王と王
「貴様は……」
目の前にいる男は、竜にとって完全に予想外の参戦であった。
─この世界には、王と呼ばれる世界の頂点に立つ者がいる。
魔界の王は魔王という風に、ほぼ必ず王がいる。
だが、ハヤト達の世界である現界には王と呼ばれる人物がいなかった。
それは実力がある者がいないためか。
はたまた王という概念そのものが消えたか。
竜にとって、王という存在は従うべき存在であり、また敵対する存在でもあった。
定められた存在とでも表そうか、竜と王には縁というものが存在していた。
そのため、王の気配は竜が一番良く分かっている。
…王が、目の前にいる。
目の前の人物は数千年前にいた、現界の王の気配と同じ気配を感じる。
それほどまでに目の前の男は強いのだろうか。
そんなことは関係ない。
王であれば、竜は従う。ただそれだけだ。
「…王よ、ご命令を」
竜の、尊敬と畏敬の念がこもったその言葉。
ナポレティスに発することが出来たのはこの言葉のみだ。
「……は?」
もはや単語ともいえないその言葉。
だがナポレティスにとっては無論、状況を知り得た者にとっては当たり前となる。
なぜなら、盟友である相手。ハヤトに、対等とは決していえない扱いを受けたのだから。
「…まだ自覚がないということですか」
「いや、急に王とか言われても何の話か分からねぇよ」
竜の対応に、まったく理解できないナポレティス。
王とはナポレティスにとっておとぎ話のような存在であった。
「…それより、先にこいつらを潰した方が良くないか?」
いったん、王などの話を中断する。
そうしなければ、ナポレティス自身が混乱してしまう。
それどころか、目の前の魔王からタコ殴りにされるだけだ。
「…了解しました。ですが、我々もかなりの消耗をしております。王のお力をお借りしても?」
やはり、ハヤトの声でこの言葉遣いは違和感が残る。だが、そんなことを気にしている場合ではない。
「あぁ、任せてくれ」
ナポレティスは自身の持つ剣を輝かせ、無数にいる魔王の内、一体に目を付けた。
背中から光る羽根をはやし、剣にそれぞれの属性を重ねる。
炎、氷、土、風、更に幾重もの属性を重ね、魔王に向けて羽ばたく。
そして、魔王に渾身の【突き】を繰り出した。
「…っぐうう!!」
魔王に避ける暇すら与えず、本体の魔王の心臓に剣を突き刺す。
貫かせぬよう、魔王は肉体に魔力を加える。
それにより、分身であった魔王は全て液に戻り地面に溜まりを作った。
ナポレティスの突きに耐えられぬほどに、ただ一瞬、死を自覚する程の苦しみを受けた魔王は、ただ一言。ナポレティスの耳元で声を発した。
「【苦しめ】」




