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〜吸い殻と雪景色〜

携帯電話


たまにきちんと帰った日には、子供達が眠りについた後、私はパパと話をした。

私はきちんと向き合って話したいのに、パパはしばらくするとすぐ眠ってしまう。

幾度もそんな事があった後、初めてパパの携帯を勝手に見た事があった。

その時、ちょうど電話が鳴った。

着信は『松本』

電話には出ず、電話を乱暴に切り、私は受信メールを見た。

そこには『松本』からのメールが沢山あった。

メールを見て、分かったのは単語のみ。

どんな内容のメールだったか、その時、理解出来なかった。

と、言うより頭に入らない状態だった。

今も全く思い出せない。

『たーくん』『飛行機』『北海道』『無印パン』『銀行』

電話帳で携帯番号を調べるでもなく、メールアドレス控えるでもなく、何が何だか分からないまま、携帯を握りしめ、眠っているパパに詰め寄った。

パパは又、その場しのぎの適当な嘘を言った。

その後の事は全く覚えていない…。

記憶が飛んでいます。

色々な事がありすぎて覚えていません。

ただ一つ覚えているのは、その後、家の車に乗った時、私のじゃない、パパのじゃない、口紅の付いたメンソールの煙草の吸い殻が灰皿にあった…覚えているのは、それだけ…。パパが私に気付かれない様に、灰皿の奥の方によけていた…覚えているのは、それだけ…。


講習会


しばらくしてパパは、転職の為、講習会に参加すると、仙台へ行った。

会社を休んで5泊6日です。

その間にパパの誕生日がありました。


何も語れません。


後からその時の事実を知って、虚しかっただけ…


看護師の彼女が、助産師にステップアップする為の、学校の入試試験だった。

それにパパも付いて行った。

どこまで、私をバカにするのでしょう。

又、一つ心がなくなってしまいました。


〜誕生日のメールのやりとり〜

お誕生日おめでとう。

ありがとう。

こちらは、電車から見える雪景色、とても綺麗です。

あの時、私は壊れた。

1F台所から包丁と果物ナイフを持って2Fへ駆け上がった。

両手に包丁を持ち、パパに突き付けたのだ。

映画やドラマの映像を見ている様な光景。

そんな事が私の身に、私の人生に起こるだなんて…。


結婚11年、私33歳、パパ33歳、長女11歳、長男7歳、次女5歳、どこにでもいるごく普通の家族。

特別『幸せ』と思う事はなかった。

でも、今みたいに『幸せになりたい』と強く強く願う事がなかった分、幸せだったに違いない。

彼女の存在が見え始めるまでは…。


再会


2001.10

その年の6月に色々な企業のある活動で出会ったパパと彼女は、10月に偶然の再会をした。(…らしい)

パパは10月の後半から土日の度に家を留守にした。

毎回、嘘の予定を言って出掛けた。

11月、残業や徹夜(明け方帰って来る)、休日出勤が多くなり、飲み会も多くなった。(嘘のね)

末日になるととうとう帰らない事もあった。

仕事だ、残業だ、徹夜だ、休出だ、飲み会だ、会社の付き合いだって、パパは沢山の嘘を並べた。

私は残業や休出した事を証明する書類を会社から持って帰る様に言った。

『俺の事信じてないんだな』『結局は俺の事、愛してないんだな』何か言って詰め寄られると決まって言う、パパの捨てゼリフだった。

その頃、そんな捨てゼリフを吐いて、時には殴る蹴るの暴力をふるって、深夜でも家を飛び出して行く事が度々あった。

でも、今日はいつもと違った。

今日は私が壊れ始めた日…。

包丁を突き付けた日…。

あの日から私は壊れ始めたんだ。


突き付けた包丁は、同居している私の母親に取り上げられた。

子供達は別の部屋で震えていた。

パパは家を飛び出して行った。

『パパには別に居場所があるんだ…』

辛くて悲しくて情けなくて、泣いて震えている私を、もう一人の私が別の角度から心配そうに、それでいて冷静に見ていた。


〜ある日のパパへのメールより〜

ピアスが片方なくなってしまいました。パパに殴られる度、ピアスが片方なくなってしまいます。

心がなくなってしまいました。

パパに殴られる度、心が一つずつなくなってしまいます。

真夜中の電話


たまにきちんと帰った日には、子供達が眠りについた後、私はパパと話をした。

私はきちんと向き合って話したいのに、パパはすぐ眠ってしまう。

幾度もそんな事があった後、初めてパパの携帯を勝手に見た事があった。

その時、ちょうど電話が鳴った。

着信は『松本』

電話には出ず、電話を切り、私は受信メールを見た。

そこには『松本』からのメールが沢山あった。

メールを見て、覚えているのは単語のみ。

『たーくん』『飛行機』『無印パン』『銀行』

何が何だか分からないまま、携帯を握りしめ、眠っているパパに詰め寄った。

パパは又、その場しのぎの適当な嘘を言った。


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