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入社だよ!全員集合⑧

「グランドクエストはね、我が社が誇る世界五大AIの中の一機……いえ、一人。【シキ】が管理しているわ。グランドクエストの内容、難易度、キャラのグラフィックやモーション、その他ほぼ全てに対して、あの子一人に任せっきりなのよ」



それは、つまりあれか……ついに自動でゲームが作成される時代が来たってのか……。すげー……もはや人間の存在意義とはなんぞやと思うくらいだな。


いや待て、AIが管理していると言うことは……


「それ、AIの思考プログラムの調整とかでなんとかならないんですかね?」


ちょっと浮かんだ疑問を口にしてみる。人工知能、しかも一昔前とは違い段階的に自我を許されている中でもトップクラスなのだろう。だがしかし、それが機械であるという事もまた事実。ならばどうとでも……



「ならないの。というか出来ない、の方ね。あの子は日本が保有するAI。その業務、という事であのゲームの半数近くを管理しているわ。私達には残念ながら国の許可無しではAIに関与出来ない。更に、偉い方々はそんなクエストの難易度やらなんやらなんて見向きもしてないわ……実際それがなくても自由度だけであの盛況ぶりだしね」


ここで初めて束内さんが疲れた表情を見せる。きっと色々上申してみたんだろうなぁ。



「そう、でも我が社。その中でも僕達【特務課】はその問題をどうにかしないといけない、だけど直接データに手を出すとバレたらアウト……そこで僕達は外側ではなく、内側から手を出していこうと考えたんだ」


植原さんがちょっと誇らしそうに語る。あー……大体わかったぞぉ。これは、まさかの……


「そう。内側、つまりゲーム内でプレイヤーとして、グランドクエストの進行、ないしは何かしらの新しい試みを実行するプレイヤーを、君達にお願いしたい。細かい諸々はあるんだけれど、大体当面の仕事内容はこんな感じだよ。誰か質問ある方はいますか?」


おぉぉぉ……


「つ、つまりは、ゲームが仕事?」


「えぇ、まぁ当面はね」


キタァァァァァォア。

「キタァァァァァォア!」


思わず口から思考と同じ声が出た。てか起立した。


笹部さん達年長組は孫でも見るような生暖かい目でこちらを、下野さんはとても恐ろしいものに向ける視線でこちらを伺っている。


ちょっと居た堪れなくなり俺が顔を真っ赤にして着席すると、肩を優しく叩く手が一つ。


「識守くんって、面白いね」


そんな優しく言わないでくれ、マイアイドル。




ここからはハイライトでお送りする。

あの後過度のストレスに晒されながら参加した、質問タイムの様子だ。



「すみません。ゲームが仕事って事は、自宅からサーバーに直接ダイブしてもいいんですか?」


御薬袋さんだ、大きい。


「いや、それがね。僕達も君達が現在進行形で何をしているか、データを取りたいので基本的には会社の装置からお願いするよ。深夜のイベントなんかもあるから、24時間、いつでも出勤・ダイブ出来る様に手配はしてあるからね。出勤する時間や回数なんかは自由にして貰って構わないけれど、月一回ある査定で余りにも勤務態度が悪かったりしたら……まぁ、面談とか、あるから気をつけてね」


植原さん、大きい……




「全員、同じ事しねぇといけねぇのか?」


砂塚、相変わらず不遜というか、ブレーキついてないんじゃないか。唯我独尊過ぎるだろ。


「一応ペアを考えているけれど、別に個人個人でも構わないわよ。但し、自分がこの会社の社員で、且つ仕事でダイブしているということは秘密にしてちょうだいね。破ったら機密保持違反として即効解雇、内容によっては訴訟もあり得えるから」


「お、おぅ……秘密か。ソショウ……?」


とりあえず半分しか理解出来てないのは皆わかった。



「では、僕も。実はプレイした事があるのですが、その際のセーブデータは使用しても?」


秋月さん、俺と同じく既にプレイ済みな感じか。


「残念ながら使用出来ません。後から説明するつもりでしたが、せめてもの手心、という事で皆さんの使用するデータに一つずつ、特別なギフトを添付しています。そちらの使用をお願いしたいので、申し訳ないんですけど、初期からのスタートとなります」


ほぅ、ギフト……あ、それより。


「あ、追加でいいですか?」


「どうぞ、識守くん?」


心なしか半笑いで応えた束内さん、ぐぬぅ。


「確かダイブ行うのは生体認証だった筈だけど、前のデータ消えたりしないですか?二重ログイン、みたいな」


合算2年分くらいの中々、最前線には程遠かったものの、まぁまぁ中堅どころ辺りまでは行ったんだ。最近めっきりログインして無かったとはいえ、一抹の不安というか、喪失感はある。


「それは大丈夫よ。その点も上に兼ね合って特例措置を頂いてきたわ。せめてもの譲歩…って感じだけどね」


「生体認証は取らず、声紋のみの認証になります。余りに声が変わり過ぎるとダイブ出来ない事も発生するかもしれないから、体調管理もしっかり行って下さいね」


これには俺も秋月さんもホッとする、というかホッとするって事は意外にヘビーユーザーなんだろう。



纏めるとこんな感じだった気がする。後は給料や待遇だったり施設だったりを秋月さん辺りが少し質問していたが、その辺は余り気にしていなかったので省略。

こういう所がブラック企業に捕まる所以なのかもしれないが、もうしばらくは細々暮らせるほどの貯金は残っているし、気ままに行こう、気ままに。


その後、束内さんより明日の朝9時より出勤し、最初のダイブをする事が決定された。最初は色々あるから皆同じタイミングでダイブするらしい。


なんだかんだ、やらかした気もしますが無事に就職も決まり、晴れて明日からは新生活!なんだか肩の荷が早くも降りたような、清々しい気分だ。


結局、この後そのまま解散となり他の者に続き帰路についた。帰り道に、いつもは寄らないパン屋で少しいいデニッシュの食パンを買って、近所のスーパーで高めのインスタントコーヒーも購入した。



我ながら浮かれていたようで、帰宅した際に隣の部屋の大学生が何やら騒いでいたが、いつもなら苦情までも出さず、心の中でグチグチ考えたものだが、今夜は全く気にもならなかった。余裕って大事。


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