傷だらけのライダース
2017年 革ジャンにミンクオイルを塗っていた時のお話
ずっと着続けている服がある。
買ったのはもうずいぶん前になる。どうせバイクには乗り続けるのだし、一生着ると思えば安いものだと、分不相応な金額を払って買ったライダースだ。
私にとって高級品のそのライダースは、いつも私と共にあり続けた。
高級品だからといってしまっておく気はさらさらない。晴れの日も、雨の日も、夏も、冬も、着続けたそのライダースは、気が付けばたくさんの傷がついていた。
手入れをしながらひとつひとつの傷を見る。
この傷は、あそこで転んでついた傷。背中で草の上を滑りながら、革ジャン着ててよかった~って思ったっけ。
この焦げは、バイクのマフラーに触れてしまって付いた焦げ。袖から煙が上がっているのに気づいてあせったっけ。
この縫い目は、ほじけた所を修理した跡。修理してくれる店がなくて探し回ったっけ。
なんだ、傷だらけだな。こうも傷があったのでは、高級品が台無しだ。人には「価値無し」と言われるかもしれない。だが、この傷1つ1つが私にとっては愛おしい。汚れの1つ1つが私と共に歩んできたことの証なのだ。他人がどう評価しようと知ったことではない。
これは紛れもなく、私だけのライダースなのだから。
私だけがその価値を知っていれば良いのだから。