第三十六話 悩みを解決に向けて
その日の夜、ハヤト達はクルナの部族から、大きなもてなしを受けていた。
「ほーら!もっと呑まんか!」
「よーし、六杯目!」
「うぉぉぉ、魔法の人やるね!」
「これ、美味い!なんだこれ!」
「それは、このあたりでとれる栗蜘蛛ね!身が大きくて、栗のように甘いの!」
「ハヤト君、これも!」
もごっ!
「は、はっへ、ははひ」
「うわぁ!どこいった!?」
「ここでーす!」
「うわぁ!片目の兄ちゃんも凄い!」
ドンチャン騒ぎをやっている中、フリスは少し外の空気を吸いにでていた。
「はあ……」
「おう、兄ちゃん、どうした?」
「ん?あんたは?」
「俺は、ライオン使いのレックス様だ!」
「…レックス、少し聞いてくれるか?」
「おう、いいぜ」
「俺は、記憶喪失ってやつで、一年前くらいまでの記憶しか無いんだ。」
「ほう、」
「それで、あのメンバーの中にいて本当にいいのか気になってるんだ…」
「一年前ってのはどんな記憶だい?」
「なにかから逃げてる記憶だ。それが、なにから逃げていたのかは分からない…」
「ほう?」
「でも、前に、あいつらと出会った日の夜、なにかの声が聞こえたんだ。思い出せって。」
「…それは、本当に記憶喪失なのかい?」
「え?」
「昔、俺も似たような経験があってな。確か二十年くらい前に、魔物に襲われたんだ。その魔物から逃げていたら、突然記憶が消えてたんだ。その後、どうしようかとフラついてたらクルナ様の一個前の長に出会った。その方から、生きるべき道を教えてもらったとき、記憶を取り戻せたんだ。その生きるべき道を教えてくれたのは俺の中では前の長だ。お前にとってはだれになるか知らんがな。」
「…生きるべき道」
「じゃあな。俺はもっかい飲み直してくるぜ!」
「ああ、ありがとう。」
俺にとっての生きるべき道は…
「あ、これも美味しそう!」
「おーい、ハヤトくーん!…あれ?」
お皿に大量の食事をのせたアカリがハヤトを探すが、見つからない。
「トイレでも、行ってるのかな?」
そのころ、ハヤトは外に出ており、カルラト達の所へ向かっていた。
「おお、ハヤト、来たか!」
「何の用?」
「お前、父親を探して旅をしてるんだってな。」
「どうしてそれを?!」
「うちにいる、とある婆さんが九厘九分当たる占いをやってるんだ。」
「それで、ハヤトの事を調べたら父親を探してるって出たんだ。」
「それで?なにが目的?」
「いいや、ただ、お前はなにか悩んでるように見えたから呼んだだけだ。父親の件は全く関係ない。」
「…お前、何に悩んでるんだ?」
「……」
「その反応、本当に悩みがあるんだな。」
「えっ?」
「まあいい。言いたくないなら言わなくてもな。」
「悩みってのは未来だ。どう解決するか考えて最適を見つけることだ。」
「ただ、そんな未来の話ばっか考えても疲れるし、いくら考えても最適は見つかりにくい。だから、俺は、今を最適にしてるんだ。今の最適のほうが、リアルで分かりやすく解決できる。しかも、考えることが多くない。だから、悩みなんて無駄。俺はそう思ってる。」
「悩み…未来…最適…。」
「まあ、あとはお前次第だ。」
「あっ!後、好きな人に好きになってもらうためにどうしたら良い?」
「えっ?」
「ほら…クルナにさ…」
「…自分に言われても」
「頼む!ハヤト師匠!」
「えー……。」
そうして数時間後、やっと戻れたと思ったらアカリによるお仕置きが待っており、次の日かなりボロボロの状態で、ノートリアムへ向かうのだった。
バンディードの襲撃まで、あと十五日




