110ページ
・迷いの森
勇者は迷いの森の中を注意しながら歩いていた。
迷いの森は立ちいったら最後帰って来られない森として有名であり、一説によれば強力な魔物が住んでいると噂されている。
しかし、迷いの森自体は30分程直線で進めば抜けられる構造をしている。
だが、迷いの森を何も無くやり過ごせる筈もなかった。
突如勇者の目の前から黒い斬撃が周囲の木を切り倒しながら勇者に向かって飛んできていた。
「なっ!!」
勇者は咄嗟に左腕を前に出して盾にする。
斬撃が左腕を包む鎧に当たると甲高い音を立てながら斬撃は消え去り、その衝撃は勇者の右手に集約していく。
「衝撃解放」
勇者はその衝撃を解放しながら斬撃が来た方向に剣を振るう。
すると勇者の剣から先ほどの黒い斬撃が発生する。
黒い斬撃の突き進む先には木が切られたことによって姿を現した、黒いシルエットの魔物がいた。
その魔物は向かってくる斬撃を細長い太刀を振るう事で逸らして回避する。
「我と同じ技を使うか。
面白い」
その魔物は下半身が馬のようなもので上半身が騎士のように鎧を纏った姿になっている。
一つ大きく違和感があるのは首から上が存在しない事であるが、先ほどの行動を見るに何かしらで周囲の状況を把握する術を持っているのだろう。
「お前は誰だ!?」
勇者は100メートルは離れているであろうその魔物に問いかける。
「我、魔王軍四天王が一人。デュラハン。
久方振りの獲物。楽しませて貰うぞ」
魔王軍四天王とは、魔王の次に強いと言われる四体の魔物のことであり、魔王から信頼の証として四天王という称号を与えられている。
「四天王、、
だが、いずれ倒さなければならない相手だ!」
勇者は自らを奮い立たせデュラハンの元へと駆け出す。
対するデュラハンも同様に四本の足を軽やかに動かしながら勇者に向かって突き進んでくる。
走りながらデュラハンは自身の太刀に黒い魔力をまとわせている。
「闇厄」
黒い魔力を纏った太刀が勇者に降りかかる。
「衝撃吸収」
対する勇者は先ほど同様に左腕の鎧を盾にし受け止めようとする。
しかし、デュラハンの一撃は勇者の左腕の鎧を容易く切り裂き勇者の左腕を切り飛ばした。
「ぐぅ!
まだだ、衝撃解放!!」
勇者の左腕の鎧は断ち切られてしまったがその衝撃はしっかりと鎧に蓄積されており、勇者は右腕に持つ剣に衝撃を集約させた一撃を太刀を振り下ろして隙のある状態のデュラハンに返す。
黒い魔力を纏った勇者の剣を見てデュラハンは急いで後ろへと飛び退くが、勇者の剣はデュラハンの太刀を握る両手首を両断する。
「見事!」
デュラハンの両手が落とされた事によってその手に握られた太刀も地面に落ちていくが、デュラハンは間髪入れずに黒い魔力を前足に纏わせて勇者を踏み潰そうと足を上げる。
「闇踏」
勢いよくデュラハンの足が勇者目掛けて降りかかるが、勇者は残っている右手を振り上げて対抗する。
「はぁぁぁあ!!!」
右手を覆う鎧のおかげでデュラハンの攻撃を吸収しているが、衝撃の強さに鎧が負けてに徐々にヒビが入ってしまっていく。
「衝撃解放!」
勇者は吸収した衝撃を足裏へと解放する。
その衝撃によって地面は地割れを起こしデュラハンの動きを一瞬止める。
「これで終わりだ!!」
その一瞬で勇者は地面に落ちているデュラハンが落とした漆黒の太刀を手に取るとデュラハンの左胸へと突き刺す。
「我が、、負けた、だと?」
デュラハンは失った両手の断面で貫かれている左胸に触れると驚きの声を上げた。
「そうか、、負けたか、、
一足先にあの世で待つとしよう。
後は頼んだぞ、、」
デュラハンが最後に言葉を言い残すと体が黒い粒子となりバラバラに消えていってしまった。
「勝った、、!」
勇者は四天王の一人であるデュラハンを倒した事に歓喜するが、すぐに失った左腕を止血する為に鎧の下に来ていた服を破る。
切られた左腕の付け根の部分を硬く結んだ勇者であるが、突然背後から邪悪な魔力を感じ振り返る。
「卑怯だとは言ってくれるなよ?」
振り返った勇者の目に映ったのは小さな少女であった。
勇者が何か反応するよりも先に少女は手に持っている杖を振るい、勇者の右腕に当てる。
「ベンジェンス」
少女の唱えたその呪文は周囲の死者の魔力を回収し対象に注ぎ込むもの。
デュラハンとの戦いで満身創痍の勇者に耐えられる筈もない一撃であった。
「そ、、んな、、」
勇者の耳、鼻、口という顔中の穴から大量の血が流れ出てくる。
「せめて、もう、一人、、」
勇者はデュラハンの太刀を振るおうと持ち上げるが、そこで力が尽きてしまい仰向けで倒れ込んでしまった。
---
1ページへ




