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裏ライフワールドinゲーム  作者: 9アルさん
4/4

鬼の村

「つまり、このか姿のまま村に入れと」


「そうです」


 へキルはすらっとした男の姿へと変化している。顔が変わっているわけではないが、以前よりカッコよく見える。

 肌は若干白くなりイメージと違い細身である。


「鬼と言っても角があるわけじゃないんだな」


「大きな力を使う時だけ角は出てきます。普段から出ていると村が壊れるので。いざという時のために出し方を確認しておいてください」


 ヘキルは早速特殊スキル“転生(トランス)”を使って“鬼人族”へとなっている。

 理由は次の目的地だ。


 この辺りは廃墟が多く村が少ない。しかし、1番近い村が、その鬼人族の村なのだ。

 しかも、鬼人族にとっての“始まりの場所”らしい。


 種族によって“始まりの場所”は違うようで、鬼人族は特に他の種族と離れている。

 7つある種族の中で鬼人族は別格の強さを持っているらしい。そのため、わざとスタート位置をズラして強さを揃えている必要があるんだとか。


「こんな作戦で大丈夫なのか...」


「何とかなりますよ」


 鬼人がたくさんいる村。なら鬼人になれば問題なく入れるのではないかというルナの作戦なんなのだが。


「鬼人族は他の種族を襲うんだろ。ルナは大丈夫なのかよ」


「私は憑神なので宿主に憑依できます」


「便利だな」


 種族ボーナスで更にステータスが上がる。まだLv.11なのにかなり安心感がある。

 鬼の中に単身で乗り込んでも平気な気がする。


 早速ルナを憑依させて村へと向かった。


「場所の名前が“地獄”っていうのは悪趣味だよな」


 “始まりの場所”には場所により名前が付いている。マップの名前表示のところに追加のような感じで書いてあった。

 “人間”のはそのまま始まりの場所“人間”だが、“鬼人”は始まりの場所“地獄”と名付けられている。


『種族の故郷となる場所の名前が付いているだけです。人間は“人間界”鬼人は“地獄界”。他の村や町はプレイヤーがつけたのが多いのですが、始まりの村はプレイヤーが来る前に付ける必要があったので』


 少し疑問を持ったが後々わかるだろうと思い、後にした。

 ついでにルナの声は今の状態だとヘキルにしか聞こえていない。憑依すると宿主と声を出さずに意思疎通できるようになるらしい。

 まだヘキルは慣れていないので声に出しているが。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 しばらく歩いていると村らしきものが見えてきた。ここが“地獄”だろう。ヒガキの村からあまり離れておらず、見た目も似た感じの和風である。

 村の入り口に寄ってみると何人かの人が集まっていた。

 手には武器を持っている。冒険者ではあろうが身なりが戦闘用には見えない着物だ。


 村に入ろうとするヘキルを見てひとりの男が叫んだ。


「まてお前、動くなっ」


 男の声と同時に周りの人もこちらを向く。

 人数は5人。男性4人に女性が1人だ。

 鬼とはいってもガタイがいいのは一人だけで、他は普通のナリである。角が出ているところを見ると威嚇しているのが分かる。


『マスター、この状況はまずいですよ』


『言われなくても分かってるよ』


 村に入る前に作戦失敗か。1人の男の目が青く光るとその男は武器を下した。

 それを見た他の人も武器を下す。

 スキルで情報を確認したんだろう。“解析(スキャン)”では種族が確認できる。バグが起こらなければ。


「紛らわしいんだよっ。馬鹿が」


 スキルを使った真ん中にいる男が叫び始めた。いきなり罵倒してくる理由は分からないが、かなり興奮している。

 横にいる男は何やらひそひそと話している。歓迎はしてくれなさそうな雰囲気だ。


「用がないならさっさと行ってくれ」


 一番左にいる男は吐き捨てるように言った。

 ヘキルは言われたとおりに入り口から村の中の方へ進んでいった。


 村の中に入っても入り口の調子は変わらなかった。

 村人たちは何やら嫌なものを見るような目でこちらを見ている。


『ルナ、なんなんだこれ』


『種族としては問題ないのでしょうが服装に問題があるのかと』


 たしかにヘキルは今真っ黒な装備をしている。問題はそこではなくて鬼人たちは和風の格好をしているのだ。

 目立つので居心地が悪い。


『鬼人は着物しか着ないのか』


『いや、そういうわけではありません。“始まりの場所”は死んだ格好のままで召喚されるので、この格好は生前によるものなのです』


 そういえば、ヘキルも最初ジャージの格好だった。始まりの場所“人間”のところだと多分普段着ような感じになっているのだろう。


 歩いて行くと目の前に『万物屋』店が見えた。見た感じアイテム売買をしているようだ。とりあえず所持金を増やしておこうと思う。

 店に入りカウンターにいる店主の前に行く。


「いらっしゃい」


「買い取り頼む」


 ヘキルはここに来る途中に倒したモンスターたちのドロップアイテムを具現化した。

 ウィンドウにはアイテムボックスがあったが、ウィンドウを利用するとアイテムをカード化することができた。

 アイテムボックスには上限があったのでヘキルはカード化を利用していた。


「最近物資が少ないから助かるよ。へぇ、フォレストドラゴンなんて久しぶりにみたなぁ」


 基礎スキル“鑑定”でアイテム表示されたものを片っ端から拾っただけだったが高評価だ。最初に倒したドラゴンはそこそこのレアモンスターだったのかもしれない。


 店主の鑑定が済み、値段が提示される。まだ金銭感覚が分からなかったが、承諾した。

 金ならただの肉や骨よりかは役に立つだろう。


「ところでご主人?何やら村を歩いていると視線を感じるんだが、何か知らないか?」


 店主はドキっというような顔をしてヘキルのほうへ向いた。

 商売顔から真剣な顔になってヘキルを見つめる。


「お前さん何も知らないのかい?」


 小さな声でそう言った。ヘキルは無言でうなづく。


「実は“鬼狩り”と呼ばれる奴が最近このあたりにいてね。新人が村の外に出ていけないのさ。奴は黒一色の姿をしているっていう噂で、武器は長剣なんだと」


「ほう、そんな輩が」


『今のマスターの格好のようですね』


 そういうことか。噂の殺人鬼のような格好をしているからいろいろと冷たい視線が当たっていたということか。

 しかし、理由が知れたと言ってもすぐに対策を打つことができない。なぜならこの服の他にはジャージしかないのだ。


「今日、討伐隊が出されるんだが、お前さん噂を知らないって事は外から来たんだろ?」


「ええ。まぁ」


「討伐に参加しないか?“鬼狩り”のせいで物資が回らず商売あがったりなんだよ。もちろん報酬もでる。外の連中からすれば雀の涙かもしれないが」


 討伐イベント発生。RPGぽくなってきた。

 このイベントを断る理由などどこにもない。


「参加しよう」


「本当か!いやぁ、ここは鬼の故郷とか謳っているが本当の故郷じゃないからお客さんのように里帰りする人も少ないんだよ。冒険者と言ってもまだこの世界に召喚されて間もないやつばかりだからさ」


 始まりの場所。それぞれの種族のホームタウンというわけでもなくただそこに召喚されるだけの村らしい。

 レベルが上がるにつれて始まりの場所は特に魅力のない場所になっていくのだろう。

 現実のゲームをプレイしていても、高レベルになった後に最初の方のクエストをやらないのと同じように。


「じゃあ、討伐隊の集合は村の入り口だ。出発は日の入り後らしいからまだあと一刻はある。メンバーと情報交換するといいだろう」


「村の入り口ってことはやはり...」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なんでさっきの“鬼狩りモドキ”がいるんだよ」


 さっき罵声を浴びせてきた男がそう言う。


「こういうことになるのか...」


『ネット以外だとマスターはしゃべるの苦手ですもんね。レノンさんと話すときも顔が引きつってましたよ』


 自分がコミュニケーション障害だと言うことは理解している。しかし、理解していても克服などなかなかできないものだ。


「討伐参加でしょ?メンバー増えるのだったらいいことじゃん」


 さっきの5人の中で唯一の女性だった人がヘキルのことを助けた。

 メンバーはさっきの5人に加えてもう女性が1人、男性も1人増えて、ヘキルを入れないで7人になっていた。


「私は鈴音(りんね)。リンでいいわ」


 リンと名乗ったその女性は次々にメンバーの紹介をしていく。

 この中では最後に参加したのはヘキルなのでヘキル以外のメンバーとは交流済みのようだった。


 紹介されたメンバーの横にはバーで名前が表示された。

 名前を忘れることがない良い機能だ。


「おれはヘキルだ」


「そう、ヘキルよろしくね」


 リンの笑顔を見てつい自分も笑顔になる。


「自己紹介が終わったらな作戦を説明するぞ。これ以上の参加はもう望めないだろう」


 バーには(ライ)となっている男がそう言った。

 初対面からからヘキルに突っかかってくる男だ。


 ライが話し始める作戦にヘキルは耳を傾けた。

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