『遊戯此一日半刻まで』
スレイシオ帝の治世。
カルドゥーギヤザと呼ばれた遊戯が、帝国を熱狂の渦に叩き込んだ。
貴族から庶民までが盤上に駒を並べ、札を手に駆け引きを繰り広げる。
賽の出目が運を揺らし、勝敗が命運を決す。
酒肆も広場も、遊戯に狂った民衆で溢れていた。
だが、その裏で賭博の影が忍び寄る。
裏社会の胴元が暗躍し、負けた者は借財に沈み、奴隷へと堕ちていく。
憂いた皇帝スレイシオは禁令を布告するも、遊戯は地下に潜りさらに猛る。
そこへ一人の側近が進言する。
『国家がカルドゥーギヤザを管理すれば、裏社会の金を断ち切れる』
皇帝は動き、法典に新たな条項が刻まれた。
時が流れ、帝国は大会を開き、若きティカーハシが十六連勝で名人の座を掴む。
月桂冠を手に、大衆へこう叫んだ。
『カルドゥーギヤザは一日半刻まで。それ以上は心身を鍛えろ!』
喝采が湧くなか、一人の子が手を挙げ、鋭く問う。
『名人は皆が働く間にカルドゥーギヤザに励んだから強くなったのではないか?』
ティカーハシは答えられず、人々は笑う。
名人と成る者は、敵を欺き影で修練を積むものだと。
第二回、『帝国雑文物語録』、『遊戯此一日半刻まで』。
この遊戯の果てに、真の勝者は誰か。




