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裏ライフワールドinゲーム  作者: 9アルさん
3/4

バグな強さ

「マスター!!!」


 男二人がスキルのことについて話している最中に一つの高音な声が響いた。

 どうやらルナが来たようだ。

 レノンはルナの姿が見えるとじっとルナを見つめ始めた。瞳が青く光り始める。


「あ、そういうことか...」


 レノンは何か納得したような素振りを見せる。

 たった今教えてもらった相手の情報を探るスキルを使ったのだろう。

 レノンは明らかに普通でないルナに対してずっと疑問を持っていた。しかし、スキルによって何か納得したようだ。


「どうやら普通に無事なようですね」


「ああ、お前の大切なご主人様は俺が守ってやったぜ。暴漢一人も寄せ付けなかったぜ」


 このかわいいご主人様によっとレノンが言った。

 余談だがヘキルはたまに女性と間違えられる中性的な見た目をしている。そのことを知っていての一言だった。

 ヘキルはそれに気づかずそのままスルーした。


「やはりあなたは見込み通りの方でしたね」


「いや、最上位種の神様に賞賛いただき光栄です」


 レノンとルナが何やら分かり合っているようだ。蚊帳の外になっているヘキルにレノンが肩をバンバンたたきながら話しかける。


「アオよ。お前“神憑き”だったら最初からそう言えよな」


「神憑き?」


「細かいことは気にすんな。すぐわかる。じゃあ、俺はもう行くわ。お前なら何とかなる」


 レノンはルナに向かって一礼した。ルナもレノンに向かって返す。

 また会おうなっと言ってレノンはヒガキの村の方へ足を向けた。


「俺はな、いつか神になる男レノンだ。覚えておいてくれよヘキル(・・・)


 そういうとレノンは急に駆け出してすぐに見えなくなった。現実ではありえない速度で。

 足の付いた地面がえぐれるほどに。


「本名バレていたのか」


「しかたないですよ。ネームを変えられるようになるのはウィンドウを購入した後のことになりますから」


 スキルで覗かれていたようだ。初めから名前が分かってるんだったら名乗らせなければよかったのに。


 ルナにネームのかえ方を教えてもらう。苗字名前が登録されているのから名前だけに変更した。

 さっきの1件で下手な名前を付けるより本名のままの方がいいと思い、登録する。


【登録名】碧


 そのかわり振り仮名を消した。これで一応アオとも名乗ることが出来る。


「とにかくマスターこれからどうしたいですか?」


「まず、このゲームのクリア条件を教えてくれ」


 ゲームを始めようにも何をすればいいかわからない。目的が何によって行動が決まってくるだろう。


「このゲームにクリアはありませんよ」


 一瞬時が止まった気がした。何か聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。

 クリアがないゲーム?


「おれって元の世界に帰れるんだよな」


「はい、帰れます」


「でもクリアのないゲームって」


 こういうのはクリアすることで元の世界に戻れるのが王道だ。しかし、クリアがないとすると元に戻れないとかいう感じじゃないのか?


「元々この世界は天国と地獄の他に作られた世界です。つまり本来の目的は亡者の収容です。ゲームのシステム上現実世界に生まれ変わるクリア方法がありますが」


 元から死んでいないヘキルにとっては意味のないエンディング。

 自己欲求のために挑んでもいいのかもしれないが、クリアしたら何になるのだろうか。


「そもそも生まれ変わりを望む人も少ないんです」


「そういうもんなのか」


 このことは死んだ人じゃないと分からないのだろう。

 この世界にしばらくいれば分かるのかもしれないが。


 そう考えてると...


 バキバキバキっ!!!


 後方から木が折れるような音がした。

 そういえばレノンはモンスターを近づけないスキルを使用していると言っていた。

 レノンがいなくなったことでモンスターが近づいてくるようになったのだろう。しかし、


「まてまてまて、初陣の相手はドラゴンなのかよ」


 黒い鱗、大きな牙、立派なかぎづめ。どこからどう見てもファンタジーの住人ドラゴンである。

 レノンに教えてもらった相手の情報を探るスキル“解析(スキャン)”を発動させた。


【解析】?????????? Lv.??


「あのルナさーん?おれのスキルレベルで解析できないほどレベル高いそうなんですが。助けてください」


「私、丸腰なのでマスターお願いします」


「お前、魔法とか使えそうな感じしているよな!!!」


 ルナは後ろに下がり安全なところにいる。今ドラゴンの前にいるのはヘキルだけだった。

 ドラゴンはヘキルの姿を見て咆哮を飛ばした。


 体調は4メートルほど。ラスボスのような大きさでもないが、このくらいの大きさでも現物を見れば腰が引ける。

 普通2メートルほどのライオンとかでも人間は足がすくむのだ。


「マスターだけで十分ですよ。一気にいっちゃってください。“神憑き”なんなんですから心配ないです」


「だからその神憑きというのがいまいt...」


 そう言っているとドラゴンが息を吸い込んでいるのが見えた。


 ブレス攻撃!!!


 一瞬ドラゴンの動きが止まったと思うと口から炎を吐き出した。普通ドラゴンとかは岩場にいるものだがここは草原。

 吐き出した炎は生えている草を焦がしながら進む。

 秋口なら大炎上だろう。


 ブレス前のモーションを見切っていたヘキルは右によける。


「あれ、軽い...」


 予想していたよりかなり軽く攻撃をよけた。あまりにも軽かったので体が自分のじゃないような感覚だった。

 VRをやってこなかったヘキルにはこれが普通なのかはわからなかったが、それにしても体が軽い。


 またドラゴンはブレスをしてくる。

 何発か飛んできた炎を軽々とよける。

 現実では出来ないアクロバティックな避け方楽々こなす。


 ブレスはダメだと理解したのかドラゴンはヘキルの方へ咆哮を上げながら向かってきた。

 ヘキルはレノンの剣を手に構えドラゴンをにらむ。


「ギRャrrr」


「はっ!!」


 ヘキルに向かってきた牙をよけ、ドラゴンの首に一太刀喰らわせる。予想に反してドラゴンはあっさりと斬れ、頭部と胴体に分かれた。

 死んだドラゴンの上には何やら炎のようなものが浮いている。これがレノンの言ってた死魂ってやつなんだろう。


 連続してレベルアップの音が響く。レベル差により経験値が大量に手に入ったのだろう。

 ウィンドウを見るとレベルアップのことでログがいっぱいだった。


 血の滴っている剣を軽く振ってみる。

 目の前に鎌風のようなものができ、地面へ飛んだ。太刀筋にあった切れ込みが地面に出来上がった。


「おれ、つえー」


「マスターはプレイヤーの強さについて教えてもらいましたか?」


 ルナが言っているのはレノンが最初に教えてくれたことだと思う。


 この世界では生前にした行いで強さが決まるらしい。

 ランクは全部で9段階。真ん中が何も補正のかからないステータスでそれぞれ上下でプラス補正とマイナス補正がかかるようになっている。

 言うならば悪い人は弱くなり、良い人は強くなる。


「おお、ちゃんと聞いてますね。それでですね、このランク分けは死後裁判で行うのですがマスターはやっていませんよね」


「まず大王に会ってさえないな」


「死後裁判を行っていないマスターはそのランク付けをスルーして何と最高ランクになってしまったわけですよ!!」


 ルナは目をキラキラさせながら話す。

 個体値最高と...なるほど。


「さらに私を憑神とした“神憑き”にもなったので更にステータスアップ!!」


 なんかルナはガッツポーズを決めた。なんテレビショッピングのような雰囲気である。

 何かのボーナス獲得...なるほど。


「マスター、スキルの一覧出してください」


 ルナにされた指示の通りにウィンドウからスキル一覧を出す。

 基礎スキルという最初から使えるスキルがいくつか並んでいる。ついでにさっき使った“解析”もここに表示された。

 ただ、基礎スキルの他に少し違うスキルが一覧の中に紛れている。


「“転生(トランス)”?」


「そうです。そのスキルはレベルなどのステータスを維持したまま他の種族などに生まれ変われる普通は手に入らない特殊(ユニーク)スキルです!!」


 この世界には“人間”以外にも種族がいるらしい。レノンに最初に会った時に言っていたあれは種族の確認だったんだろう。

 とにかくこのスキルは好きな種族になることが出来て、種族ボーナスを得ることが可能になるものであるとルナは言った。


「もう最強の最強。言うことなしですね」


 ルナは言い切ったとばかりに自慢げな顔をしている。


 へえ、いうことなし...


「なあルナ」


「はいマスター?」


 なんでしょうという顔で見つめてくる。まあ、言うことなしと確信してるのだったら遠慮しないが。


「こんなにも強くなると逆に面白くなくなるよな。ゲームは勝てなさそうなものに勝てるというのが面白いのであって、こんなチートみたいに強さが並べられると苦労というのがなくなり、ただの作業になる。つよすぎてもダメだってルナもゲーマーだからわかるよな」


「おっしゃる通りです」


 ルナの目にはうっすら涙が見え始めていた。ちょっとした感想をぶちまけるとこんな反応がされるということは理解していた。

 しかし、女の子を泣かすのは気分のいいものではない。


「でも、マスターがらラノベの主人公みたいになるのならやっぱり最強な方がいいと思ってしまって」


 最強と最弱。最弱は360°回転して最強になったりするが、だいたいロールプレイ系といったらこのようなものだろう。

 数々の過去作はその事を踏んでいる。


「まあ、どっちかといったらこっちの方がいいが」


 まあ、いいか。この世界がどれほど難易度なのかはまだわからない。

 強ければ強いに越したことはないだろう。


「マスター、とりあえず村行きましょう」


 まあ、チートゲームプレイヤーとして生活は初めてで新鮮なのかもな。

 ルナにある村に行くことをお勧めしてもらい。そこへ向かうこととした。

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