ショッピング
友和は前々から考えていたプランを、実行に移す時が来たと思った。
思い立ったが吉日と言うではないか。
新子ノ渡から、子ノ渡市の繁華街の近くに引越しするのだ。
昼すぎに不動産屋に行き、手頃な賃貸の、広めのワンルームマンションの契約を済ませ、その後、家具屋と家電ショップへ行った。
万年床とおさらばするのだ。
気の早い友和は、今週中に引っ越して来る事に決め、家具や、憧れのダブルベッドを、そう、セミダブルではないのだ。これを入居日に届くように手配した。
大出費ではあったが、長年実直? に勤めてきたサラリーマンの友和には、そこそこの蓄えがあった。
三国一の花嫁を貰うのである。
何をけちけち考える必要があろうか。
aタイプの1年間にも及ぶ滞在は、友和にとっては嫁取りにも等しいのだ。
結局、電化製品も最新型の物を選んで注文した。
アパートの物は着替えと本数冊を除いて、全て棄てるつもりであった。
家電ショップの後はデパートへ行き、aタイプの衣料品を思い切り良く、この世界では全く予備知識の無いaタイプの望むままに、ブランド品も含めて、何でもかんでも買ってやった。
そこそこの貯金は底をつくどころか、たちまち底が抜けて、借り入れまで食い込んだのだが、なあに、生命保険を解約してでも、aタイプを快適に、そして贅沢に過ごさしてやりたいのだ。
だからスッカンピンになっても幸福な友和であった。
「ええがな、ええがな。何でも欲しい物、バンバン買いなはれ」
とびっきりいい女を連れ回して何でも買ってやる。
いっぺんやってみたかったのである。
これだけ調子に乗った友和である。新車でも何でも買ってしまって、カード破産でもしそうな勢いなのだが、幸いな事に友和はペーパードライバーであった。
だから車までは買わなかった。
それにしても、盆と正月がいっぺんに来たような、生まれて始めての大盤振る舞いであった。
高級レストランでゴージャスな夕食を済ませアパートに帰ると、aタイプは押し入れから、重々しい銀色のバックを引っ張り出した。
「1年間お世話になる必要経費よ。足りるかどうか解らないけど受け取って下さい。地球では結構価値があるって、蘭丸さんに聞いたの」
本当にずっしりと重いバックを開けると、なんと、金の針金の束が入っていた。
友和は思わず口ばしった。
「純金なのか?」
にっこり笑ってaタイプが答える。
「うん、原子番号73、元素記号Auよ。オリオンの金物屋なら安いのよ」
友和は驚いた。
「十キロ以上はあるな。まったく! 腰が抜けたよ」
心配そうなaタイプである。
「ごめんなさい。反重力シール剥がしちゃったから重かったでしょ? 腰、大丈夫?」
友和は笑い出した。
「あははは、いや、本当に、aタイプは、きっと福の神なんだな」
キロあたり、いくらになるのか相場が解らないのだが、相当な金額になる筈である。
とりあえず、彫金の得意な谷垣に頼んで、aタイプとの純金のペアリングを作って貰おう。
と考える友和であった。