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絶賛一人暮らし中のアパートの自室、そのポストに一通の封筒が届いた。

隅に乾いた泥が付着した、くたびれた様子の封筒。


…差出人は、俺の父親。

…一年前、海外赴任中に失踪した筈の、俺の父親。



部屋の鍵を閉め、テーブルの前に座る。


『“…今年度に入ってからの、巣鴨地域での行方不明・失踪者が急増しています。政府はこの事態を重く見ており…”』


…つけっぱなしだったテレビは不穏なニュースを垂れ流していた。

テレビの電源を消すと、俺は慎重に封筒を切り開く。


父親…オヤジはお袋が病気で亡くなってから、男手一つで俺を育ててくれた。

仕事で留守にすることが多かったが…たまの休みには遊びに連れて行ってくれたり、勉強を見てくれたり…まぁ、親の愛情ってもんは感じていた。


…そのオヤジが、海外赴任中に突然の失踪。


何かの事故や事件にでも巻き込まれたのか…詳細は一切分からない。

ただ…あのオヤジの事だ、俺を一人残して死んだりする筈が無い。

きっと何処かで生きている…そう信じて、今日まで生きてきた。

幸い、オヤジの残した貯金は、俺が社会に出るまで生活するのに困ることは無さそうな額だったし。


そのオヤジから届いた、謎の封筒。

…やっぱり生きてやがった!あのクソオヤジ…心配させやがって!

俺は逸る気持ちを抑えて、封筒の中身を取り出した。



…封筒の中に入っていたのは、画面のヒビ割れたスマホだった。

真っ黒なソレは、よく見たら裏も傷だらけで…まるで「事故現場」から拾ってきたような…


「…な…何だコレ?…まさか、遺品ってワケじゃないだろうな…」


バッテリーが生きているのかさえ不明なソレだったが、試しにホームボタンを押してみる。



途端。



バチッ!!「痛っ!?」


触れた指先に電流が走った!…なんだ!?…漏電してた?

思わずテーブルの上に投げ出してしまったスマホだったが、唐突にそのひび割れた画面に文字が表示される。



────────────────

[System]

接触者のDNAを検知…


▼相馬 晴臣の血縁者と断定

────────────────



何だコレ!?DNA!?いや、それより…

相馬 晴臣っ!?…俺の父親の名前だ。

…それじゃあ、やっぱりコレはオヤジの…!



────────────────

[System]

前所有者:相馬 晴臣は

当機の所有権を放棄しています。

血縁者は優先的に所有権を引き継ぐ

権利を保有しています。


所有権を引き継ぎますか?

□了承する □拒否する

────────────────



所有権…なんだかよく分からないけど、スマホの中を確認するには所有権を引き継がなければならないようだ。

…オヤジがどんなつもりでコレを送り付けてきたのかは分からないけれど…。

…こんなもん、[了承する]一択だろ!



────────────────

[System]

■了承する □拒否する


新たな所有者:相馬 蒼へ

所有権を引き継ぎました。

────────────────



…え…俺の名前…なんで?

俺、まだ何も入力してないんだが?


…いや、さっきから色々とおかしいとは思ってたけど、これってもしかして…。



────────────────

[System]


   ようこそ 新たな魔導士

       相馬 蒼


      Wandroid

────────────────



やっぱり…このスマホ、ただのスマホじゃない!!

これって…()()()()が使うって聞く、『ワンドロイド』ってヤツだ!!



────────────────

[System]

所有者の魔力を使用し、

本体の修復を進行しています。


▼進行度…23%

■■□□□□□□□□

────────────────



…ん…所有者の魔力って…?

ちょ…そんな勝手に…!?


なんだか眩暈が…うう…



……視界の端が、暗く染まっていく。

そして、まるでスマホのバッテリーが切れるみたいに、俺の意識は唐突にプツリと落ちた。

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