表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

ソレがいつから存在するのかは、誰も知らない。


異界へと繋がる、異形の建造物…「ダンジョン」。


天を貫くようにそびえ立つ巨塔…海底に鎮座する神殿…。

未知の技術で造られた工場群…奈落へと続く古代遺跡…。

別世界の史実が産み出した、影の牢獄…。


いずれも、未知の敵性生命体…「モンスター」が徘徊し、それらは時にダンジョン外へと漏れ出し人を襲う。

そんな危険な「ダンジョン」に潜り、探索し、「モンスター」を倒す…。


…それが、「魔導士」達だ。


古の時代より受け継がれし秘儀…「魔法」を操り、人類に仇なす邪悪な異形と戦う存在。

残念なのはその技術の専門性から絶対数が極端に少ない事…()()()

だが、ダンジョンから産出する未知の素材と科学技術が、現代に生きる魔導士達の戦い方を大きく変えることとなった。


本来なら複雑な呪文詠唱や精密な魔法陣が必要な魔法を、魔導書(グリモワール)アプリ…通称「グリモア」と、魔法の演算処理に特化した専用のスマートフォン「ワンドロイド」を使用することで手順の簡略化に成功。


「魔導書」を「アプリ」に。

「杖」を「スマホ」に持ち替えたのだ。


この技術革新によって、一部の才ある者だけのものだった「魔法」は急速に一般化することとなる。

常に人材が不足していた「魔導士」が大量生産されたことにより、事態は好転。

人類は脅かされ続けた「ダンジョン」に対し、遂に反旗を翻す事となったのだ。



◇ ◇ ◇ ◇ 


「…あぁ…?」


目を覚ますと、俺は涎を垂らしながらテーブルに突っ伏していた。

…寝てたのか?


…そうだ!オヤジから「ワンドロイド」が送られてきて…!

思い出した俺はテーブルの上のソレに目をやった。


…そこには、傷一つ無く光沢を放つディスプレイが。


…あれ?

確かコレ、画面に大きなひび割れが入っていたと思ったんだが…。

…それに、本体の方もボロボロだった筈だ。

何が起こった?


…まさか。


話に聞いた事がある。

「ワンドロイド」はダンジョン素材と最新科学技術の結晶。

高純度の魔石をコアに使用し、外装はモンスターの外殻や希少な鉱石が原材料だとか。


…それ故に、非常に高額らしい。

低価格帯のエントリーモデルでさえ、高級車が買える金額。

使われている素材や技術を思えば仕方が無いことなのだろうが…。


そんな「ワンドロイド」の中でも、一部のハイエンドクラス…最高級・最高品質の品には、ある特別な機能が搭載されている…らしい。


それが、持ち主の魔力を使用して故障や外傷を治す「自己修復機能」だ。


…そういえば、気を失う前にそんな表示が出ていた気も…。

…そうか、俺が気を失ったのって、俗に言う「魔力切れ」ってヤツだったのか…。

…ってことは俺、魔力あったんだな。

まぁ、量の大小はあれど魔力持ちって、二~三人に一人位の割合だったハズだから…それほど珍しい話でもないのか…?


改めて、俺はテーブルの上の「ワンドロイド」に手を伸ばす。

…大丈夫…だよな?

…また魔力吸われたりしないだろうな?

おっかなびっくり「ワンドロイド」を手に取り、再度ホームボタンを押す。



────────────────

[System]

本体の修復が終了いたしました。


▼進行度…100%(complete!)

■■■■■■■■■■

────────────────



あ…なんか完了してる…。

修復…やっぱり「自己修復機能」が働いたみたいだな。

って事は…このワンドロイド、ハイエンドクラスの超高級品ってコトかっ!?

…なんでそんなモノをオヤジが!?


つーか…もしかしなくてもだけど。

…ウチのオヤジ、なにかとんでもない事件に巻き込まれてる?

汚れた封筒で届けられた、ボロボロのワンドロイド…。

しかもソレが超高級品のハイエンドクラスって…。


…駄目だ、情報が少ない状態であれこれ考えても混乱するだけだ。

この事実からは一旦目を逸らそう。

今は、このワンドロイドの中身を確かめるのが先決だ。


意を決した俺は、修復の終了を告げるワンドロイドの画面をタップした。



────────────────

AM10:16          θθθ





       [☸]

      Little Key




     ◀  ◎  ■

────────────────



これが…ワンドロイドのホーム画面…か。

初めて見たけど…普通のスマホと大差無い感じだな。


…アイコン一つしか無ぇじゃねえか。

…え?もしかして…誤動作とかで消えちゃった…とか?

…うわ~マジか…どうすんだよコレ…。


…仕方ない、とりあえずこの、たった一つだけ残ったアプリを見て見るか。

え~と…名称は「Little Key」…「小さいカギ」?

アイコンはなんか…魔法陣…かな?

…ってコトは、これが話に聞く魔導書(グリモワール)アプリ…「グリモア」か。

確かグリモアって、かなり色々な種類があるって話だったよな。

日々新しいのが制作されてるって聞くし。

…これはどんなグリモアなんだ?


妙な緊張感から生唾を飲み込むと、俺は慎重に「Little Key」のアイコンをタップした。



────────────────

[Little Key]         θθθ


初回起動中…


ようこそ、相馬 蒼様。

魔導書アプリ「Little Key」は

貴方の魔導士ライフを

快適にサポートします。


     ◀  ◎  ■

────────────────



おお、なんか出た。

やっぱりコレ、「グリモア」だったんだな。



────────────────

[Little Key]         θθθ


「Little Key」は操作方法などを

分かりやすくご理解頂けるよう、

AIコンシェルジュによる

音声サポート機能を搭載しています。


音声サポートを有効にしますか?

□了承する □拒否する


     ◀  ◎  ■

────────────────



AIコンシェルジュの音声サポート…?

よく分からんが、ヘルプかチュートリアル機能みたいなモンかな?

俺は「ワンドロイド」も「グリモア」も詳しくないから、正直助かるな。

了承っ…と。



────────────────

[Little Key]         θθθ


■了承する □拒否する


AIコンシェルジュによる

音声サポートを開始します。





     ◀  ◎  ■

────────────────



『…はじめまして、蒼様。これからは(わたくし)がグリモアの使用方法等、サポートをさせて頂きます。どうかよろしくお願いいたします。』


ワンドロイドのスピーカーから、若い男性の声が流れる。

いかにも執事風といった感じの、礼儀正しい口調だ。


「えっと…コレって俺の声も聞こえるのかな?こちらこそ、よろしくお願いします。」


『ちゃんと蒼様の声は聞こえております。ご丁寧にありがとうございます。』


これなら初心者の俺も安心だ。

…本当に助かった。


「そうだ、AIコンシェルジュさんの事は何て呼べばいいのかな?」


俺の質問に、コンシェルジュはしばし沈黙する。

あれ…何だ?俺、何か不味い事でも言ったか?


『…私の事はご自由にお呼び下さい。』


「いやいや、そうは言っても俺には前情報が無いからさ。何か名前とか設定されていないの?」


…再び、長い沈黙が訪れる。

なんか、この質問っておかしな所でもあるんだろうか…?

優しそうなコンシェルジュさんだし、AIとはいえあまり困らせたくないんだけどな…。


『…私の呼称は設定されていません。ですが、あえて呼んでいただくのであれば…』


そこまで言うと、コンシェルジュは三度目の長い沈黙に入り…


…そして、たっぷりの間を開けた後。




『…そうですね、「クソムシ」とでもお呼び下さい。』



…額に冷たい汗が伝う。

…おや?なんか話が変わってきたぞ…?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ