っておるぞ」
王様は勇者の言葉を聞き何か決意が固まった様に一人で納得したように頷いた後、勇者に励ましの言葉を送った。
「はっ!
有難きお言葉です!」
勇者は王室から出ると王族親衛隊の修行場へと向かう。
魔王討伐にあたり少しでも力をつけなくてはならない。
「やぁやぁ、噂の救世主君じゃないか。
父上と何を話していたんだい?」
王室からの帰り道で正面から二人の男が歩いてきており勇者を引き留めた。
「ロベア王子、お疲れ様です。
王様とは先日の魔物襲撃の際にお助けした事に対し改めて礼をさせて欲しいとお呼びいただきました」
勇者は第一王子であるロベアを見るや否やすぐに膝立ちとなり頭を下げた。
「ふふ、俺を前に嘘を吐く度胸は認めてやる。
改めて聞く。 何の話をしてたんだ?」
勇者は自身の嘘がバレてしまった事に内心焦るが、それを表には出さずに至って冷静に返答する。
「閣議で決定された魔王討伐の件でお話をさせていただきました」
勇者は軽く頭を上げてロベアの様子を伺う。
ロベアは脂ぎった金髪の髪をかきあげながら不適な笑みを勇者に向けている。
ロベアの少し後方には緑色の髪で目元を隠している謎の男が立っていた。
「ふふ、そうだよなぁ?
俺にはちゃんと分かっているんだ。
父上と魔王討伐が我が軍とギルドの戦力で可能かどうか話したんだろ?」
ロベアは高圧的な口調で勇者に問い詰める。
ロベアの後ろに立つ男は終始様子を伺っているだけで何も口出しして来ないようだ。
「はい、その通りでございます」
勇者は何故王との会話が知られているのか疑問に思う暇も無く、肯定を口にする。
「それでお前はギルドと国王軍の力を合わせれば魔王を打ち倒せると父上に進言した。
だが、それは困るんだよ。俺の大事な軍が無くなるのはな」
ロベアは頭を下げる勇者の髪の毛を引っ張って立たせる。
「改めて父上に進言しろ。
魔王討伐はギルドだけで充分だと!」
ロベアは唾を勇者に撒き散らしながら脅迫する。
「申し訳ございません。
それは了承しかねます」
勇者は真っ直ぐロベアの瞳を見て要求を拒否する。
その曲げない意思の強さは勇者の瞳にも現れており、ロベアは怖気付いて勇者の髪の毛を離して後退する。
「そうか、、
それは残念だよ。
アナナスやれ」
ロベアは勇者の説得に失敗すると背後に立つアナナスという男に指示をだす。
「承知しました」
アナナスはロベアの命令を受けて剣を引き抜く。
「いくらロベア様であっても私を殺すのは不味いのでは無いでしょうか?」
勇者も同様に剣を引き抜くと臨戦体制をとる。
「問題ない。
病死や魔物の襲撃などいくらでも改ざんのしようがあるからな」
ロベアは腕を組みながらアナナスの後で堂々とした態度で成り行きを観戦する。
「ロベア様に楯突く者は何者であれ消し去る」
アナナスは剣を勇者に向けるとアナナスの足元から複数の木の根が勇者を捉えようと伸びていく。
「腐っても王族親衛隊です。
簡単にはやられませんよ」
勇者は向かってくる木の根を全て切り裂いていく。
しかし、いつの間にか足元から伸びた木の根に右の足首を拘束されてしまう。
「終わりだ」
その隙にアナナスは剣を勇者に突き刺そうと接近してきた。
「舐めるな!」
勇者は自身の右足をすぐさま切り捨てると、残った左足で跳躍してアナナスを迎え打つ。
勇者とアナナスの二人の立ち位置は入れ替わり、勇者とロベアは向き合う形となった。
「すみません、、
ロベア様、、」
アナナスは勇者に心臓部を切られその場で倒れてしまう。
対し勇者は右肩から左脇腹にかけて斜めに切り傷を受けており、勇者もまた致命傷を受けていた。
「わ、分かった!
今すぐ治療班を呼んでお前を救ってやる!
だから俺の僕となれ!」
アナナスが死んでしまい勇者に剣を向けられたロベアは勇者を懐柔しようと説得を始めた。
「お前はこの国には必要無い。
国民の意見に少しでも耳を傾けた事があったか?
お前は自分の利益と権力にしか目を向けない。
だからここで終わりだ、僕もお前も」
勇者は口から血を吐きながらも片手を壁に当てて、徐々にロベアに近づいていく。
「お、俺を殺すだと?
舐めるなよぉ!!
この下級民族がぁ!!」
ロベアは激昂しながら腰に携えた剣を引き抜いて勇者に斬りかかる。
「牡丹咲」
向かってくるロベアに向けて放った勇者の一振りは今までのどの斬撃よりも綺麗な太刀筋で、ロベアは自身が切られた事に気づかないまま体を両断された。
「これで、魔王を倒せば、、
この国は、、必ず、良い国になる、、」
勇者は未来への期待を胸にその瞳を閉じた。
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