転生物に物申す!
よくある転生物に疑問を抱いて投稿してみました。
買い物をしようと思って、家の外に出ました。
買い物を終えて、ろくに確認せずに曲がり角を曲がりました。
居眠り運転中のトラックに追突され、赤く染まる視界の中で「あ、これは死んだな」と思いました。
――――そしたら。
いつまで経っても意識があるのに不思議に思って目を開いたら、あら不思議。
なんだか真っ白な雲みたいな物に囲まれた空間に、一人間抜けに突っ立っていました。
まるでどこかのネット小説で読んだみたいなシーンだな、と感心していたら目の前にふわふわと光り輝く光球が。
『申し訳ありません。本来ならば、貴方は死ぬ筈の人ではなかったのです』
ネット小説に出てくるような威厳のある老人や美幼女ではなかったけれど、口もない光球はそう宣った。
そのままつらつらと好き勝手言う光球の話の大部分を聞き流しながら判ったのは幾つかの事。
一つ。
私は本来死ぬべきでないのに、この光球の手違いによって殺されてしまった事。
二つ。
お詫びとして、願い事を三つ叶えて転生させてくれる事。
三つ。
転生先は残念ながらランダムで、どこに生まれるのかどうかは判らない事。
四つ。
生き返る事だけは、残念ながら出来ない事。
「成る程、話は判った。それで、願いは三つまで叶えてくれるんだね?」
『はい。余程無茶苦茶な物でない限りは可能です。自分の好きな漫画のキャラクターが持っている能力など、人の想像力が考える様な物は可能ですけど』
その言葉に、今まで読み漁って来たネット小説の数々が頭をよぎる。
大体こういう神的存在が出て来た場合、主人公である転生者達は色々な漫画のキャラの能力や姿やらを持って、漫画か異世界に転生する。
そしてそこでチートやバグキャラになって、第二の人生を謳歌する――まさしくテンプレ展開である。
「なら、いいかい?」
『はい。いつでもどうぞ』
少しは罪悪感を感じているのだろう。神妙な声になった光球が先を促してくる。
「なら。第一の願いだけど、私の家族が経営している会社を私の血縁が継いでいる間は、会社の業績が上がる事はあっても下がらず、絶対に潰れない様にしてほしい」
『は? わ、判りました』
「第二の願いだけど、私と血がつながっている人物は人生にどんな苦難があったとしても、最後には満足に生きたと笑って死ねる様にして欲しい」
『……』
「……出来る?」
『可能ですけど、それでいいのですか? 今までここに来た人々は能力やら美しい容姿やらを望んで生まれ変わっていきましたけど』
どうにも釈然としないらしい光球が、ふよふよと浮きながらそう答える。
「アホくさ。唐突すぎる転生とかなら兎も角、なんでも願いを叶えてくれる相手に出会ったなら、それまで育ててくれた恩を返す方が先じゃない。葬式代だって安くないし」
人が十数年生きるのだけでかかる費用はかなりのものだ。
ましてや自分はまともに社会で働き出す前に死んでしまったせいで、生まれて十数年間に多大な労苦を親にかけ続けておきながら死んだのだ。
その恩を返さないなんて、そんな無責任な事をしたくない。
手段としては反則的だが、神らしい存在の助力を願えるのであれば、これほど助かる事はない。
なにせ、今は世界的な不景気なのだ。
『判りました。なんでも、と言ったのはこちらですからね。それで? 第三の願いは何にするのです?』
溜め息を吐きながら、光球は尋ねてきた。
「――――そんなの簡単。転生なんかしないでいいから、普通に死んだ人が死ぬとき見たいに、このまま眠る様に死なせて」
第二の人生なんか、私は望まない。
私が私であるままに、愛する人々の記憶が残っているうちに、普通に私は死ぬべきだ。
自称神による転生なんて、私には必要ないのだ。