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第5話:ブラック王国の支払い督促

続きは本日中にー

 アステリア王国の王宮では、リゼットが去ってから3日が経過していた。

 あの日、彼女が残した不吉な言葉など、(すで)に誰も覚えていない。あるいは、負け()しみとして片付けられていた。


 王宮の薔薇園ローズガーデンでは、今日もきらびやかな午後のティーパーティーが開かれている。主役は、第一王子ウィフレドと、新聖女エレノアだ。


「ふふ、ウィフレド様。見てくださいませ。リゼット様がいなくなってから、この国の空気まで明るくなったようですわ」


 エレノアが、魔法で生み出した(ちょう)(ちゅう)()わせながら、鈴を転がすような声で笑う。

 ウィフレドもまた、機嫌(きげん)良さそうに高級なワインを口に(ふく)んだ。


「全くだ。あの陰気(いんき)なネズミが消えて、ようやく聖女に相応(ふさわ)しい華やかさが戻ったな。予算がどうの、代償がどうのと…魔法の素晴(すばら)らしさを理解できぬ無能には、あのボロ家がお似合いだったのだ」


 彼はそう言うと、エレノアの気を引こうと指先を鳴らした。

 王子の得意魔法である『聖なる光』で、彼女の頭上に祝福の光冠(こうかん)を作ろうとしたのだ。


「エレノア、君の美しさにはこの魔法がよく似合う――」


 しかし。

 いつもなら一瞬で広がるはずの柔らかな光が、発動しない。

 代わりに、ウィフレドの目の前に、見たこともないような、どす黒い赤色の空中に浮かぶ板――ウィンドウが出現した。


「…? なんだ、これは。魔法の演出か?」


 ウィフレドが不審(ふしん)げに手を伸ばそうとした瞬間、そのウィンドウに、冷徹(れいてつ)な文字が(きざ)まれた。


『【警告】前回の利用料が未払(みばら)いです。滞納利息(たいのうりそく)が発生中。魔法の使用を制限します』


「な、なんだと…!? 滞納利息? 魔法の使用制限だと!?」


 ウィフレドが驚愕(きょうがく)の声を上げた、その時だった。


 パリン、と。

 何かが(くだ)け散るような、(かわ)いた音が王宮のあちこちで響き始めた。


「きゃっ!? なんですの、これ!?」


 エレノアが叫び声を上げる。彼女が優雅に散らせていた魔法の蝶たちが、一瞬で黒い灰へと変わり、彼女の純白のドレスを汚していく。

 そして彼女の目の前にも、同じ真っ赤なウィンドウが浮かび上がっていた。


『【請求】未決済(みけっさい)の魔力消費:980,000,000MP。担保(たんぽ)が消失しました。(ただ)ちに代替(だいたい)担保を提示(ていじ)してください。あるいは実物資産による強制徴収(ちょうしゅう)を開始します』


「な、何これ!? 9億!? 意味が分からないわ!」


 パニックは二人だけに留まらなかった。

 薔薇園で優雅(ゆうが)に魔法の香水を振りまいていた貴族たち、豪華(ごうか)な昼食を維持(いじ)するために加熱魔法を使っていた宮廷調理師たち。その全員の目の前に、赤い「支払い督促状(とくそくじょう)」が突きつけられたのだ。


「おい! お茶が急に冷たくなったぞ!」

「魔法灯が…王宮中の魔法灯が消えていく!?」

「閣下、見てください! 庭園の噴水(ふんすい)が止まり、水が泥に変わりました!」


 宮廷魔術師たちが(あわ)てて修復魔法を使おうとしたが、彼らが呪文を唱えるたびに、赤いウィンドウが容赦(ようしゃ)なく(はじ)き返す。


『【督促(とくそく)】過去5年間の肩代わり累計額(るいけいがく)法定(ほうてい)上限を突破しました。一次凍結(とうけつ)を開始。これより、魔法的権利を順次(じゅんじ)「差し押さえ」いたします』


 突如(とつじょ)として、王宮を包んでいた防衛結界が異音を立てて明滅(めいめつ)した。

 空中に浮かぶ黄金の防壁に、まるで焼印(やきいん)でも押されるかのように、巨大な赤い文字が(きざ)まれていく。


差押(さしおさえ)(FORECLOSED)』


 それは、この国が魔法という富を浪費(ろうひ)し続けたツケが、一気に回ってきた瞬間だった。

 管理者を失った負債は、複利(ふくり)(ふく)らみ、もはや誰にも止められない奔流(ほんりゅう)となって王国を飲み込もうとしていた。


「リゼットだ…あいつだ! あの女が何か(のろ)いをかけたに違いない!!」


 ウィフレドは顔を真っ赤にして叫んだが、その声も、次々と消えていく魔法の光の中に(むな)しく消えていった。




◇◇◇◇◇




 一方その頃。

 隣国エルディア王国の、王立迎賓館(げいひんかん)にあるプライベートダイニング。


 アステリア王国の阿鼻叫喚(あびきょうかん)など、今のリゼットには(あずか)かり知らぬことだった。

 窓から差し込む(やわ)らかな午後の光を浴びながら、彼女は目の前に並べられた料理に、目を輝かせていた。


「…すごい。本当に、宝石みたい」


 皿の上に鎮座(ちんざ)しているのは、エルディア特産の最高級牛のステーキ。

 絶妙(ぜつみょう)な火入れで表面は香ばしく焼き上げられ、ナイフを入れれば(あふ)れ出すのは、()き通るような肉汁。()えられた色とりどりの温野菜も、どれもが「命」を感じさせる鮮やかさだ。


 アルリック王が「我が国の管財人パートナーへの、最初の投資だ」と言って用意してくれた、特上の食事。


 リゼットは小さく切り分けた肉を、一口、口へと運んだ。


「……んんっ…!」


 口の中でとろけるような(あぶら)の甘みと、濃厚(のうこう)な肉の旨みが広がる。

 アステリアにいた頃は、常に空腹で、冷え切ったスープと硬いパン、あるいは栄養剤のポーションを流し込むだけの日々だった。

 味覚さえ、負債の重圧で麻痺(まひ)していたのかもしれない。


 だが今は。

 飲み込んだエネルギーが、ダイレクトに自身の魔力へと変わっていくのが分かる。


「ふふ…美味しい。本当に美味しい…!」


 リゼットは頬を(ゆる)め、幸せそうに目を細めた。

 本来の美しさを取り戻した彼女の笑顔は、(かたわ)らに(ひか)えるメイドたちが思わず見惚(みほ)れて、トレイを落としそうになるほど神々しい。



 食事を楽しみながら、リゼットはふと思い出した。

 あの日、自身が最後に言い残した「自己破産」というアドバイス。


(今頃、あの国はどうなっているんだろう…。まあ、私が心配することじゃないよね。私はもう、私の『帳簿』しか守らないもの)


 リゼットはワイングラスを(かたむ)け、透き通るような紅色の液体を一口飲んだ。

 (のど)を通る芳醇(ほうじゅん)な香りが、自由を実感させる。


「あー…やっぱり、自分のお金(魔力)で食べるご飯は、最高に気持ちがいい!」


 アステリアでは、一食食べるのにも「これは誰の魔力の(けず)りカスかしら」と計算しなければならなかった。だがここは違う。

 自身が働き、正当な対価として得た報酬(ほうしゅう)。その一粒(ひとつぶ)一滴(いってき)(いた)るまで、誰に()い目を感じる必要もない、リゼットだけの正当な権利だ。


「陛下、ごちそうさまです。…午後の業務は、午前中よりも効率(こうりつ)を上げてみせます」


 リゼットは軽やかに席を立つと、愛用の羽ペンと、真っ新な「エルディア魔力銀行」の帳簿を手に取った。


 アステリア王国では、魔法という富が腐敗(ふはい)し始めている。

 しかしここエルディアでは、リゼットの手によって、新しい価値が芽吹(めぶ)き始めていた。


 窓の外では、エルディアの民たちが活気に満ちた声を上げている。


「さて…次は、どの資産を動かそうかな?」


 リゼットの瞳には、もはや過去の影はない。

 あるのは、自身の力で未来を黒字にしていく、強くて美しい実務家の輝きだけだった。


(前回の続き)

弁護士事務所に行き、法テラスでお会いした弁護士さんとは別の方と顔合わせ

話しが伝わっているようで、第一回目は借金の確認と法テラスの制度について説明がされた

法テラスはあくまでも弁護士費用の十数万を立て替えてくれるだけなので、月払いで返していくことに

そのための口座引き落とし依頼書をもらう


そして弁護士先生との契約

ここで印鑑が必要になるので、絶対に印鑑を持っていこう


また自己破産するとこういう事ができなくなるよ~と説明を受けたので

これは次回書いていくことにする

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