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定期報告会②

「今のところ、こういった風になってます」


「……成る程ねぇ。……うーん」


ソファに腰掛ける俺と御薬袋さんの眼前には、うんうん唸って難しい顔をする束内さんと、珍しい事に植原さんも困り顔だ。


そう、本日は近況報告の定例会。前回から比べずとも色々な事があったと思うが、生配信までされた以上、先の騒動についてを問われるのは自然の摂理であった。


伝えたのは公開処刑の生配信後訪れたギルドハウス内でのヴィオと泥しぃからの条件。


来る3ヶ月後(ゲーム内にて。実際の時間では1ヶ月後)に行われるソロプレイヤーのPvPランキングを決める大会にて、俺とヴィオによるエキシビジョンマッチを行う。


そのマッチにおいて、俺がヴィオに一撃でも入れられれば話し合う姿勢を、万が一勝つ事が出来れば今恨まれている事象に関しては、今後一切口出し、手出しは無用となった。更に重要なのが。


「【一撃も入れられなかった場合、アバターをリアルと同期する】、か……ここが正直難しいね」


「やっぱりダメですか?」


「厳しいわ。特に私達を支援してくれている上層部は、あー……君の正体や私達の事がバレる前にクビにすべきだと」


やはり、不味いとは思った。俺達は姿形を出来る範囲で現実の肉体と結びつき難くする為に、初めのアバター制作の時点でエルフになったり男女反転させてみたり、バレない工夫をして社内でも内密に、しかもアカウントにはギフトまで付属する【ズル】をしていただいている。


そのある意味身内を裏切るような行為を露呈する可能性を、まだ発足したての部署の平社員ともなれば許される筈もない。


俺の外見が顕になって直ぐに身元がバレる事は無いと思うが、今回の騒動によって俺の名前が知れ渡り、注目度は更に高まっているのも足枷だ。


「一応、僕達も出来る限りのことは手伝うし、上層部にも掛け合ってはみるけど、基本的には自力で乗り越えて貰うしかないかもしれないんだ。本当にごめん」


「いやっ、そんな。お二人が悪い訳じゃありませんし、兎に角頑張りますんで!」


本当に、いい迷惑だな紫乃のヤツめ……今度会ったらとっちめてや……いや、また逆にボコボコにされそうな気もするが。


来月にはもしかしたら無職に逆戻り、か。冗談めかして心の平穏を保とうとしてみるが、報告した事でより現実味が増してプレッシャーがのし掛かる。


もし、負けたら。もし、一撃も入れられなかったら。入社を決める前の雨の日、薄暗い部屋で苔でも生えてきそうな生活をしていた自分を思い出す。そして空百合に入社してからの忙しなくも充実した日々も。


失う事を想像し、身震いする。あんな場所に、あんな自分にはもう戻れない。


絶対に、一発入れてやる!





「「失礼します」」


部下二人が揃って退室する。二人共特別賑やかな性格とは言えないが、部屋の人口が半減するだけでスッと空気が落ち着くのが肌に感じられる。


本日の特務課の定期報告はこの組で半分、残り二組か。壁掛け時計を見れば十二時を少し過ぎた頃。空腹で堪らないわけではないが、一般感覚で言えばここいらで休憩のタイミングではないだろうか。


「悠一君、昼食にしよう」


「あ、そうですね……じゃあ次の笹部さんと御方君には少し時間を空けて来るように伝えておきます」


「助かるわ、何が食べたい?」


「え、あー……じゃあ社食でコーヒーだけ」


「ふふ、ごめんなさい。貴方がお弁当持参なのは知っているのに」


我ながら、優秀で、可愛い部下だ。皆まで言わなくてもしっかり支えてくれて、毎朝保育園に行く子供と一緒にお弁当を作り、同じお弁当を持参して出社するシングルファーザー。


からかってしまって申し訳ないが、彼がお弁当を優先した事に対して安心する。私の事を気にしてそんな愛の詰まったお弁当を残すなんて言語道断だからな。


「はぁ、全く……そう言えば束内さん、識守君の件、どう思います?」


「どうもこうも。彼にとっては正に正念場。我々にとっては、正直面倒に尽きる……あれは家庭の事情なんだしね」


一応、彼から口外しない事を約束に事情は確認した。ほぼ確定で、妹さんからの何かしらの恨み辛み、条件付きでの和解の可能性。


だが色々と不味いことに、相手がソロプレイヤーランキング8位である紫電ヴィオ。ましてや破竹の勢いでトップギルド入りを果たした【ミスフィット衛星】のサブマスターときた。


私達が知った時には既に事後報告で、大々的にギルドマスターの【幻影美魔女】と呼ばれる泥しぃによって全プレイヤーに向けて発表された後だったのだ。


「ですよね……冷たいような気はしますが、一家庭のいざこざで社運まで傾かせられませんからね」


「そうね……はあ、せめて発表前に声をかけてくれていればね。幾らでもやりようはあったのに」


二人で肩を落とす。ギルド公式の発表さえされなければ関連企業への手回しや、泥しぃ本人への交渉等やりようはあった。彼等に任せっきりにしていたツキというやつか……いやでもっ!こんなに早急に部署の危機が訪れるなんてわかりっこないわよ‼︎


どんな手を使ってでも識守君には最低でも一撃入れてもらわなければならなくなった。手出しはしないつもりだったが、こうなった以上そうも言ってられないだろう。



それに……。


「あ、束内さん。御薬袋さんが元気無さそうなのも気になるので、少しフォローしてあげてください」


「やっぱり、気になるわよね」


「なりますよ。明らかに心ここにあらずって感じでしたからね……彼女も家庭の事情とかでしょうか」



思っても言わないものよ!全く……当たっていたらどうするつもりなんだか。一昔前の【ハラスメント暗黒期】に比べれば落ち着いた方だが、今でも何がハラスメントなのかヒヤヒヤしながら仕事をする時代だ。


彼等に家の事情を聞く事すらハラスメントになりかねないのに、そんなわざわざフラグを立てなくとも良いだろうに……まぁだが、やはり人が多くなるとやはりこうした人為的なミスやトラブルが目立つ。


「家庭の事情なら仕方ない……のかしら。何だか時々わからなくなるのよね、寄り添うのが正しいのか、喝を入れてあげるのが正しいのか」


「そうですねぇ……僕の入社した頃の束内さんなんて僕に対してハラスメントの塊みたいなものでしたけどね」


「君にだけなんだからいいのよ」


所謂黒歴史ってやつだが、そのおかげで彼と出会えたわけでもある。複雑な心境だが、その頃と比べれば歳も喰った分人間的に成長した実感はある。


生意気な後輩の広い背中をぱしんと軽く叩き、退室を促す。そろそろ休憩しないと、後もつかえているしな……あ、これもハラスメント、なのかしら?





プレイヤー【はなだ】の現在のステータス


L v17


HP670/670(初期100)+6

MP0/120(初期30、黄衣の蜥蜴の寄生中は毎分15ずつ減少)

AGI +35

ATK+30+14

VIT+20

LUK+15+15

INT+25+15

DEX+15+23

(SP割り振り後+パパラッチ補正で表記)


装備品


右手:【白雲】又は【一角兎の短剣】

左手:【化朽木の小盾】

頭部:【】

頸部:【若苔のマント】

胴体:【ライトメイル】

腰部:【革のベルト】

脚部:【白羽のブーツ】

アクセサリー【導き蜘蛛の眼帯】

特殊装備品:【一角兎の紅魂】【黄衣の蜥蜴(寄生)】

     


所持スキル


【パパラッチ】(以下パパラッチ内包スキル)


【レールスライドlv2】【ナイトスマッシュLv2】【隠密Lv1】【追跡Lv1】【聞き耳Lv1】【グルメLv1】【速記Lv1】【速読Lv1】【フラッシュレイ】【交渉人Lv2】【カメラマンLv1】【片手剣Lv1】【短剣Lv1】【暗器Lv1】【カメラLv1】【記憶補助Lv1】【アジリティ補助Lv2】


(以下獲得スキル)

【溜め斬りLv2】【ダブルスラッシュLv2】【閃光刃Lv1】【切り払いLv1】【防御術(小盾・弱』】


【ファイアボールLv1】【フレイムボールLv1】

【ウィンドLv1】【ウィンドボールLv1】【氷球Lv1】【ストーンウォールLv1】


【睡眠Lv1】【回避Lv2】【パリィ+】【ダッシュLv1】【麻痺耐性(弱)】【根性lv1】


所持称号

【憎悪に対す者】【落下者】【ジャイアントキリング】【レアハンター】【方位磁石】【帝国騎士】【フレンドリィ】【ヒットマン】

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