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惨殺  作者: ジャクソン武蔵
第壱章 轗軻不遇
3/5

第弍話 有為転変

言い訳:趣味範囲で投稿しています。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


作品内に含む

地名、歴史は現実と一致させています(1部抜く)


人物、出来事、病原体には現実と一切関連性は御座いません。


実際の病原体をベースにしていますが、現物とは無縁です。


※1部で異なる場合があるのであとがきに記載します。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「________。」



「誰.........だ.............?」









写したのは、



化け物だ。





両腕、背中、そして瞼上。

骨と筋肉と眼球の変形した____がへばりついていた。


だがそれ以外に不意なところはない。

骨格は元の原型が残っているし、視覚、聴覚、嗅覚、全て戻っていた。



身につけていた服は粗ちぎれて黒色のシャツは赤く滲んでいる。糸くずを身にまとっている感じだ。


そんなことより視覚が一周全て見えることと左右の重さの違和感が余計に気分を酔わせる。



ふと鏡に映る自分の顔の部分を見てみた。

顔は変わってなかった。

が、周りの化け物に眼が行くと、昨晩の夢を思い出し、衝動で右拳を鏡に振りかざした。




パキッ_____




元々老朽化している鏡は直ぐにヒビが枝分かれしていき、鏡全体に行き渡った。


右手の基節骨辺りからは血が静々と流れるが、気に刺すことはなかった。


何もわからず考えようとしても根本的物事が思い出せない上に酔う。気分すら不感症だ。


洗面器の淵に手を置き膝を付いた。

悲しくも悔しくも恐怖でもある左胸の重みは涙も奪った。






パリンッッ_______







「.........!?!?ぇえ!?!?」


静かな家に響く急な音に怪物は声を上げる。

奥からガラスの割れる音とネズミくらいの石が目の前に飛んできた。


ものが入ってくるのは頻繁にあることではないが、揉め事の多い今ではおかしくはない。だが、下はまだ崩れたコンクリート。壁に寄せられているが近寄れないくらい積み上がってる。

そしてここは4階だ。腹いせとは思えない。




怪物は頭の回転が鈍く感じた。


まだ涙すら出ない。




壁や床の感触を頼りに飛んできた方へと肉を運んだ。

前後左右全く分からない。




ただ引きずった。


ものを落とし、割りながら引きずった。


視界が薄れても引きづった。


ただ引きずった。




目覚めた時居た寝室にたどり着いた。

数分前まで意識は明確だったがもう動かない。全方位霞んで見える。体力がない。それに、



腹が空いてたまらない。


遂に力尽き、肉の塊は膝を付き上半身を地に付けた。













途中保存Now Loading......













割れた窓から人間の手が表し、内鍵を開き、窓を開けた。

全開の窓から靴を踏み、身を乗り出して肉の塊の前に立った。

塊を見ると、表情一切変えずしゃがみだした。



「おーいおーい?おーい?なにやってんのさー。ねー、ちょっとー?返事できない?」



人間は塊の額を押し、顎を上げた。

塊の目は薄ら人間を写し、顎は動かず唾液が人間の手に垂れる。



「あーじゃあちょっとキッチン借りるよー。」



立ち上がった人間は塊の頭を音を立てて落とし、キッチンを探し始めた。


塊は細小に聞こえる水道の音で眼が僅かに揺れた。



「ほら水持ってきたからちゃんと通してよー?」



人間は塊の頭部の毛を掴み上げ、口を開けさせると入れてきたコップ一杯の水を口内に流した。



体力のない塊は食道を広げ、器官に水を通すのも、考える思考ももはや明確ではない。


そこで気づいた人間は人差し指と中指を舌の奥へ進め、無理矢理広げ水を通した。


おかげで水は元の一杯の半分しか含むことは出来なかったが、塊はやっと意識がはっきりし、瞬きすると目の前の手を辿って顔を見上げた。



「......っ......ぁっ.......。............。」



「あれ突っ込み過ぎた??とにかく起きてよ〜」



話し方に覚えがあった。

少し独特な口調の昼間に珈琲のほろ苦い匂いと共に記憶がある。



「....っ.........フ.........っ.....」


「レオわかるー?フリスだよー」



聞き覚えのある声はフリスだった。

口調もそうだが、記憶のあるコーヒーの匂いが微かに脳を刺激した。




「ねーねーこれ指何本に見えるー?ほらほらー。てか僕の手見えるー?視野大丈夫ー??あっはは」


フリスは少し馬鹿にしながら肩をポンポンした。

塊は呼吸も概念もある。だが立ち上がる力がない。原因は塊自身も見込みはあった。



腹の空きが重かった。

喉も潰れるほど。



塊は右肩に付いた肉を床に叩きつけ、産まれたての鹿のように震えながら、上半身を上げた。左肩の肉も横へ突き出し安定を保とうとした。


フリスは虫を見る少年のような目でただ見た。


塊は枯れた声でフリスに口を開けた。


「ぁ..............フリ........ん...........で............」


水分を必要とする喉から出る声は、枯葉を粉々にするようだ。


「えーーーー??何ーーー????ちゃんと喋ってくれないとわかんないってーーーー!!!」


塊の正面から怒鳴るような声量で喋るフリスの声は塊には小声で言ってるように聞こえる。



「あ??なんだー???........。......!あー!!はいはいはい。そーっちの方ねー。」



フリスは肩に掛けたカバンから包み紙を出し、紙を拡げた。



塊は薄らとしか周りが見えない。

が、体を操られたかのように包み紙へ食らいついた。


グチャグチャ音を立て、僅かな時間で紙ごと胃へ放り込んだ。



「何ー?やっぱお腹空いてた?」


腹が満たされると脱力が吹っ切れ、正常に戻った。


食感はロース肉のように柔らかく、歯にとても挟まる。酸味が僅かに喉裏を刺激する後味。


美味いとは言えないが、腹を満たすのなら充分だった。


「ぁカハッッッゲホゲホッッ......」


息を吸うごとに喉がヒリヒリして痛い。皮を剥がされているようだ。


「話せる?」


「.....ゲホッッゲホッッ......なんとか........。」



体力が回復すると思い出した。

自身がレオであることと、ここが自分の寝床だと。



レオはフリスに飢える所を助けてもらった。

しかし、不可思議なことが過ぎった。


ヨーロッパ諸国で増え続け迫害させている化け物を肉眼で実物を見ても相手が何も動揺すらしないことだ。



「すみません......あの、フリスさん......ですよね.......?」


「うん。そうだよー。」


「資して貰った上で失礼なのですが..........何故驚かないんですか.......?」



レオの問にフリスはキョトンとし、そもそも伝わってるのか分からない顔をしていた。



「んー?いやー....見慣れてるんだよ。うん。」


「えっ.....そんな病棟で見るんですか........感染者。」


「いいや、ちがうよ?」



フリスはまた自分のバッグの中を漁りながら呑気に言った。




「逆に仲間が増えて安楽だよ〜。僕も感染しているからね〜。」


「.............え?」



当たり前の会話のように話を流しながら、フ

リスは折り畳んだ服を出した。



「それよりレオさ、何があったのかまぁ興味もないんだけど、それ服ってより糸を体に巻き付けているようなもんだからこれ着なよ。僕のあんま着てないやつだけど。」



フリスが渡した服を広げると、極普通の朱色のシャツとバーントアンバー(黄寄りの茶)のテーパードパンツだった。


衣類も戦前と比べ物価は跳ね上がっている中だ。貰うなど金に余裕のないレオには小気味よい。



「あっ、ありがとうございます......。しかし、今は礼に変わるものがなくて.............。」


「えぇ礼?どうせ忘れるからいいよ〜めんどくさい。」


言葉と同時に力が空気のように抜け落ち、上半身だけ前に着いた。疲れと同時にヘラヘラとしていた。

外も生活音が聞こえない。時計が今はないが早朝なのはわかった。




レオは巻きついた血の滲んだ布を払い落とし、受け取った衣類を身につけた。



としたいところだったが、問題に気づいた。



「あの.......フリスさん...........。」


「はいぃ?」


「この....背中のなにか.....肉みたいな触手.........どうすればいいのでしょうか.............。」



感覚はあったが体が慣れてしまった。

背骨に沿って眼球やら歯らしきものやらが所々現れ、しかも眼球は自分の視界と逆を向く。今でも酔いつぶれそうなのに、腹は満たされても変わらなかった。



それに生臭い。ハエが集って来そうだ。





「あぁそれ?僕もよく分からないから同じ『触手』って呼んでいるんだけど、戻し方はよく分からないんだよね〜。なんかこう体の芯にグォオオオオオオオオって入れるようにしたらどう?」


「いや......分からないです。」


「えー何とかしないと外出歩けないね〜。困った困った。」



言いながら横に寝っ転がって半分寝ていた。



「スゥゥゥ...........」



一応深呼吸してみた。

軽くなった気はしない。だが前に押し倒れた。

視界が前方しか見えなくなった。

肩に2本しか腕がない。

酔い気がしない。



「あ戻った。」


「随分簡易だね。」



レオは確認のため、背中へ右手を伸ばした。


指先に感じたのは葉脈のように無数の血管が膨れ上がったようで、所々大きめのレーズンがあるみたいな手触りだ。


違和感はないが知った以上、気になって仕方がない。手を離しても背筋に違和感しか感じない。



「あの.....フリスさん..........?なんか触手のあった背中に変なものがあるのですが...........。」


「ん?あぁ。それは戻らない後遺症みたいなやつだよ。慌てても変わらないよー。」


「..................。」



レオは言葉が理解できない訳ではない。

何故こうもフリスはヘラヘラアニメーションのキャラクターのように入れるのか胡散臭いからだ。



「あ、そうだ。その服来たら下の瓦礫ら辺に来てよ。いいものあるんだ。」


「いいもの?.......とは?」


「いいものは最初から言うより期待を積む方が面白いんじゃない?」


「いや、面白さは今欲しくなくて......。」


「欲しくなくてもあればメリットいっぱいだよ?仕事場が戦場の僕の兄だって言ってたさ。アッハハハハハハハぇぁあれ???待ってここ高くない???ちょっ戻ろう戻ろう。ってぁああああああああし滑った!!!!!!」



フリスは出てきた窓からそのまま落ちた。

外からは石にぶつかる音が響いた。


レオは心配はしたが無視して貰った服に袖を通した。ちょっと大きめだった。


それに遅いが風呂に入りたかった。血が少し固まって、気持ち悪い。洗い流したい。だが何かと面倒だし水道代が今より加算されれば払えない。




するとレオは、フリスの置いていったブリーフケースに気づいた。


曖昧な記憶だったが、あの時食らいついた肉を取り出した鞄だった事は記憶にある。


レオは思い出した途端、腹の空きが増えた。


嗅覚が途端に鋭くなり、外からの殺虫剤の匂いが住宅にも広まっているのに気づいた。ホコリっぽいしやめて貰いたい。



腹が減ることを考えると余計に抵抗出来なくなる。


ついでに気づいた。


食らったあれは生肉だ。新鮮で血の付いたままの。


腕に付いた血の匂いで、歯が腕に向いた。


欲に抗うのは不服なだけだ。


腕を曲げて目の前に出すと、パテやテリーヌに見える。





すると窓から小さい瓦礫が入り頭に当たった。


ガンッッッ




「イッッッッッッタぃ.....」



瓦礫が床に転がると同時に自分の腕を噛んでいるのに気がついた。痛覚もはっきりした。


歯を腕から離すと、欲は抑えられた。



“でも、今後外で腹が減るとどうなるか.....”



街中で暴れ、軍人に撃ち殺されるより、戦後生き延びた人を喰い殺す方が悔いが募る。


盗みを働くのは物交換の時代から不道徳の行為。しかし、死と天秤に掛ければ手を染めるしかないと考えてしまった。


血が垂れ下がる手を鞄にのばし、中を捜した。


紙束やペン、密封した錠剤、注射器、そして仕切りで隠した消臭剤と包み紙。数個あった内1番小さそうなものを1つ選び、自分の鞄に下に押し込んで入れた。



フリスはゴミ捨て場、いつの間にかそうなっていた所でなにかしているらしい。時短の事も考え、レオも窓から出ようとした。


だがフリスが頭から落ちていった事を考えると怖い。


第1にここは4階だ。


治療代修理代色々考えた挙句、



階段で降った。


口論楽しい。


猫可愛い。


動物動画のせいで作業進まない。

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