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冒険者ギルド

「さて、ここが冒険者ギルドだ」


「名前はファンタジーっぽいのに中身はやっぱりSFやな。機械獣の買い取りサービス、武器購入のための特別融資、色々やっとるで~」


「俺にはあまり縁は無さそうだけどな……。APの使い方講習とかないのか?」


「APの破壊講座はあるなぁ」


「壊すなよ!」


「あとAPの分解、売れる部位の解説講座」


「嫌われてるのかAP……?」



 まあ現時点では、だ。俺が必ずAPの戦闘面における実用性を示すのだ。そう思いながらレイナに続いて歩く。冒険者ギルドは街の地下通路を迷路の如く進んだ先にあった。ひび割れとかを利用していたし明らかに本来の経路ではないが、俺たちは地下3階に降り冒険者ギルドに入ったわけである。



 ブラックリストで追い出されたりしなかった……とほっとしながら冒険者ギルドを見る。本来ビルの地下まるまる1フロアだった場所なのだろう。そのうち倒壊していない半分くらいの敷地面積を使って至る所で機械獣の処分をしていた。



 機械獣。設定資料で見た、本作におけるエネミー。大体が2種の獣と何らかの武装や道具と合体したような見た目である。例えば俺たちが今いる入り口の右斜め前で解体されているのは犬とムカデ、あと鉄条網の2メートルほどの機械獣だ。後ろの半身は犬でそれより前は全てムカデのような機械、そして体の全てを鉄条網のようなものが覆っている。全身が機械で構成されているため硬そうに見えるが職員は手慣れた様子で装甲を外し中から筋肉のような線を取り出す。



 そう、この機械獣は筋肉を持っているのだ。まあ何の機構もなく2メートル以上のマシンが動くわけがない。その仕組みが金属でできた筋肉繊維と何に使っているのかさっぱりわからない鋼の臓器である。こいつらが何を食べているのか、エネルギー源が何なのかは書かれていなかったが特定のエネルギー源が外部に存在しているのは明らかだ。



「こっちおいで二人とも」



 レイナがこちらに向かって手招きする。周囲には今回のクエストを聞きつけたのであろうプレイヤーが20人ほど集まって各々情報収集や交換をしている。このプレイヤーたちはおそらくかなりの実力者であろう、なんせこの段階で機械獣を倒しているのだから。うん、機械獣と戦ったことないからどのくらい強いのか分からないけどね。



 周囲のプレイヤーは俺が通り過ぎると「オレンジだ……」「実力も一級品なのか」「あのスキル構成でどうやって機械獣を……」などと好き勝手言っている。倒してません、ただの付き添いです。



「ここが観測システム。私はまだ金だから全ては使えないけど現存のプレイヤーでは一番上だと思う」


「なんだその自信。金でそれってことは上があるのか?」


「アダマンタイトやミスリルなどの虚重金属群だね。こっちは実金属だからランクが下なんだよ。銅、銀、金って順」


「アダマンタイト?」


「質量12+2iの炭素原子がダイヤモンドとは少し異なる構造で結晶化してるんだよ」


「日本語喋ってくれよ」


「むずかしかったでちゅね、おべんきょうだいがくにはいってからがんばろうね!」


「腹立つなお前!」


「大丈夫や、うちがオレンジ君を最強にしたる。テストの点数が3レイナくらい取れるかもしれんで!」


「どうあがいてもあいつが33点を下回る未来が見えないのとしれっとレイナを単位にしたな」


「紅葉君、1レイナを切っても自分を責めるんじゃないよ。差がありすぎるんだから」


「こういうのはしばらく経ってから気づくんよね、どうして自分が単位にされたんか」


「煽るなぁ!!!」



 仲がいいのか悪いのかわからない二人である。本名じゃなくてプレイヤーネームで呼んでくれた紅葉に感謝しつつレイナのもつパネルを見ると街周辺のマップが表示されていた。円形になっているのがこの街で周辺には森がある。結晶樹の先に何があるかを人類は未だ確認できていないが周辺数kmを探知することはできていて、赤いアイコンが機械獣の反応を示していた。そして東側には大きな赤い丸がマップの端に存在していた。



「距離は不明。方角だけわかっているのは確認方法が目視だからだよ。ただ進行速度を見る限り今日明日に攻めてくるわけではない」


「AP間に合いそうか、それはよかった」


「身体的特徴は……虫の体に蜥蜴の頭、全身から触手を生やした機械獣。ありゃ、道具の性質はないんやね」


「外見に現れていないだけもしれないけど分裂体は『UYK』の影響が強すぎて道具の性質は反映されないことが多い。勿論とんでもないものを取り込んだら話は別だけどさ」


「で、こいつはどれだけ強いんだ?」



 俺が聞くとレイナはタッチパネルを操作し動画データを引っ張り出してくる。30秒ほどの動画で、再生されるとすぐに映った。地獄が。



 どこかの分裂体との戦闘を映したものだった。画面に収まりきらない機械の体と、それにむかって突撃してゆく獣人たち。空からはミサイルの雨が降り注ぎその隙間を突くように砲弾が叩き込まれる。が、分裂体は無傷だった。ミサイルの半数を触手ではたき落としその破片が獣人に飛び込み肉片を生み出す。砲弾は直撃するものの分裂体の装甲にへこみがついただけですぐに再生する。死線を超えた獣人が手にもつ装置で装甲をこじ開けようとするが背後からの触手により肉片へ変わり、そしてカメラの映像が途絶える。



 うーん、R18Gは伊達じゃない、モザイク一切無しのグロ映像を見ながらそう思う。というか分裂体強すぎる、砲撃を無効化できる再生する装甲を持ってて異様な火力の触手アタックも可能であると。



「……これ昔はどうやって倒してたんだ?」


「融合型の特殊兵装で装甲ごと叩き壊していたみたいだね。例えばここだとパイルバンカーを叩き込んで装甲を砕いてそこにミサイルを撃ち込んだとある」


「でも今はないわけやろ?」


「ないね。私たちは今生身で戦車を倒そうとしている状態なわけだ。このままだとどうやっても勝てないよ?」



 うん、無理ゲーである。プレイヤーいくら集めたところで勝ち目が無さそうだ。この街を放棄してアップデートで増えたとかいう2都市に行った方が良い気もするが、負けた気になるので腹が立つ。



 となればやるべきことは情報収集その2、我らが掲示板様にて現状を確認するしかない。頼むなんか来て打開策……!

プロット書いてたらキャラクターが急に暴れだしてしまったのでちょっと難航してました。

こっちの方が面白いのは間違いないんだけど前提情報が多い……!



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― 新着の感想 ―
[良い点] まあ設定は作るのが楽しいから 仕方ないね
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