元の世界には城にて
「ついたっと」
マルチが森の中で足を止めた。
「え?」
ハヤトはじんじんと痛む腕を振りながらマルチをみつめる。
そこで、ハヤトは
「ここって、なんなの?」
とマルチに尋ねた。
だが、マルチは首を傾げるだけで何も答えない。
「…そんなことより、少し待ってて!」
そう言うと、マルチは一人で奥に歩いていった。
「えっ……」
置いていかれたハヤトはただ呆然と立ち尽くしている。
数分後、ハヤトの目の前が歪み始めた。
歪みが少しづつおさまっていくと、ただの木の集合が小屋へと変化していった。
「な、なにこれ…」
「や、驚いた?」
唖然としていたハヤトに、マルチが後ろから声をかけた。
「マルチ、これは?」
「僕の能力でね、物を隠しておけるんだ。」
「へぇー?」
「さ、案内するよ。」
そういって、マルチは再びハヤトの腕を強くつかみ、小屋の中に引っ張っていった。
小屋の中は、中央に小さな机と椅子があり、藁で作った布団と木製の棚があるだけで、とても質素な内装だった。
マルチの衣装とは全く対称的に見える。
「えっと…」
「椅子にでも座ってゆっくりしていてよ。」
そうしてマルチは棚を弄り始めた。
その間、ハヤトが小屋を見渡したが、ところどころに土のようなものが付着しており、部屋全体が少し湿っているように見える。
雨で濡れた後などではなく、まるで壁そのものからに水分がしみ出ているような…。
そんなことを考えていると、マルチが干し肉のようなものと、お茶を持ってきた。
「こんなものしかないけど、よければ。」
「あ、ありがとう…?」
マルチも椅子に腰をおろし、干し肉をかじった。
「マルチ、ここってなんなの?」
「ん?ま、そのはなしは置いておいて、君の目的は帰ることだろ?」
「え?」
あからさまに話をそらされたが、マルチはそのまま話を続ける。
「元の世界に帰るには、近くの城に行く必要があるんだ。」
「ただ、城の周りには危ない生き物が多いから、僕が案内してあげるよ。」
「これまでも何人も帰してきたからね。」
ハヤトは、マルチの言葉に違和感を多く感じたが、一人でどうにかなる状況ではない。と高をくくり、今の話を追及することにした。
「城、って?」
「城は城だよ。想像通りの巨大な城だよ?」
「そこに、扉があってね、そこが元の世界に繋がっているんだ。」
「あと、生き物ってどんななの?」
「狂暴で、動くものを見境なく襲う生物だよ。」
「知らないとすぐに襲われて殺されちゃうからね。」
そこから、少し気になることをいくつか聞いた。そして、最後に
「…仲間がいるんだけど、一緒に探してくれない?」
「…仲間か。とりあえず、君を帰してからみんなも帰すよ。」
「え?でも、生き物……」
「さぁ、行こう!」
話を遮られ、その隙にハヤトはマルチに腕を捕まれ、小屋の外に引っ張り出された。
そして、先ほどとは比べ物にならない速度で走り出していた。
ハヤトが一切ついていけない速度で…




