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反省会

 あの後特に問題なく帰ることが出来た二人はエドリニアの宿に戻り、状況を整理していた。

 死神は椅子に座り、ソフィーはベットに寝っ転がりながら話をする。


「ふわぁ…ねむっ…ここから何話し合おうって言うんですかお嬢様」


 死神は大きなあくびを手で隠しながら(仮面で元々隠れているが)窓を見る、外は既に暗くなり、街灯の光が少しだけ見える。


「話し合う事だらけでしょうが、このままじゃ明日も同じような事になって進めないわ」


  ソフィーはベッドの上で起き上がり、頬杖を突きながら死神を睨むように見つめる。

 彼女の言う通り、この状態では先に進むことは難しいだろう、だが、そもそもの話、何故こんなことになってしまったのか? それがわからない限り対策のしようがない。

 ソフィーは頭を悩ませていると死神は体の力を抜きながら手を軽く上げて喋り出す。


「考えられる点は二つ、初めての実戦で激しい緊張が体の不調を起こした」


「それは無いと思うわ」


「それならもう一つ、罠を片っ端から起動したが故に起きた問題」


「どういう事?」


 ソフィーは首を傾げて聞き返し、死神は自身の影を動かしながら説明を始める。


「影に罠を幾つか作動させたでしょう?」


「ええ、それが?」


「まぁ矢とか落とし穴とか色々あった訳ですが…」


「もう、そういう勿体付けた言い回りはいいから早く行ってもらえる?」


 死神が勿体付けてまだまだ喋ろうとしていたのでソフィーが手を前に出してそれを止める。

 

「せっかちですね…まぁガスの罠でもあったのではないかと」


「ガスの罠?」


 不満そうな声でそう言ってくる死神にソフィーは先を促す様に質問する。


「ほとんど密閉空間ですし煙系の罠だったとしたら知らないうちに、お嬢様が吸っていてもおかしくありません」


「でもそれだとあなたも吸ってるじゃない」


「ああ、自分にはそういった幻覚やらなにやらはだいたい効かないんで、まぁあのタイミングでという事は遅効性の物でしょうし、個人差があったという可能性もありますけどね」


「なるほど…結局今何か起きてはいないの?」


「起きて無いですねぇ…まぁ薬飲んだんで効かなかったのか治ったのかわからないですけど」


 死神は肩をすくめてそう答えた。

 確かに薬の効果でソフィーの幻覚症状は消えた、なので薬が効くのは確かだろう。

 ソフィーは納得したようにうなずき、そしてふと気が付いたように口を開く。


「ふーん…というかあんたいつの間に薬飲んでたのよ?」


「?ああ、もうあの小部屋から動き出すときにはもう飲んでましたよ」

「いつの間に…」


 当然でしょ、というような声色で死神はそう言い、ソフィーは不満そうに目を細める。

 彼はソフィーに何も言わず勝手に行動する事が多々ある、それは確かに必要な行動であることが殆どだがそれでも一言ぐらいは欲しいところだ。

 そもそもソフィーからすると彼には普段の行動含めてあまり自由に動いて欲しく無い、周りからの使い魔への印象は召喚主にも影響する、今回の探索で意外と戦えるなというちょっとした好印象があってなおソフィーが抱く印象は悪く、不安の種だ。

 

「はぁ…まぁいいわ」

 

 しかし、それを彼に言ったところで改善されるわけでもない、ソフィーはそれを理解しているためそれ以上何かを言うことは無かった。

 ソフィーは気持ちを切り替えて口を開く。


「それじゃあ明日はもっと慎重に行きましょう、ひとまず空気を浄化する道具を用意しましょう」


「最初から買っておくべきでしたね」


「うるさいわね、なんでもかんでも対策なんてできないわ、まぁそうも言ってられない状況になった訳だけれど…」


 あと残りは一日半、最悪午後も使ってしまえば探索に余裕はできるが、そうなると前日の内に馬車に乗れなくなる、為その日の内に学校まで帰れるか怪しくなってしまう。


「ていうかなんか相当ギリギリじゃないですか?今回の目的、しかも罠とか沢山で条件悪いですよ?更にお嬢様体力無いし、異常事態への対策も薄いし」


「うっさいわね…!あんたが少しでも実力を発揮しやすくてかつ、難易度の高いダンジョンがここだったのよ!」


「確かに微妙に薄暗い分自分や影が行動を制限されてないですけど、どっちにしろ…」


「あーはいはい!分かったから!明日の探索に疲れを残すわけにもいかないからもう寝るわよ!」


 ソフィーは話が長くなりそうだと感じたため、強制的に会話を切り上げ布団を被る、これ以上この話をしても不毛であると判断したのだ。

 死神は呆れたように首を振ってソフィーを見つめていた。


「…所でお嬢様」


「?何よ、アンタも早く寝なさい」


 呼ばれてソフィーは布団からひょっこっと顔を出す、彼は相変わらず椅子に座ったままだった。


「いや、寝ろもなにも、ベットは?」


「ベットなら…あ」


 そう言われてソフィーは失敗を自覚する。

 ソフィーが借りた部屋は一つ、そしてベットは大きめのが一つだ。


「えっと…」


「はぁ…お嬢様が間の抜けた人だとしっかりわかりましたよ」


 死神が深くため息を付き、立ちあ上がると、椅子を並べる。


「ごめんなさい、いつも二段ベットだったのをすっかり忘れていて…えっと、何しているの?」


「椅子を並べてその上で寝るつもりです」


 死神はそう言いながら手際よく机と椅子を移動させ並べ、その上に影の布団を敷いて横になる。

 その様子にソフィーは慌てたようにベットから起き上がる。


「いやいや!それなら私がそっちで寝るわ!」


「あのね、お嬢様、椅子二つだとお嬢様には幅が足りません、しかもこの布団は自分の影です、自分がそっちで寝るとしたらお嬢様は床で寝た方が遥かにマシになりますよ」


 慌てているソフィーに死神は冷静に指摘する。

 実際彼が言っている事は事実だ、彼の体格だからこそ椅子二つでまだ収まる、それに死神が今敷いている布団は影だ、腕を伸ばした位の距離でも離れると負荷が掛かるため、微量と言えど寝ながら展開し続けるのは厳しい。


「うぅ…そ、それなら!一応このベット少し広いからあなたの体格なら二人で…」


「いや、そういうベタな展開はいいんで、早く寝ましょう、おやすみなさい」


 罪悪感でおかしな事を言い始めるソフィーをなだめつつ、死神は影で部屋の明りを消すと、影の布団を深く被って眠りに入る。


「ああもう…わかったわよ…」


 そんな彼をソフィーは見つめていたが、諦めたようにベッドへ潜り込んだ。


「はぁ……」


 小さくため息をつく、今日は色々なことがあった、そして明日はもっと大変な事になるだろう、それを思うとソフィーはどうしても不安になってしまう。

 だが冷静になってソフィーはふと先ほどの事を思い出す。


(他に思いつく方法が無かったとはいえ、あんな事を言ってしまうなんて…)


 ソフィーは先ほど自分の発言を思い出して顔を赤くする。

 あんな言葉、今まで言ったことも無かった。


(変態だと思われていないだろうか…ただでさえショタ好きだと一部で言われているのに…)


 ソフィーは布団の中で静かに拳を握る。


 よくある弄りだ、召喚した使い魔がセクシーなお姉さんだったり、子供だったりするとそれをネタに変態だのロリコンだのと言われる現象、ソフィーも一部でそう弄られているのだ。


 正直今回に関してはソフィーの考えすぎだが、彼女にとっては大きな問題だった。


(いやいや…今はとにかく明日に備えて眠らないと…明日も大変なんだから…)


 そして彼女はもう一度ため息を付き、気持ちを無理やり落ち着かせて、目を瞑る。


 しかしソフィーは目を瞑っても中々眠れなかった、何度も寝返りを打ち、夜は過ぎていくのだった…


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