表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/51

茶の用意とざっくりとした事情

 そんなこんなで、玉葉様様と金枝さんを残してお茶のしたくをすることになった。でも、イザコザが大きくなってないか、少し不安だな。


「明、たしか、来客用の落雁があったよな?」


「あ、はい。戸棚に入ってますよ」


「分かった。じゃあ、持ってくる」


「ありがとうございます。あの、文車さん、金枝さんは瓜のお漬物は食べられますか?」


「大丈夫、大丈夫。あの方は好き嫌いないから」


「それなら、切っておきますね」


「おう、頼むよ。にしても、急にせわしなくなっちまって悪いな。金枝様は毎回、突然やってくるからな……」


 文車さんの顔に、少しだけ疲れた表情が浮かぶ。


「しかもねー、毎回ねー、夜なべでねー、囲碁とかねー、双六とかにねー、付き合うことにねー、なるんだよねー。まあ昼間はねー、暴れ箒がねー、遊んであげてるからねー、いいんだけどー」


 今度は化け襷さんが、ぐんにゃりしながらため息を吐いた。たしかに、眠らずに遊び続けるのは、大変そうかも。


「明、なんか遊びに誘われたら、やんわり断っておけよ」


「そうだねー。なんだかんだでねー、玉葉様がねー、相手になってあげてるからねー、任せちゃったほうがねー、いいよー」


「えっと、分かりました」


 少し申し訳ない気もするけれど、私がお相手をしても、すぐに負けて勝負にならないし。


「まあ、玉葉様に任せたら任せたで、かなりの確率で、大人気ない大げんかになるんだけどな……」


「そうだねー……、いつだったかはねー、危うくねー、うちとねー、金枝様の勢力とでねー、戦になるところだったもんねー……」


「いく、さ……?」


「ああ。金枝様も、ここからだいぶ離れた辺りで、あやかしの長をやってるからな」


「そうだねー、野良の子達以外はねー、大体ねー、玉葉様かねー、金枝様のねー、配下みたいなかんじなんだよー」


「そう、なんですか」


「そうそう。それで、大将棋の勝負でイカサマしたさないでイザコザした挙句、なら実戦で勝負、とか言い出しやがって……。さすがに、二人ともぶん殴って止めたが、肝が冷えたな」


「まあねー、夜なべしててねー、頭が回ってねー、なかったんだと思うけどねー。もう少しねー、立場をねー、考えて欲しかったかなー」


「それは……、お疲れ様でした……」


 兄弟げんかで本気の戦になったら、周りの方々は大変だよね……、それにしても。


「明、どうした? ボーっとして」


「さすがにねー、玉葉様にねー、呆れちゃったかなー?」

 

「あ、いえ。そうではなく、私、玉葉様のこと、何も知らないないんだなと思って……」


 金枝様のこともはじめて知ったし、それ以外のことも、私には教えたくないみたいだった。話したくないのなら、それでいいとは思うけれど……。


「あー……、勝手に教えると、お叱りをうけるどころの話じゃないから、あんまり詳しいこと言えないんだが……」


「とりあえずねー、明のことがねー、疎ましいからねー、色んなことをねー、内緒にしてるんじゃないからねー、安心していいよー」


「そう、なんでしょうか?」


「ああ。むしろ、逆だ、逆」


「逆?」


「そうだよー。知られたらねー、明がねー、逃げ出しちゃうかもってねー、心配してるみたいだよー」


「私が、逃げだす?」


 逃げ帰る場所なんて、もう……、というよりも、最初からなかったのに。それに、玉葉様から離れるなんて……。


「まあ……、私も化け襷も、そんなのは杞憂だとは思ってるんだが、事情も事情だからな……」


「なんというかねー、ご両親とねー、わりと重めのねー、イザコザがあってねー、変なところでねー、卑屈になってるかんじかなー」


「ご両親との重めの、いざこざ……」


「そう。そのイザコザの内容が、知られたくないことなんだよ」


「この辺のねー、あやかしのねー、中でもねー、知ってるのはねー、僕と文車と暴れ箒のねー、三人くらいなんだー」


「そう、ですか……」


 ご両親とのいざこざか……。そういえば前に化け襷さんが、昔の自分と私を重ねてる、なんてことを言ってたかも。


 ……それなら、思いだしたくもないし、口にだって出したくないか。


「ま、でも金枝様が言ってたとおり、女夫なんだし、いつかバレるんだから、新しい思い出が完成してもしなくても、早めに教えればいいとは思うけどな」


「そうだねー」


「いえ、でも、無理強いは……」


「それに。もしも、明が逃げ出すなら私の家に囲って、いろいろ着せたりしながら楽しい日々を過ごさせてやるのに」


「……ふぇ?」


 文車さんから、意外な言葉がこぼれた。


 えーと、冗談、だよね?


「はー……、文車はねー、事態をねー、ややこしくねー、しないでほしいかなー」


 化け襷さんが、再びぐんにゃりとため息を吐いた。


「いやあ、悪い、悪い。ただ、万が一このことで玉葉様とイザコザしても、逃げ場があるって知ってたほうが、明も気が楽になるかと思ってさ」


「まあねー、玉葉様がねー、乱心しちゃったときのねー、安全網みたいなのはねー、必要かなー。なんならねー、僕もねー、お手伝いをねー、するしねー」


「ありがとう、ございます……、でも、できれば……」


 このまま、玉葉様と添い遂げたい、かな、私がそんなことを望むのは、贅沢すぎるのかもしれないけれど……。


「ははっ。まあ、万が一の話だから、そんな深刻な顔すんなよ!」


「そうだよー。玉葉様もねー、なんだかんだでねー、しっかりしてるからねー、そうそう乱心することはねー……」



  ミシッ


「ふふっ、いきなり尋ねてきたと思えば、そんなくだらないことを吐かすとは……、一度、痛い目を見ないとわからないようだね!」


「わはは! やれるもんならやってみろ、この分からずや! 返り討ちにしてやるぜ!」


「玉葉様! 金枝! ケンカ駄目! お屋敷がグンニャリしちゃう!」


  ミシミシミシミシ




「……ないとねー、思いたかったかなー」



 いつになく不穏な音と、張り上げられた玉葉様と金枝さんの声と、暴れ箒さんの焦った声を受けて、またしても化け襷さんがグンニャリしてしまった。


「……明、とりあえず瓜の用意は後にして、洗い桶に水汲んでくれ」


「あ、はい。分かりました、文車さん……」


 多分、お二人に浴びせるつもりなんだろう。


 申し訳ない気もするけど、お屋敷がグンニャリしてしまうことは、玉葉様も望んでない、はず……、だよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ