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恋に落ちた鬼
ある少女がいた。額に鮮やかな朱色の二本の角を生やし、妖怪総大将が最も恐れ、多くの者が覇王と呼称した伝説の鬼、その一人娘。
彼女が恋に落ちた。鬼である少女が人の子に。
――美しい鬼が恋に落ちた――
そして、彼もまた、彼女に恋をした。人である子が鬼の少女に。
――美しい鬼に恋をした――
しかし、今から語られるのは、二人が恋に落ちた時の、恋物語ではない。
この物語はその続きである。
これは鬼の少女が人の心を知っていく物語。
鬼の少女が人の子と恋をしている物語。
これは恋が
愛と戦う物語である――。