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こんな家族の姿があってもいいんじゃない?  作者: アーエル
第三章:慈善事業『白い花の箱』

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37-1 正式な議題


 偽りの通達が退けられてから七日後、王都慈善連盟は臨時評議会を開くことになった。


 議題は、白い花の箱の運用について。表向きは、支援事業が広がったことによる確認と改善のための会議である。だが、招集状を受け取ったセシリアは、そこにただの善意だけがあるとは思わなかった。


「正式な席で問うつもりなのですね」


 セシリアは招集状を机に置いた。発行番号はあり、控えもあり、封蝋も正規のものだった。今度の紙は本物だ。だからこそ、厄介だった。


 偽物なら退ければよい。だが、本物の会議で、本物の議題として問われるなら、そこで答えを誤ることはできない。白い花の箱が危険な施策だと印象づけられれば、現場の記録も、休むことを許された母親たちも、すべてが疑いの目で見られる。


 エリアスは招集状の署名を確認し、静かに息を吐いた。


「連盟そのものは敵ではない。だが、議題を持ち込んだ者の意図は別だ。ヴァレリー伯爵が裏で動いている可能性は高い」


「リディア様へ、すぐに写しを送ります。今回は、紙の真偽ではなく、席の使われ方を見なければなりません」


 別邸に招集状の写しが届くと、リディアはまず発行番号と控えを確認し、それから内容を読んだ。偽物ではない。だからといって安全でもない。


 リディアは新しい紙を四枚用意した。一枚目には目的。二枚目には批判。三枚目には譲れる点。四枚目には譲れない点。正式な場で問われるなら、まず自分たちの立つ場所を見失ってはいけない。


『白い花の箱の目的は、施しを増やすことではありません。産後の者、赤子、現場で働く者が、小さな異変や不足を隠さず言えるようにすることです。箱は物資の入れ物である前に、声を届ける目印です』


 次に、リディアは想定される批判を書き出した。費用がかかりすぎる。急報が増えて現場が混乱する。責任の所在が曖昧になる。女性を甘やかす。侯爵家の名で他施設へ過剰に介入している。どれも、評議会で必ず誰かが口にするだろう。


『費用について問われた場合は、支援品の量ではなく、記録によって無駄な支援を減らしていると答えてください。足りないものを正しく知ることで、過剰な布も、届かない薪も、使われない薬も減らせます』


『急報の増加について問われた場合は、急報確認手順を示してください。未確認、同報確認中、二方向確認済みを分けることで、すべてを同じ重さで扱わない仕組みにしています。増えたのは混乱ではなく、判断の段階です』


『責任について問われた場合は、施設責任者、記録係、本邸の確認係、それぞれの役目を明確にしてください。白い花の箱は責任を曖昧にするものではなく、誰が何を見落としたのかを後から追えるようにするものです』


『女性を甘やかすという言葉には、感情的に反論しないでください。産後の者を休ませることは、家の働き手を守ることであり、赤子の生命を守ることでもあります。倒れた者を責めるより、倒れない手順を作る方が家にも領地にも利益があります』


 譲れる点については、リディアの筆は早かった。導入施設の数。報告書の提出間隔。箱の大きさ。支援品の種類。これらは現場に合わせて変えてよい。むしろ変えなければ根づかない。


『譲れるものは形です。箱の大きさ、布の枚数、記録用紙の形式、導入の速度。施設ごとに違って構いません。形を守るために人を疲れさせては意味がありません』


 だが、譲れない点を書き始めたとき、リディアの表情は少しだけ硬くなった。


『譲れないものは目的です。不足を隠さないこと。記録した者を罰しないこと。急報を黙らせないこと。出産と産後の苦しみを、女性だけの我慢として片づけないこと。この四つは、どれほど立派な方に問われても下げないでください』


 最後に、リディアはセシリアへ宛てた短い助言を書き添えた。


『セシリア様。評議会では、すべてに勝とうとしないでください。批判を潰すのではなく、論点を分けてください。費用の話には費用で、責任の話には責任で、感情の話には暮らしの実例で答えること。相手の言葉に引きずられて、白い花の箱の目的を見失わないこと』


『もし迷ったら、こう答えてください。白い花の箱は、誰かを特別扱いするためのものではありません。見えなかった不足を見えるようにし、遅れた助けを少しでも早く届けるためのものです、と』


『なお、何か問題がある場合はこう言ってもいいでしょう。侯爵家の慈善活動に王都慈善連盟が介入する権限はございますか、と。白い花の箱は侯爵家が行っている慈善事業であり、費用は全額侯爵家が賄っているのです。 主導権は侯爵家にある。その点を忘れてはいけません』


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