第三十七話 魔法使の手合わせ
「おい!旅の人!はよう乗れ!」
「ち、ちょっと待ってくれ…」
ベアロウの上に乗ったクルナが早く乗るよう、急かしてくる。
今は大体、朝の六時だ。
「ちょっと朝早くない?」
「今から行かな、時間が無いんじゃ!」
「はあはあ…」
そうして、クルナと五人を乗せたベアロウが歩き出した。
「兄ちゃん達、またな!」
「うん、バイバイ!」
そうして、なんだかんだお世話になった、部族の皆にあいさつをして、別れた。
「よし、おぬしら、しっかり捕まっておけ!」
クルナが合図を出すと、ベアロウの速度がどんどん上がっていく。やがて、捕まっているのがやっとな程になったが、ベアロウが選択する道は自分達に影響の無い道を選んでくれるので、快適といえば快適だった。
そうして、三日が過ぎた頃、
「ベアロウが疲れておる。これは、丸一日進めんぞ。」
「そりゃあ、三日も走ってたら疲れるわよね。」
丸一日空いたので何をしようかと思っていたが、突然、
「戦闘の確認でも、しませんか?」
ユカイが言った。
「丸一日あるなら、いいわね。」
「ハヤト君が出るなら私も…」
「うん。いいよ。」
「……」
「なんじゃ?なにかするのか?じゃあ、少し離れてくれ。ベアロウの面倒を見るからのう。」
「分かった。」
そうして、少し離れた草原のような所へ来た。
「最初は誰からします?」
「…俺が、いっていいか?」
フリスが手をあげた。
「え?!、フリスさん、戦えるんですか?」
「まあ、一応…」
「それなら、相手は私がするわ。」
ユリナが言った。
そうして、フリスとユリナの練習という名の、フリスにとっては初めて見せる場。ユリナにとっては懐かしの人物の可能性を追求するための戦いが始まった。
まずは、ユリナが杖を振った。すると、炎の玉がポンッと出て、フリスの方へ揺らいでいった。そこに、もう一度杖を振って、空気を揺らした。すると、炎の玉の動きが不規則に変化し、フリスは後ろへ移動した。
「ほら、逃げてばかりじゃなにも出来ないわよ!」
先程と同じ行動を繰り返すユリナ。フリスも、そろそろまずいと思ったのか、杖を振って、氷を作り、その氷を勢いよく飛ばした。すると、その氷が炎へ当たり、二つとも消えて無くなった。
「え!?フリス、あんなこと出来るの!?」
「…攻撃力が小さいユリナにとってかなり、きつそう…」
そうして、フリスが氷をユリナに向かって飛ばし始めると、ユリナは鉄のような盾を自分の前に創った。その裏から、フリスに向かって色々な魔法を使うが、フリスもほとんど捌いている。
「フリス、強くない?」
「うん、強いよ。」
「あの人、なんでこんなに隠してたんでしょう…」
そうして、フリスが上空に杖を振った瞬間、ユリナがフリスの逆方向へ走りだした。その数秒後、ユリナの元々いた場所へ小さな雷のようなものが落ちた。小さなといっても、くらえばかなりのダメージになるだろう。そして、離れたユリナが、戻ってきた。
「…魔法って、凄いね…」
「…そうですね。」
そうして、二人がまた、杖を構えた。




