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第12話:信用創造と希望の融資

続きは明日にー

「……よし。これで『エルディア魔力銀行・特殊(とくしゅ)融資(ゆうし)規程(きてい)』の第一版が完成ね」


 私は、エルディア王都を一望できる銀行本店の執務室で、窓の外を眺めながら小さく呟いた。

 魔力銀行の試験運用は終わり、いよいよ本格稼働の段階に入っている。これまで「魔力を預かる(預金)」ことに注力してきたけれど、今日からはその集まった資産を、最も効率的に、そして希望ある形で運用するフェーズへと移行する。


 コンコン。


「リゼット様。本日の融資希望者のリストと、担保(たんぽ)評価の報告書をお持ちしました」


 入ってきたのは、私の弟子の一人、商家の娘であるソフィだ。

 彼女が手渡してくれた書類の束には、これまで魔法とは無縁だと思われてきた、名もなき平民たちの名前がずらりと並んでいた。


「ありがとう、ソフィ。さて、審査(しんさ)を始めましょうか」


 私は羽ペンを手に取り、スキルの視界を【会計モード】に切り替える。

 今回の融資の目玉は、世界初となる『将来労働担保融資』。

 魔力を持たない、あるいは微々(びび)たる量しか持たない平民たちに、「今現在の資産」ではなく「将来生み出す価値」を担保に魔力を貸し出す仕組みだ。


「リゼット様、本当に大丈夫でしょうか。彼らには返すための魔晶石も、代償(だいしょう)を即座に清算する体力もありません。もし貸し倒れが発生したら…」


 ソフィが不安げに(たず)ねる。私は彼女に、会計士としての不敵な笑みを返した。


「ソフィ。会計の世界ではね、今あるものだけを数えるのは守り(ディフェンス)に過ぎないの。攻めの会計……つまり『信用創造』とは、未来の可能性を今現在の価値として計上することよ。彼らは魔力を持たないけれど、魔力があれば開墾(かいこん)できる力があり、病を治して働ける時間がある。その『未来の生産性』を、私は信じているの」


 私はリストの一番上の名前にチェックを入れた。

 北部の荒野を開拓したいという若者。本来なら数十年かかる開墾も、土属性の耕作魔法を一定期間使えば、わずか一年で肥沃(ひよく)な大地に変わる。そこから収穫される作物は、貸し出した魔力の数倍の価値を生み出すはずだ。


「魔力は一部の特権階級が独占する『支配の道具』じゃないわ。それは、明日をより良くするための『未来への投資』なのよ」




◇◇◇◇◇




 数日後。銀行の広場は、融資を受けた平民たちの熱気に包まれていた。


「あ、ああ……! 本当に、私のような者に魔法を貸してくれるなんて!」


 震える手で魔導カードを受け取ったのは、病に伏せる母親を持つ貧しい青年だった。

 彼はカードにチャージされた治癒魔力を使い、母の命を救う。そして、元気になった母親と共に働き、その労働対価で少しずつ魔力負債を返済していく契約だ。


「感謝なんていいのよ。これは慈善ではなく、立派な契約なのだから。利息を含めて、しっかり働いて返してちょうだいね」


 私は努めて冷静に、事務的な言葉を投げかける。けれど、広場を埋め尽くす「ありがとう」の声と、希望に満ちた民の瞳を見るたび、私の胸の奥に計上(けいじょう)しきれないほどの充実感(じゅうじつかん)が積み上がっていく。


 荒野では魔導重機が(うな)りを上げ、村々ではこれまで治らなかった病が()えていく。

 私の理念が浸透(しんとう)するにつれ、エルディアの国力は、ただ浪費し続けて自壊に向かうアステリアとは比較にならないほど、幾何学的(きかがくてき)な上昇を見せ始めていた。




「……素晴らしい光景だな、リゼット」


 不意に、背後から聞き慣れた、そして最近では少し聞くだけで心拍数が上がる声がした。

 アルリック陛下だ。


「陛下! また、お忍びですか? 護衛の方々が泣いていますわよ」


「彼らの涙は後で補填(ボーナス)しておこう…。それよりも、君の『信用創造』の結果を見に来たのだ。……なるほど、民の瞳に宿る熱が、そのまま国の資産に直結しているのがよく分かる」


 陛下は私の隣に立ち、広場を見下ろした。

 風に(なび)く彼の髪が、私の肩にわずかに触れる。それだけで、私の指先がぴりりと(しび)れたような感覚に(おちい)った。

 ……いけない。仕事中よ、リゼット。


「陛下、ご覧ください。北部の開墾予定地からは、来期には昨年の三割増しの収穫が見込めます。これはもはや『投資』ではなく『確約された利益』です。エルディアの総魔力資本は、アステリアの最盛期すら優に超えるでしょう」


 私は必死に数字の報告をして、心の動揺を隠そうとした。

 だが、陛下は私の帳簿には目もくれず、じっと私の横顔を見つめていた。


「数字のことは分かった。……リゼット。君はいつも、民の未来や国の利益ばかりを見ているな」


「それが私の、管財人としての役割ですから」


「では、私の視線にはいつ気づいてくれるのだ?」


 陛下が、私の手首をそっと掴んだ。

 そのまま、逃げ場を(ふさ)ぐように、バルコニーの壁際(かべぎわ)に追い詰められる。


「へ、陛下…!? ここ、銀行のど真ん中ですよ!? 誰が見ているか…」


「誰にも見せぬよう、死角を選んでいる。……リゼット。君がこの国に希望の融資をするように、私にも、君の関心を融資してはくれないか?」


 陛下の顔が、ゆっくりと近づいてくる。

 彼の瞳は、かつての冷徹な王のものではない。(うる)みを帯び、独占欲と、そして…もっと深い、切実な渇望(かつぼう)が混ざり合っている。


「君が民に微笑むたび、私はその微笑みの権利をすべて買い占めたくなる…。君が仕事に没頭(ぼっとう)する姿は美しいが、私の前でまで『会計士のリゼット』でいられると、私はどうにかなってしまいそうだ」


「…っ。陛下、それは……無理な要求(オーバーローン)です。私、今、エルディア全体の魔力バランスを調整しなきゃいけなくて、それに、次の監査の準備も…」


「監査など後回しでいい。今すぐ、私の胸の鼓動を監査してくれ。……君への想いという名の負債が、もう法定上限を超えて(あふ)れ出しているのだ」


 耳元で(ささや)かれる甘い吐息。

 陛下の手が私の腰に回り、密着する。

 あ、圧倒的な熱量……。

 私の脳内にある精密な計算機が、カタカタとエラー音を鳴らし始めた。


(だ、駄目よ…。今の私の信用スコアじゃ、この熱烈な視線を処理しきれない…!)


「も、もう! 陛下! 分かりましたから! 今日の夕食は、陛下のお話をちゃんと聞きます! ですから、今は…今は仕事に戻らせてください!」


 私は真っ赤な顔をして、陛下の腕からするりと抜け出した。

 そのまま、逃げるように執務室へと駆け込む。


「……ふ。今日の夕食か。約束したぞ、リゼット」


 背後から、勝ち誇ったような陛下の低い笑い声が聞こえる。


 もう! これじゃ仕事に集中できません!  

 私はバタンとドアを閉め、火照(ほて)った頬を両手で押さえた。


 アステリアでは、私は「石ころ」のような扱いだった。

 けれどここでは、世界で最も合理的なはずの王が、私という「資産」を手に入れるために、なりふり構わず情熱をぶつけてくる。


「…あー、もう。計算が合わないわ…。こんなに心拍数が上がったら、魔力燃費が悪くなっちゃうじゃない…」


 私は乱れた呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す。

 窓の外では、融資を受けた平民たちの歓声が響いている。

 彼らの未来は、着実に黒字へと向かっている。


 けれど、私の心の帳簿は…。

 アルリック陛下という名の、あまりにも巨大で、甘美な「不良債権(恋心)」によって、かつてないほどの激しい揺らぎを見せていた。


 アステリアの混沌が、静かに、けれど確実に近づいていることなど、今の私はまだ知らない。

 私はただ、このエルディアで芽生えた新しい希望と、自分の中に芽生えた正体不明の高鳴りを、どうやって調整していくべきか、混乱した頭で帳簿の続きを書き留めるのだった。


(前回の続き)

「口座凍結中のお給料振り込みや支払いはどうなるの!?!?」

という疑問にお答えします(銀行員に聞いた)


まず口座を凍結されると、振込と引き落としができなくなります

カードをATMに入れても「お取り扱いできません」状態になるのね(なった)

ちなみにネット銀行や銀行のアプリを使用している場合も同じようになります(なった)


「じゃあ給料振り込みはどうなるの?」ですが

会社や企業からはちゃんと振り込まれます

でも口座の入り口が閉じている状態だから

>>お金が宙に浮いた状態になります<<


図にするとこんな感じ

【企業の口座】→→→お給料(ここで止まる)→→→【凍結された口座】


ね、宙に浮いてるでしょ?

こんな中ぶらりんな状態なので、口座の凍結が解除されたらすぐに振り込まれます

お金がなくなったわけではないので安心してね


口座引き落としの支払いも同様に、凍結中は一切引き落とせなくなります

なので「口座から引き落とせませんでした」と個別で振込用紙が送られてくるよ

私は振り込みをミスってネットが止まった

口座が凍結されると結構不便ということが身にしみました

参考になりましたら☆をお願いします!!!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


と思ったら

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面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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