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わたしは犬である。2
わたしは犬である。
名前はコロ。
主人が帰ってきた。
帰ってきたのだ。
やはりわたしは間違ってなどいなかった。
いや、嘘をつくわけにはならない。一度だけだ。
一度だけ、主人を信じなかった。もう帰ってこないと。
なんと愚かなのだろう。
主人を信じ切ることも出来ずになにが守るだ。
そんなわたしを主人は優しく撫でてくれた。
以前と同じように。
いや。
以前より優しくなったか。
なぜだ。
理由はすぐわかった。
主人の番が遅れて家に戻ってきた。
赤子を抱いて。
この子はミキ。
貴女の妹よ。仲良くしてね。
番から赤子を受け取った主人は、その幼子をわたしの鼻元まで近づける。
弱く、小さく、脆く、甘く、温かい。
主人よ。
任せてほしい。
わたしがこの子を守ると約束する。
今度こそ。違えない約束を。
意気込みを込めて返事をしたせいで、赤子を泣かせてしまった。