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初めてのAP戦闘

誤字報告感謝です!!!

 ヒニルたちは怒っていた。2日に渡るスルー、見え隠れする影だけを追い気力と体力を消耗するだけの時間。配信の同時接続者数は200を割るような状態となっていた、オレンジと『HAO』という名前があるのにもかかわらずだ。



 そしてそれはヒニルと協力者との溝を広げる事にも繋がっていた。ヒニルは思い通りにいかないが故に彼らに強く当たり、一方協力している視聴者側としては何故そんなことを言われなければならないのか、という不満がたまってしまうのである。



 この突撃は正にその隔たりを表すものでもあったのだ。ヒニルがその場にいないにも拘らずオレンジに直接攻撃するというのは配信の企画としてはあり得ない事なのだから。



「よし行くぞ、オレンジを倒して断」



 鋼光社前に集結していたのは実に20人に及ぶプレイヤーだった。全員が装甲型パワードスーツに身を包み機関銃を抱えている。Jankyと呼ばれるその銃は低価格高火力高故障を掲げる兵装だ。



 が、その力が発揮される前に5メートルもの長さを誇るブレードが彼らの首を切断する。その場にいる全員は驚愕していた。ブレードの大きさだけではない、APというものが動いていて、しかもいつの間にか背後を取られていたが故に。



「背後だ、撃てー!!!」


「硬いなぁお前ら!」



 相手が回避できなかったにも拘らず一太刀目で2人しか倒せなかったことに舌打ちする。切り飛ばされた首は切断面と血を見せつけながら宙を舞っている。  



 それらが落ちる前に二太刀目を叩き込む。重装甲故に小回りがきかないのは同じ条件だ。しかし裏口からAPを移動させて背後を取ったこの差は極めて大きい。



 操縦桿を全力で前に倒し、思考をAPに合わせる。VR技術の応用という話は事実だったようで手を動かすと念じればそのように動く。



 だが違うのはそれが機械によるラグが発生するという点だ。先程の袈裟斬りから判断すると大体0.5秒ほどラグがあり、更にブレードの重さで想定の二段階下に攻撃が入ってしまった。故にパワードスーツの装甲板に引っ掛かり2人しか斬り飛ばせなかったのだ。



 だから。



「ーーー2つ上」


「剣より銃の方が上だ!!!」



 脚部関節が音を立てて人工筋肉による歪みを抑える。機獣油により滑らかに動いた腰が脚部の力をブレードにそのまま乗せ、それが先程とは違い装甲が薄い首に走る。



 とはいえ流石装甲型、100kgを軽く超える質量のブレードが人工筋肉により全速力になったとしても簡単に切断されてはくれない。首元の薄い装甲に当たったはずなのに火花と振動が飛び散り剣筋を歪める。



 それでもAPがブレードを振るった瞬間4人の体が両断された。両断された機関銃が飛び跳ね甲高い悲鳴を上げる。



 同時に全力でブレードを振るった代償に体が少し振り回されたが、その隙をつくことは許されなかった。



「意外と戦えるねAP。勿論彼らが初心者で中距離型なのもあるけど」


「さんきゅーやで、残りはこっちでやっとくな」



 彼らが背を向けた扉から意識の狭間を縫うように二人の少女が飛び出してくる。



 一人は素早く姿勢を下げて右側に滑り込み完全に死角となる位置からサブマシンガンを連射する。紅葉は『脚部改造:加速』を二段階初期スキルで習得していると聞いていた。それを活かしたアクロバティックな動きは敵を大いに惑わしていた。



 背後からの銃撃を装甲で防ぎ撃ち返そうと振り向いた瞬間に紅葉はその場所から消えている。他の取り巻きの影になるように滑り込ませその位置から関節に銃を連射、膝の部位から出血。



 対応しようにも圧倒的な速度で銃口を定めさせずに装甲の薄い所に射撃を行う、それが彼女のスタイルだった。



 確かに強い。強いがもう一方。



「ほい」


「ほい、じゃねえよ……」



 ぐしゃりという音と共に10個の塊が地面に投げ捨てられる。先程まで俺たちを殺そうとしていたプレイヤーの首だ。



 レイナは自分の役目は終わったとばかりに血に染まったナイフを拭う。実際何が起きていたかは俺視点から見ても辛うじてしかわからなかった。



 やっていることはナイフで首を斬り続ける、それだけだ。問題はその全ての動作が圧倒的な速さで行われていたためナイフの反射と飛ぶ首、動く影以外の何も見えなかったことである。



 紅葉や俺は隙がどうこうという話ができるがこいつは明らかにその次元を超えていた。多分20人全員レイナだけでどうにかなったのではなかろうか。



「いやー、身体能力が低いって困るね。倒すのに結構手間取ったよ」


「あてつけかオイ。で、ここから配信をオンにして目的地に行けばいいんだよな?」


「ここまで配信で流すと鋼光社とオレンジの関係が自明になっちゃうからね。オレンジ目当ての人がここに来続けると大変なことになる。きちんと調べればわかる、くらいにしておかないと」


「16時に突撃やで、頼むわぁ」



 参謀レイナ様の指示通り配信をつける。ヒニル君は待たされすぎて今、街の中央でブチギレながら報告を待っている状態とのことだ。そこに向かって一直線、俺が正面で陽動を行い二人が後ろから殺すという作戦で仕掛ければ良い。



 配信タイトルは、あまり乗り気じゃないので『オレンジ配信』でいいや。取り直したアカウントで保存してーーはいOK。



「気をつけてな、数の暴力は脅威やで。そこの人は当てはまらんみたいやけど」


「最強だからね。人類皆1レイナ以下の戦闘力しかないのを恥じるべきじゃないかな?」


「膝撃ち抜かれても同じこと言えるん?」


「リアルなら再生するから実質問題無し」


「ゲームの話しとんねんで……」



 そう言いながらレイナたちはカメラに映らないよう裏路地に去っていく。配信を開始しても特に喋ることがなかったので俺は無言でAPを走行させ始めた。



 APには静音モードというものがある。隠密作戦、特に聴覚にすぐれる機械獣対策として必ず実装されているものだ。それを利用しながら一歩一歩走る。



 流石に物珍しいのか見かけた人は目を見開いているのがわかる。見ろ見ろ、これがAP様だ!!!



「えーっと、このまま商業区を過ぎて駅を越せば行けるんだな」



 APの歩行速度はかなり早い。車と並走できるくらいの速度をコンスタントに出せる、本来は輸送目的に使われていたものなのだ。だから思ったより早く目的地につきそうで、少し困ってしまう。



 コメント欄は既にお祭り騒ぎとなっていて


『オレンジ出た!!!』

『ヒニルとの件どうなったんだ?』

『なんか情報出るのか』 

『ログイン制限かかっててダルいです、アプデはよ』



 などと書き込まれている。俺は運営じゃないからアプデなんてできません、あと同接もう2000超えたのか早いな。ヒニル君に1割くらい分けてあげて欲しい。



 もう少し走ると駅にたどり着く。が、目的時間よりかなり余裕があった。先に行ってもどうなんだろう、そう思っていた所で俺は妙なものが目に入る。



 この駅はもともとあった駅が破損を繰り返した結果できた廃墟である。だからもう何もないただのオブジェだと思い込んでいたのだがそれは違ったようだ。



「地下……?」



 それは2階や3階ではすまないくらい下まで繋がる、かつてエレベーターのあった穴だった。



 ……ちょっとくらい寄り道してもいいかな?

『戦闘バランス』

AP>第三世代獣人>能力者>改造人間>旧人パワードスーツ

上記のバランスは対機械獣についてであるが、やはり金がかかるだけありAPは強力である。紅葉が無料にしてくれているから良いもののまともにやれば一年は金策をし続けなければ修理できなかったと思われる。


因みにこのバランス、改造人間とパワードスーツはその機械獣に有効な装備をあとから追加できるという応用性については考慮されていない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 色んなパータンがありすぎてこまる 言ったらもうイベントが終わってたとかかな
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