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入社だよ!全員集合⑦

【WAO】内で果てなく広がる世界。その世界の中心で太古から悠久の時を、ひたすらに、ただ真っ直ぐに聳え立つ【世界樹】。世界はこの世界樹からの恩恵を得て、巡り巡っている。それは長い間各地で繁栄をもたらし、それぞれ独立した国家を築き上げるに至った。



世界には数多くの種族が住まう地はあれど、大まかには5箇所に分類される。


炎と鍛治の国【ヘパイシュタ】

この世界の東部に広がる火山地帯より僅かにそれた、周囲に鉱山が連立する山中に存在する鉄の国。国中の至る所に鍛治工房、炉が有り、その所有数、質等は国内での権力や地位の指針にもなる。


また、鍛治の国という事もあり、鍛治や素材の採取を得意とするドワーフやオーガ、人間種中でも剣闘士など血気盛んな者たちが集まり、国内でも争いは絶えない。彼等の楽しみの一つでもある【コロシアム】では日夜血で血を洗う闘いが繰り広げられる。


水と織物の都【アテーナイヤー】

この世界の西部の大海の中心に存在する、国と呼んでも遜色ないほどに広大且つ、優美な水の都。地上部と海中部の二層で構成されており、海中部では特殊なアイテムを使うか、人魚のみ活動が出来る。比較的温厚な人柄なせいか、長年主導者は変わっていない。

更に織物では最高品質の糸、機織り機などが揃えられ、独自の縫い方等も有り右に出る国はないだろう。


風と豊穣の大森林【スガナダ大森林】

この世界南部に広がる大森林は、南部の大陸の8〜9割近くを埋め尽くす広大なもので、余りにも広大であるため先人達が大きなランドマークや、何がしかの特殊な地形毎に区画分けされている。その広さ故、端と端では生態系も大きく様変わりする。


特に特徴的なのは作物や家畜の生産である。土壌には特殊な魔力が行き渡っており、森のどの部分であっても一定以上のランクの物が生産される。


光と音楽の雲上国【ミューゼス】

この世界の北部、深奥にある巨大な湖に垂れ下がる、幾本もの丈夫な糸を辿った先に存在する天使が治める雲上の国。足元は底の抜けない雲で出来ており、国の中央に位置する【サンライズタワー】により常に日が昇っている。


また、天使には音楽に秀でた者が多く、劇場や野外会場などのイベント施設も豊富である。中でも特殊な製法、素材から生成される【楽武】、音楽の力を特殊な効果に変える武器は名産品である。尚、入国には湖に垂れ下がる糸を辿るか、特殊なアイテムを使えば良い。


闇と錬金の地下帝国【アタノール】

この世界の中心に聳え立つ世界樹のその真下、広範囲にわたり地下帝国が築かれている。地下であるため陽の光が差すことは無いが、それに対抗するかのように眠らない街である。中央には巨大な賭博場があり、その経営陣が帝国の有権者に該当する。


更に、この帝国が他の勢力に付け入る隙を与えない理由として古くから行われてきた【錬金術】の研究がある。日々新たなアイテムや魔法、武具などが生み出される事で力を蓄えてきた。カジノの売り上げも大体がこの研究費用に充てられており、都市の衛生管理などには手が回っていないようだ。



神聖なる世界樹の加護の元、繁栄したこの世界で君は一体何を為すのか?

【探求者】よ、答えを求めて一陣の風を吹かせるのだ……




_____________________


「と、まぁこれがこのゲームの簡単な説明と売り文句ね。貴方達には絶賛発売中のこの【WAO】の開発・向上の為に尽力してもらうわ」



しばらくゲームのデモ映像が流れた後に束内さんが説明を始める。正直、ゲームの題材としちゃあざっくりしすぎる気がするんだが、明確な目標や敵が居ないのがこのゲームのある意味での魅力で、その自由度の高さで幅広い層の支持を得ている。


俺もシバックスなんかに誘われた機会もあり、色々情報を集めてみたりもしたが……まぁー、すごい。正直開発者は物の怪の類なのでは?という感想に現実味を帯びる程、悪魔的なコンテンツの量で、それこそ勇者から町のパン屋まで至る、あらゆるロールにも就くことが可能。


ただ、元々宛のないゲームであるから、目的を見失うプレイヤーも多く、かく言う俺も説明や掲示板なんかを見て挫折して、王道の冒険者を選んだ口だ……ある意味、自由過ぎるのも不自由に感じるものなの。


この会社が【WAO】の開発をしているのは知っていたが、まさかその巨大コンテンツの関係者になるとは……帰ったらシバックスに自慢しちゃおっかな。


「このゲームは絶賛好評発売中。定価8980円で、老若男女問わず人気のある作品なんだ。業績も我が社内のトップ、社会現象にもなっているみたいだね……【第2の人生を貴方に…】なんてCMも最近流行ったねぇ」


植原さんが話ながら画面を変えていく。CMの一部分だったり、ゲームのパッケージや情報だったり。しかしながら、こんなに売れ行き好調、正に一家に一台とか夢じゃないくらいの作品に今更こんなにどこの馬の骨かも判らない新入社員を雇う意味があるんだろうか?


「そう、順調……なのは確かなの、今はね。ただ、貴方達のメインの仕事とも関係するのだけれど、大きな問題があるのよ」


束内さんのため息と共に画面は世界樹の画像に切り替わる。このゲームの中の世界の中心、ある意味では世界を作っている世界樹。画面から見て取れるが、阿保みたいにデカイ。隣に小さな街があり、そこに教会っぽい鐘塔があるが、その10倍以上には見える。



「この世界樹、このゲームのグランドクエストの受注、進行のエリアでもあるのだけれど……一向に進まないのよ」


「進まない……?」


「はい、受注は全員が世界樹に行けば可能なんだけどね、進行状況は全員等しく第一段階。掲示板等でも有力な情報が乏しく、多すぎるサブクエスト等で脱線するプレイヤーが多くグランドクエストクリアを目指すプレイヤーの数が少ない状態です」


植原さんもやや苦笑混じりに話すが、それは単純にあれじゃないか?……難易度が高すぎるとか……サブクエの数をアップデートで何とかするとか、そう言う話では?なら畑違いというか、この人選は違う気がする。


他の面々で、少しゲームを齧ってそうなやつらも似たような表情で束内さんを見つめ、促している。


「まぁ、そうよね。皆、私達開発が難易度設定間違えてる、とか考えてるでしょ?まぁ【私達】と言えばそうなのかもしれないけど、少なくともグランドクエストに関しては【この会社】は関与出来ないの。」



おっと……雲行きが……


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