4
オヤジから送られてきたワンドロイド…それに入っていた魔導書アプリ、グリモア「Little Key」は、72種もの極大魔法を操る大魔導書で、しかも稼働するのは全世界で常に一つ…つまり、俺の持つグリモアだけらしい。
「…え、普通に怖いんだけど…。そんな大それたモノ持ってて、俺狙われない?」
『蒼様が死んだ場合、「Little Key」の所有権はフリーとなります。その場合の主有権は…幾つかの審査基準はございますが、基本的には「早い者勝ち」となりますね。』
Oh…つまり、俺を殺せば所有権を奪えるって事ですね、理解しました。
…よし…!
「俺…所有権放棄するよ…!」
『さきほども申し上げましたが、「所有権の放棄条件」に該当していない為、それは不可能です。』
ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァッ!!!
不味い不味い不味い不味いっ!!!このままだと俺、殺されるっ!!!
ふざけんな何で俺がこんな目に…詐欺だペテンだイカサマだ…!!!
何とか…何とかしないと…!!
「助けて変態っ!!俺まだ死にたくないっ!!」
『…先程も申し上げた通り、「Little Key」は所有者に「勝利」と「栄光」をもたらす大魔導書でございます。十全に使いこなすことができれば、万が一にも所有者に危険が及ぶことはございません。』
!!
そうだ…そんだけ凄いグリモアなら、所有者を守る魔法の一つや二つあって当たり前…!
「早急に説明を頼む!」
『襲撃者対策でございましたら、第1の魔法「バエル」の【不可視】と、第35の魔法「マルコシアス」の【身体強化】で十分対処可能かと。』
俺は急いでワンドロイドの画面を確認する。
────────────────
[Little Key] θθθ
1.[⨕]バエル 消費魔力3
2.[ψ]アガレス 消費魔力5
3.[⩙]ウァサゴ 消費魔力3
4.[⩀]ガミジン 消費魔力2
5.[ↁ]マルバス 消費魔力4
6.[₻]ウァレフォル 消費魔力3
≪ ≫
◀ ◎ ■
────────────────
バエル…一番上に表示されてるコレか。
『使用したい魔法名をタップして下さい。詳細が表示されます。』
変態の指示に従い、「1.[⨕]バエル」の表示をタップする。
────────────────
[Little Key] θθθ
1.[⨕]バエル【不可視】
消費魔力3
1・使用者を「透明」にする
2・《???》
3・《???》
≪ ≫
◀ ◎ ■
────────────────
「…なんだコレ、なんか非表示の項目があるんだが?」
『「Little Key」に内包された魔法には、それぞれ「格」がございます。最初は初級魔法のみ使用可能…上級、そして最上級の「極大魔法」は所有者の成長に応じ、徐々に解放されていく仕様でございます。』
…よく分からないけど、同じ【不可視】の魔法でも初級・上級・最上級の三種類あるってコトか?
…え、それって…72種類どころか、216種類の魔法が使えるってコトじゃあ…。
『蒼様の考えていることは想像できますので具申いたしますが、「バエル」はあくまで【不可視】の魔法でございます。上位の魔法はその効果範囲や能力の強化版となります。』
…ああ、そういうのね。理解した。
『魔法を使用する際は、該当する効果内容をタップした上で魔法名を唱えて下さい。』
魔法名を唱える…詠唱ってヤツか。
…少し恥ずかしいな。
幸い、長々とした詠唱文とかじゃなくて魔法名を唱えるだけだ…我慢しよう。
俺は「1・使用者を「透明」にする」の部分をタップし、魔法名を唱える。
「第1の魔法…バエルッ!!」
唱えた瞬間、俺の全身を何か膜のような物が覆ったのを感じる。
これは…魔力で包まれているのか?
…これが、魔法か…。
「…で、俺って今、透明になってるのか?自分では分からないんだけど…」
『【不可視】の魔法は問題無く発動しております。』
…どうやら俺、透明人間になったらしい。
…全然実感が湧かねぇ…。
…そうだ、【身体強化】だったらもっと実感あるんじゃないか?
なんて言ってたっけ…確か、第35の魔法って…
────────────────
[Little Key] θθθ
31.[⨊]フォラス 消費魔力5
32.[⨲]アスモデウス 消費魔力5
33.[∌]ガープ 消費魔力3
34.[⫚]フールフール 消費魔力3
35.[⩆]マルコシアス 消費魔力4
36.[₴]ストラス 消費魔力5
≪ ≫
◀ ◎ ■
────────────────
あった。第35の魔法「マルコシアス」だ。
タップして…と。
────────────────
[Little Key] θθθ
35.[⩆]マルコシアス【身体強化】
消費魔力4
1・使用者の肉体を強化する
2・《???》
3・《???》
≪ ≫
◀ ◎ ■
────────────────
で、効果内容をタップして、魔法名を唱えるんだったな。
よし…!!
「第35の魔法…マルコシアスッ!!」
そう唱えた瞬間、今度は俺の体に魔力が流れ込んでいくのを感じる。
うぉっ!?こっ…これはっ…!?
「ウオオオオオォォォッ!!なんだコレッ、力が…みwなwぎwっwてwきwたwwwww!!」
筋肉が膨張し、皮膚がまるで鋼の様に硬くなっていくのが分かる。
全身に満ちる万能感…これが…【身体強化】の魔法っ!?
…今なら俺、フリーザにも勝てるっ!!
『具申致します。身体能力が強化されているのは確かですが、過信は禁物です。所詮は初級魔法の範疇での強化でございますので。』
これで初級魔法の範疇っ!?上級、最上級になったら、一体どうなっちゃうんだ!?
俺が自身に起こった変化に戦慄していると、変態AIコンシェルジュが話を続ける。
『よく使用する魔法はホーム画面にショートカットの制作も可能です。戦闘時の効率をよく考え、ショートカットの制作をお勧めいたします。』
ショートカット…確かに、戦闘中に72種もある魔法の中から目的の項目を探し出すのは困難…そんなんしてたらモンスターに殺されちまうわな。頻繁に使う魔法はホーム画面にショートカットを作っておくだけで、戦闘効率は大幅に上がるだろう。
『…さて、これで最低限のチュートリアルは終了いたしました。当初のお約束通り、蒼様が欲している情報を開示いたします。』
「…そうだ、オヤジの手掛かり…!!」
俺の言葉を合図にしたように、ワンドロイドがホーム画面に切り替わる。
バックグラウンド再生されているのか、変態AIコンシェルジュの声が聞えてきた。
『実はこのワンドロイドには、「Little Key」以外にもう一つだけアプリがインストールされております。ホーム画面を下から上にスワイプして下さい。』
言われるがままにスワイプすると、画面がまた切り替わる。
これは…アプリの一覧かな?
「Little Key」以外に並ぶアイコンは「電話」「カメラ」「設定」…プリインストールと思われる機能。
…一応、通話とかできたんだな。そこはスマホの範疇なんだ…。
そして…あきらかにプリインストールとは思えないアイコンが一つ。
「…「ダンジョン・ナビ」?ナビゲーションアプリかな?」
石造りの通路に地図マーカーが浮かんでいるアイコン。
これは…おそらくワンドロイド専用アプリの類だろう。
『このアプリ、世界に点在するダンジョンの位置情報と内部地図を網羅している物なのですが…既に何ヵ所かマーカーが置かれています。何のメモやコメントも残されておりませんが…恐らく前の所有者である「相馬 晴臣」が置いた物でしょう。』
マジか。
…ダンジョン。
人類にとって危険なモンスターが徘徊する、異界の入口。
…どうやら俺は、オヤジの行方を知る対価に、命をベットする必要があるみたいだ…。




