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あなたの真実は  作者: 一ノ瀬双
9/9

灰色の記憶 完

「私…だったんですね」


店主がゆっくりと首を横に振った気がした。


「なんとなくですが、覚えてます。

幼い頃に、虫の羽や足を千切ったり、蛙をひっくり返して足掻いているのを見ていたり」


再び店主が首を振った気がした。



「幼少期になら経験している人もいると思います」



俯いたまま、田中が呟く


「落とし穴を掘ってみたり…」






道路に石を置いてみたり






そう呟いた瞬間、灰色のような白黒の写真が、記憶と共に色をつけて蘇る。





「少し落ち着きましたか」


店主が温かい飲み物を差し出しながら囁く。


「ありがとうございます、大丈夫です」


「出過ぎた真似をしてすみませんでした。

ただ、あくまで田中さんのお考えも憶測の域を出ません。真実はまた別のところにあるのかも知れませんし…」


そう言いかけて、店主はもうそれ以上は何も言うまいとした。



「お気遣いありがとうございます。今度は妻もこちらのお店に連れて来てもいいですか」


田中は吹っ切れたような微笑みでそう返した。


「ええ、もちろんです。お待ちしております」


「ただ自宅から少し遠いので、いつになるか分かりませんが」


店主が不思議そうにしているのに気がついたのか、田中が続けた。




「私の妻、足が悪くて車椅子なんです。幼い頃の事故の後遺症らしくて」




田中はまた店に来るのだろうか。



そんな思いに馳せながら、


店主は店の暖簾を下げた。






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