HOLIDAY?②
「何してたんですか、シキさん!」
「どぁあ、いったたた」
絶賛、くんずほぐれつされているのは俺で、俺に覆い被さっている犬耳の奴が最近ログインしていなかったゲーム、【ハンター・ジェネレーション】のフレンド【シバックス】である。
まぁ実際ハンジェネだけ二人でしていた訳でもなく、他のゲームでもちょこちょこ一緒にプレイしていたりはする。その為、リアルの連絡先も交換していたのだ。
「何って……シバックスと同じで仕事だよ」
「そりゃあまぁそうで……え、仕事?」
「おぅ……あれ?言ってなかった?」
記憶を思い返す。シバックスが仕事決まったからと他の良く絡むメンバーでお祝いをしたのは、覚えてる。
俺は俺の仕事が決まった事を誰かに報告していただろうか……記憶にございません。何だったら親にも連絡してないな、それは不味い。
「シバックスがさ、仕事決まったーって言ってくれてから、俺も何だかやる気出ちゃってさ。一昨日から働いてる」
「え……僕のおかげで元気出た、んですか?」
「ん?……まぁそうなる、かな、うん。俺もやらなきゃなって思ったよ」
まぁ間違ってはいないが、ワーカーホリックに罹っただけなのは伏せておく。何やらご機嫌も直ったようで、ちょっと近況報告みたいな感じになる。
「へー、ゲームのデバッグ。あの無駄に壁にぶつからされたり、いらない物を無限に売り買いしたりさせられる?」
そう言うことにしておいた。仕事内容をそのまま伝えるわけにもいかないので、当たらずも遠からずなものにしておく。
「そうなんだよ、これがまた結構長いことダイブし続けるもんだから、帰ってからダイブする気にならなくってさ」
「成る程、それで全然メッセージにも気づかなかったと」
シバックスが酒場で提供されるエールをグイッと一飲みする、因みにほんのり麦の香りがします、どちらかと言うと麦茶。それを酒場でインベントリに仕舞えば、何処でも飲めるのだ。
今はログインした際のハンター達の活動拠点である村の一角で、噴水に腰掛けながら話し込んでいた。夜も近くなって来たので、人通りも多い。
「そうだね。シバックスは?順調に?」
「順調も何も、内定は決まりましたが、働き出すのは来年からですからね。それまでに研修こそ有りますが……ぶっちゃけ暇ですねー」
あー、そっか。ちょっと勘違いしてたけど、シバックスまだ大学4年目入ったとこなんだよな。寧ろ最短内定組か。そらぁ暇ですね。
「あー、成る程ねぇ。まぁこっちも出勤タイミングは自分で決めて良いみたいだから、またちょくちょく一緒にゲームしような」
「おお、フレキシブルってやつですね、羨ましいなー」
まぁ新進気鋭の大手だからこそ出来る事だとは思う。シバックスの方も似たようなもんで、ゲームの製作会社らしいが、流石に普通に出勤時間やらは決まっているそう。
「んん、まぁさておき、そろそろ行くか?」
「そうですね、行きましょう!僕【メガロイヤルコヨーテ】狩りたいです」
なんそれ、と思ったがつい先日追加された新モンスターだったと思い出す。何でも昔王侯貴族が飼い慣らしていた処刑用コヨーテが、脱走し魔素や周りの動植物を取り込み巨大凶暴化したもの、らしい。王冠の様に硬質化した頭頂部の毛が目印で、それが無い小ぶりの子分どもと出現するそうな。
「新しいやつか……じゃあ早速行きますか!」
◆
「よっしゃ、じゃあ、行くぞ?」
「はい!行ってきまーす!」
二人で目配せした後、その持ち前の超運動神経を活かしてシバックスが爆速で、すこし離れた岩場の上で佇むメガロイヤルコヨーテに接近する。
今回もシバックスは課金して手に入れた大剣でインファイト、俺は後からボウガンでサポートする手筈だ。タンクとか居たらやり易いんだが、今からメンバー募集するのも面倒だったので省略。
事前情報と違い、メガロイヤルコヨーテは単独行動中のようで、子分どもの姿はない。一撃で仕留めるのは無理なまでも、重たい一発を入れてから戦闘開始出来そうだ。
もうすぐシバックスが奴の真下に差し掛かる……3.2.1。真下で一度屈伸、下半身に力を溜め込み一気に大跳躍、大剣は既に振られていて、正に運動エネルギーが最大限になる瞬間、メガロイヤルコヨーテの胸部にクリーンヒット、ないっす〜。
一撃を喰らった奴は怯みこそすれ、追撃されないようバックステップで回避し……切れない。このゲームは敵も味方もHP制、故に一撃で仕留めたり致命傷や欠損を与えることはほぼ無い。そんなわけで、一撃与えたくらいじゃ何ともないのを承知なシバックスは、振り抜いた大剣の回転を利用して、コヨーテの方に飛び込んでいたのだ。
驚いたコヨーテは咄嗟にその巨大な前足で、プレスを放つがギリギリで通り抜け、更に懐に。地面スレスレの軌道で、振り上げられた大剣が下顎を直撃する。
顔面が跳ね上がり、視界が上を向いた所で俺はボウガンを三発撃つ。撃ち込んだのは徹甲榴弾。現実で使われる物とほぼ同じで、撃ち込んだ箇所で炸裂する。着弾は左の前肢、炸裂してダメージエフェクトが出る。
爆煙を利用してシバックスが姿を隠す。コヨーテは一瞬怯んだ間に見失い、視線が右へ左へ動く。そこにはもうシバックスはいない。
背後から腹の下を通過するようにスライディングしながら一閃。大きめのダメージエフェクトが散り、またもコヨーテは怯む。その間に正面側に回った俺が弾を一発。俺は下を向き、シバックスはスライディング中で背後になるからジャストタイミング!
弾はコヨーテには当たらず眼前で落下し出す。当たらなくていい、目の前に撃てれば。弾は落下前に炸裂し、中に詰め込まれた発光作用のある虫が辺り一面に強烈な光を撒き散らす。なんかこれ最近WAOでもやったな。
視界を潰されたコヨーテは鋭い爪をめちゃくちゃに振り回しながら後退する。
「ナイス、相変わらずヤバめな動きだ」
「シキさんこそ、合図もなくタイミングバッチリじゃないですか」
褒められるのは嬉しいが、君は本当どうなってるのか、息切れ一つ起こさないとは。二人で一旦合流したものの、余りの暴れっぷりに逆に近づくのが困難になってしまった。そうこうしてる内に視界も戻るだろう。
「じゃあ次……岩多いし、上から行こうか」
「そうですね……お?」
シバックスが興味深そうにコヨーテに向き直るので俺も注目してみれば、遠吠えするようなモーションをとっている……無音で。え、若い奴なら聴こえる的な物?
「なんか……嫌な感じですね。先行きます!」
返事も待たずに飛び出して行くシバックス、あの様子だと彼にも聴こえてないようだ。ちょっと安心だが、むしろ何らかの意味のある行動にしか思えなくなってきて、本当に嫌な予感ってやつだ。
「じゃあ援護しないとっと!」
本命のシバックスの一撃を入れる為、牽制の弾丸を数発ずつ放って行く。強烈な弾ではなく、多少のダメージを与える位の物だが、気は逸れるだろう。その間に接近させる。
そして死角から大振りに大剣を振り上げながら飛び出す寸前のシバックスの真横から、予想だにしない一撃が。流石のシバックスも回避できずダメージエフェクトが散る。
「な、んだ……子分か」
少し遠くて遠近感があれだが、2回りは小さいコヨーテが飛び出してきたらしい。メガロイヤルの方では無いからか、ダメージも少量のようですぐにシバックスから反撃のかち割りを喰らい、真っ二つ。
だが……
「あれは、不味いぞ……シバックス!シバックス!戻れ戻れ!」
出来るだけ大声で叫びながら、牽制の弾を撃ち続ける。ヘイトがこちらに向かうが距離もある、今はシバックスを一旦離脱させねば。
何故ならば、倒した子分どもの奥からわんさかわんさか、同じ様な子分コヨーテが湧き出しているのだ。シバックスは位置的にまだ気づいておらず、突っ込む寸前で急停止。
一旦此方に目線を向け、引き返せという指示を読み取ったのか素直に真っ直ぐ此方に戻ってくる。もちろん、コヨーテ達も引き連れてだ。それもそれでまずった。
「後ろ、子分がヤバいからな!とりあえず間引くぞ!全力で走れ!」
「りょー!」
もうお互い声でやり取り出来る位の距離までは来ている。メガロイヤルコヨーテ以外の子分共はまるで蟻の大群かのような数だ。一匹一匹は大した事ないが、あの物量では直ぐに踏み慣らされてしまうだろう。
とりあえず全力でこちらに向かうシバックスの直ぐ後ろに【爆散弾】を撃ちまくる。徹甲榴弾より火力も、範囲も広いが味方も巻き込み易いボウガンの広範囲弾だ。爆発も爆風も効果的にコヨーテ達を吹き飛ばして行く。
シバックスなら、まぁ大丈夫とは思っていたが思った以上の超反応で、逆に爆風を追い風代わりにして、更に加速しながらこちらに向かってくる。恐ろしいなこいつ。
「おおおぉぉぉおお!?」
俺も出来る範囲で後退しながら撃ってはいたが、直ぐにシバックスその他コヨーテ子分が眼前に迫り、コヨーテの海に呑み込まれかけたとこをシバックスにお姫様抱っこで回収される。
そのまま近くにあった岩の柱の様なところに着地する。2.3メートル位の高さだが、コヨーテ達は追って来れないようで、そのまま直進して行った。
「シキさん、降ろしますね」
「お、おぉ、ありがとうな」
我に帰ると急に恥ずかしいのでサッと降りて、メガロイヤルコヨーテを探す。奴は元の岩場付近で此方をじっと睨みつけつつ、ジリジリとにじり寄ってきている。逃げはしないようだ。
「しかし予想よりヤバイ量の子分だな」
「ですね、流石に避け切れません……どうしますかね」
うーん……正攻法で行くとなると子分の海は避けられない。となると……俺はボウガンしか今は持ってないしなぁ。俺も大剣やハンマーやらの大型武器ならシバックスをぶん投げれたんだが。
「まぁー、なぁ……走るか、海を」
「海を?」
「そう、言うだろう。水を走るには左足が沈む前に右足を、ってね」
「成る程……成る程」
ちょっと冗談で言ってみたんだが、純粋なシバックスはすごい一理あるみたいな、顔で見てくるもんだから直視出来なくて考え込むフリをする。もー、これだから素直ボーイは。
「いいですね!そうなると途中でどちらか脱落しても、多分ケア出来ないですが大丈夫ですか?」
それ俺だろ。この子自分は落ちない計算で話してるじゃないか……良いだろう、やってやろうじゃないか!
「もちろん!行こうぜシバックス!」
「はい!」
◆
うおぉぉぉお、お、と、と。
今で目測1/3位進んでるぞ!子分達の頭を足場にしながら、子分達が体勢を崩したり反転して攻撃したりする前に、次の子分を足場に走る……というかスキップに近い。
シバックスの方は流石というか、もう少し先にいて、ちゃんと走っている。あの足はどうしたらそんな速度で繰り出せるのか。
とりあえず二人共出発前に全力のバフをぶっ掛けてある。このゲームには魔法やスキルは存在しないので、完全なドーピングバフ。お薬系アイテムを使って、スタミナ切れの対策や防御攻撃の向上は済んでる。
後は本人のプレイスキル次第というやつだ。
「ご、めん、あ、そ、ば、せぇぇ!」
「さ、き、い、き、まぁぁす!」
いや違う、ちよこれいと、みたいな遊びでやったのと違いますから!彼は「それ良いですね」みたいな嬉々とした表情で振り返った後、更に加速……えぇ?
シバックスは2/3、俺はその少し後ろまでは来た。何とか今のところはこの方法で行けている。子分のUIが余り高くないのも良かった。
とりあえず敵に直進する、通り過ぎたら反転、眼前に敵が来たらとりあえず噛みつき、のパターン位の行動しかしないもんで、十分対処可能だ。可能だが……
スタミナ切れはないが、足が、足がもつれる。感覚がボヤけてくる。今右か?左か?踏み込みすぎか?無さすぎか?段々加減が良く分からなくなってきているのだ。
くっそ、しかし絶対ゴールしてやる!まだまだ、と自分に喝を入れ、足先に神経を集中し直す。右、左ぃ、右、左!行けるぜ、マイフット!
幸いメガロイヤルコヨーテの方は迫り来る俺達を見て、厳戒態勢には入った様だが、それだけだ。それでは先程と変わらんぞ。
もう直ぐ、シバックスが射程圏内に入る。俺も続いて行けそう、だぁ?
ぐらり、視界が揺れる。しまった、ちょっと斜めに踏み抜いた!
身体が斜め前に進み、重心がブレる。何とか反対の足を突き出すが、軌道修正とはいかず、次は前につんのめる。コヨーテ上で派手に一回転し、空に浮く。不味いぞ、このまま落下したら次の一歩は無理だ。呑まれる。
一か八か、ボウガンの銃口を地面側に向け、そのまま顔からダイブするように落下する。そしてコヨーテの海に飛び込む瞬間、銃弾を発射。
飛び出すのは弾ではなく、派手な帯状のビーム。あー、これトドメ用のとっておきのやつなのに……
ビームなのにどうなの?って思うのだけれども、しっかり質量を持っており、要するに反動で真上に押し出される。本当に、トドメ用の超一撃だったので、威力はお墨付き。直下のコヨーテは溶ける溶ける。
ビームの照射は後2.3秒。その間に少し銃口を傾けて、浮き上がる方向をずらし、前方側へ。毎度思うけど、この無骨なボウガンからどうやったらピッカピカのビームが照射出来るのか、謎で仕方ない、ありがたいけども。
落下、右足から着地。次左足ぃ!
進軍再開、少し距離も稼げてもう間もなく射程には入る。後はこのコヨーテの海から……よっし、ちょっと離れた高台にしよっかな。
因みに、シバックスはあのやり取りをしている間にもう戦闘再開していた。今は俺のサポートが無く一対一の状態なので、一撃避けては浅い攻撃を一撃、要はヒットアンドアウェイに徹しているようだ。
というか、多分メガロイヤルコヨーテ自体はそんなに強くは無い。ちょっと大きくて、ちょっと力の強い、殺意高いコヨーテ位だ。問題はあの子分達なんだろうなぁ。逆にそれを取ってしまえば、こんなもんかな。
「だらぁあっ!」
最後の一歩は力強く踏み込み、装備とバフのおかげで強化されてる跳躍力で、見事高台に着地。子分コヨーテ達は俺を視認してはいるが、届かないようで、下の方でウロウロしたり岩肌をガリガリ掻いたりしている。
一息つきつつ、サポート用の弾を装填。お次はどれにしようかなー……この弾種を選ぶ楽しみも、ボウガンの売りなんだよなぁ。色んなバトルスタイルが出来るもんね。
「お待たせー、と」
やれば出来たぞ、シバックス。邪魔にならないように、メガロイヤルコヨーテの尻尾の先などにちょいちょいと、的確に一発一発撃ち込む。シバックスも親分コヨーテも気づいたようで、一瞬こちらに視線を向けるが、お互い近い場所の敵に再び集中する。
しばらく、俺がパチパチ弾を撃ち、先程よりヘイトが多少分散するせいで余力が出たシバックスが、ちょっと深めの攻撃を繰り返す、攻防が続いていた。そう言えば、インファイターさんの戦闘力が高すぎて、まだ被弾していないが、親分コヨーテさんは実は一撃必殺みたいな攻撃力だったりするんだろうか。
少しずつ、だが確実に弱り行く親分コヨーテ。疎らになってしまった王冠型の立髪や、片方の大牙もへし折れ、ダメージが入っていると確信できる。そろそろ仕留めに入るかと思っていると……。
足元で、ウロウロガリガリしていた気配がいつの間にか消え去っていたのに気づく、気づくのが遅い!ヤバイ気がする!探せ!
幸い大群なのも有り、直ぐ見つけられたものの、狙いがシバックスに変わっている様で、眼前のメガロイヤルコヨーテに相対しているせいか背後からの子分コヨーテの進軍に気づく様子はない。
「ヤバイヤバイヤバイ!」
すぐに移動開始、声はまだ届かないのでとりあえずまたもや爆散弾を控えめにばら撒く。これはこれで、また子分のヘイトが俺に向いたら多分避け切れないから控えめにね。急に爆散弾に変えた事で、シバックスがこちらを伺い事態を把握したようだ。右手にはゴーサイン、仕留めにかかる合図だ。
こうなったらヤケクソ、兎に角もう子分に構う暇もないので、弾種を変える。使うのは【麻痺弾】、上手いことトドメ用に調整していたので2.3発撃ち込むと直ぐに麻痺る。よっし、これで後は火力の問題。
先ずは麻痺を確認したシバックスがすぐさま飛び上がり、近くの岩場のを足場にして更に跳躍。メガロイヤルコヨーテの真上に飛び上がると、落下に身を任せつつ虹色の大剣を最大限大振りに振りかぶる。
「だりゃぁぁあ!!」
シバックスの渾身のぶった斬りが、めちゃくちゃに硬かった王冠の部分を吹き飛ばし、コヨーテを転倒させる。願ったり叶ったりで、此方に顔が向いて、メガロイヤルコヨーテはダウン判定なのか、ぐったりして開口している。
「これが、ラストォォぉ!」
徹甲榴弾を口内を目掛けて、一度に撃てる限界の3発全てお見舞いする。全弾命中ぅ!我ながらやる時はやるものだ。命中して、一拍、炸裂する。何回か派手にダメージエフェクトが飛び散って、そのままずしりと、メガロイヤルコヨーテは動かなくなった。
「……やったな、流石ぁ!!」
「いぇーい!」
戻ってきたシバックスと近寄ってハイタッチを交わす。話しか聞いていない初見モンスターだったし、二人でどうかと思ったがそこは流石シバックス。下手なプレイヤーの何倍助かることか。
俺が後ろから動きを鈍らせる状態異常弾を撃ち込み、そこでモンスターが眠ったり鈍ったりした所を、脳天かち割る。シバックスが相方だからこそ出来る、最近の戦闘スタイルだ。
「しっかし、体力とか攻撃力はそこまでだが、数がキツイな」
「ね、湧きすぎですよね」
あのコヨーテの海は親分が倒されると解散した。正直正攻法というか、上を通過する以外の攻略法がわからない……ボウガン3人、アタッカー1人ならいけるか……いやでも事故率ヤバそうだな。
ばきっと王冠の部分を剥ぎ取り、忌々しそうに見つめるシバックス。ああいうお山の大将みたいな奴が嫌いなんだそうだ。
「まぁ、実際現実もこんなもんだよなー」
「ホントに……なんかあれなんで、これあげますよ」
ポイっと王冠の部分が投げ渡される。まだ、まだゲームだからあれだが、敵将の首みたいなもんだよね、こわ。
「いいのか?欲しかったんじゃないの?」
「素材というか、新しいものみたさですよ、ミーハーなんで。武器は課金しちゃいましたから、シキさん新しいのに使ってください」
「なら有り難く……じゃあモヤっと晴らしにしばらくマラソンする?いつものコース」
いつものコースとは……二人でどれだけモンスターをノンストップで狩れるか、チャレンジである。弱いボスモンスターから順に、巣穴にカチコミ、戦っていくシンプルなもの。
だがしかし、休憩無しなのと、二人共にインファイト気味なプレイスタイルなので、テンションはアガる。結構終わった後は爽快なもんだ。俺もそれ用にカチコミ武器に変えるしね。
「もちろん!さ、さ、行きましょう!」
こうして、俺の休日の相方、シバックスとちょっとぶりの休日を過ごしていく。相方が掲げる虹色はピカピカと輝き、最近の二人の新しい門出を祝うようだった。
もちろん、程々に、夜中の3時くらいには解散してちゃんと明日の用意もして、ガトーショコラも包んで、寝たよ。思ったより長居した。




