城の中、魔人との出会い
「あぁあぁぁぁあぁぁ!」
とてつもない速度で走るマルチに、ハヤトはしがみつくだけで精一杯だった。
それにしても、先ほどからこちらを見つめるような視線をハヤトは感じているのだが、気のせいだろうか?
数分後、マルチが足を止めたかと思うと、ハヤトの目の前には、とても大きく、黒い、豪華な城が建っていた。
「っ…!」
聖教会の建物以上の大きさで、世界の中心とでもいえるような壮大さがあった。
「さぁ、ハヤト。ついてきて」
マルチは、何の躊躇もなく城の門を開き、ハヤトを連れて城の中へと入っていった。
「そろそろかな」
十分ほど城の中を歩き回ると、一つの広い部屋へと出た。
「おーい!魔王様、連れてきましたよー!」
マルチが部屋の奥に向かってそう叫ぶと、部屋の奥から、禍々しくも、どこか神々しさを感じ、人ではない。と、強く思わせる、巨大な魔人が歩いてきた。
「はじめまして、勇者にして、竜の血を継ぐものよ。」
魔人は、低く、おどろおどろしい声で、ハヤトに話しかけてくる。
「…あなたは、誰…ですか」
「私の正体が知りたいのか?」
「…残念だが、教えられることは無い。」
「え?」
「何故ならば、君はここで死ぬからだ。」
魔人が手をつき出すと、手の周りの空気が黒く染まり、段々と剣の形へ固まっていった。
「…っ!」
ハヤトも、腰の剣を構えようとした。だが、
「残念、しっぱーい」
後ろから、マルチに体が捕まり、完全に動きが封鎖されてしまった。
「マルチ…!」
「安心してよ、君の仲間はどうせ、魔物に襲われて死んでるよ。」
先程とは全く違う顔をするマルチに、ハヤトはふつふつと怒りが沸く。だが、動きが封じられているため、どうにも出来ない。
ハヤトに魔人が剣を向ける。
そして、ハヤトの頭にめがけて、剣が振り下ろされた
その瞬間、輪ゴムがハヤトの目の前に飛んできた。
「っ…?輪ゴ…ム…?」
輪ゴムは、剣にぶつかった瞬間、空中に固定されたかのようにして、剣の勢いを殺した。
そして、輪ゴムの弾力によって、剣は魔人の方へと弾き返された。
「っ!この面倒な小道具はっ!」
三人が部屋の入口へ振り向くと、そこには、誰とも一緒に行動していない、完全に独立して動いていたはずの人物
ユカイが、指先を銃の形にして立っていた。




