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9 キースさんの行方

 

 次の日の朝、俺が一階に降りると、ちょうどキースさんが出かけるところだった。


「おはようございます。キースさん、今から魔物討伐に行かれるんですか?」

「ああ、今日の魔物は報酬(ほうしゅう)がいいから夕食はご馳走だ」

 と笑顔で出かけていった。


 キースさんが出かけて少しすると、リタたちが降りてきたので、3人でご飯を食べた。


 クロフォード家の食事は極力みんなで食べるそうだ。俺の分も準備してあり、家族だと言ってくれているようで嬉しかった。


 午後は、ローナさんに頼まれたものをリタと買いに行ったり、街の中を案内してもらいながら過ごした。


帰ってからはリタと魔法学院の入学試験対策をしていた。筆記もあるらしく、あまり勉強が得意ではない俺は不安に()られていた。


 勉強に夢中になっていると、外が暗くなってきた。今日は一日中リタと一緒にいた。でも、ずっと楽しくて俺はこの家族に出会って2日目だというのに彼らのことが大好きになっていた。

 

 そういえばそろそろキースさんが帰ってきてもいい時間だと言うのに未だに帰ってきてない。ローナさんは、きっと困っている人を助けてて遅れてるのよと言っているが、不安そうな顔は隠しきれていない。俺は少し嫌な予感がして、


「ちょっと探してきます」


 と言って、宿を飛び出した。


 探すと言ったが、俺はキースさんの行き先を知らない。とりあえずギルドに向かえば行き先がわかると思いギルドに向かった。


 ギルドに着き、受付の人に話を聞こうとした時、ギルドの食堂で飲んでいる男の人たちが


「キースのやつバカだよなあ」

「ちょっと報酬がいいからって、まんまと依頼を受けやがった」

「1人であの魔物を討伐できるわけねえのに。ろくに依頼書見ずに受けやがった」

 と言う声が聞こえ、


「すいません、その話詳しく聞かせてもらえますか?」


 と話しかけた。普段なら知らない人に自分から話しかけたりはしないだろうが、今はそれどころではなかった。キースさんを()めたらしいこの男たちに怒りで今すぐ殴りかかりたかったが、とりあえずキースさんの居場所を聞かなくてはならない。


「あぁ、誰だお前は」

「まあまあ、いいじゃねえか。面白い話は共有しねえとな」

 と言って思いの外すんなりと話し始めてくれた。


「冒険者を始めたばかりのキースってやつの話なんだが、俺たちの行動にいちいち文句をつけてきて目障りだったから、先輩としておすすめの依頼を教えてやったんだ」

「その依頼がC級の魔物討伐なんだが、この魔物がちょっと厄介でよぉ。今まで何人かの冒険者が討伐に向かったんだが、誰1人討伐できなくて、どんどん報酬がよくなってんだ。だから、貧乏人のあいつにはちょうどいい依頼だと思ったんだ。それになんか家族が増えたとか言って、教えた途端嬉しそうに依頼を受けやがった」


 家族が増えたってもしかして俺のことか?

 俺は嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちと、こいつらに対する憎しみで感情がごちゃまぜだ。

 とりあえず、今はキースさんの居場所を聞いて、助けにいくことが先だ。


「そのC級の魔物はどこにいるんですか?」

 と聞いてみた。

「ん?コリンの森だがそんなこと聞いて――


 それを聞いた途端、俺はすぐにギルドを飛び出し、コリンの森に向かった。ルーマからだと歩いて3時間くらいかかるが、強化魔法を最大までかけて、10分で着くことができた。俺は急いで森の中を探した。


 しかし、しばらく探しても見つからず、俺は焦っていた。焦っていてもしょうがない。俺は、一旦深呼吸をして落ち着く。


 そう言えば、エルヴィー様といる時に俺はなぜかB級の魔物の居場所がわかった。魔力探知とかいっていたっけ。もしかしたら、あの時のようにキースさんの居場所がわかるかもしれない。俺はあの時の感覚を思い出しながら、目を閉じてとりあえずこの辺りの生き物を探すイメージをしてみた。始めはうまくかなかったが、徐々に慣れて魔力を掴むことができた。

 

 魔力探知を続けていると、動物や魔物ではなく人だと思われる魔力を感知した。俺は急いで魔力を感知した場所に向かった。すると、そこにはキースさんが血を流して倒れていた。俺は急いでキースさんに治癒魔法をかけた。血を流しすぎたせいかすぐには目を覚さなかったが、とりあえず無事なことは確かだ。俺はさっき魔力探知をしたときに、ギルドのやつが言っていたC級の魔物だと思われる魔力を探知していた。

 

 とりあえずキースさんを(かつ)ぎ、その魔物のところに向かった。


 見つけた。そこには、巨大な(はち)の魔物がいた。こいつがキースさんをこんな目に合わせたのか。


 しかし良く見るとこの魔物もだいぶ弱っている。おそらくキースさんがやったのだろう。俺はキースさんを少し離れたところにおろし、この魔物と戦うことにした。


 しかし、この魔物の弱点がわからないと戦いにくい。ギルドにいたやつが今まで何人も挑戦しても倒せなかったと言っていた。C級でも強いに違いない。熊の魔物と戦った時に、騎士団の人が使っていた魔物を鑑定できるアイテムがあれば弱点がわかるのに。そう思っていると、魔物の横にステータスが出てきた。そこには、


 

 個体名 ジャイアントビー C級

 HP:4280/8000

 MP:2210/5000

 スキル:魔法無効化


 

 と書かれていた。


 見えた!!


【魔法無効化】とは厄介だな。だから今まで戦った奴らは倒すことができなかったのか。アマリア帝国は魔法使いが大半だからな。それに蜂だからもちろん飛んでいる。剣や槍では到底届かない。この魔物に一番適している武器は弓だろう。しかし当然弓は持ってない。


 さてこの魔物とどうやって戦おうか。この魔物を地上に撃ち落とせればいいんだが……。


 俺は蜂からの毒攻撃をかわしながら考えていた。


 そうだ!!


 この魔物を倒す作戦を思いついた。あたりを見渡し、この作戦に必要なものを探していた。目当てのものは案外近くにあった。俺が探していたものは大きな岩だ。直径2メートルある岩を持ち上げ、蜂めがけて投げた。大当たりとはいかなかったが、羽を掠め蜂は墜落した。


 よし!これならいける!


 その隙に、俺はアイテムボックスから、家を出るときに母さんにもらった剣を取り出し、蜂に刺した。剣はうまく扱えないが刺すくらいなら俺にもできる。魔物は断末魔(だんまつま)の叫びをあげ、やがて静かになった。

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