第三十二話 魔王の陰謀と部族の喧嘩
「ねえ、ノートリアムまであとどのくらい?」
「大体三分の一くらいだと思うわ。」
「ええ、一週間歩いてそれだけ?」
「ウェステリスからノートリアムまで二十日くらいかかるって先に言っておいたでょ?」
「そうだけど、」
アカリとユリナの会話を聞きながら後ろで無言で歩く男三人。
三人ともそれぞれ悩みを抱え、歩いている。ハヤトは竜と勇者の力、そして聖騎士や魔王に関して。フリスは自分の正体に関して。ユカイは自分と他との違いに関して。
このままバンディードと戦って本当に勝てるのだろうか…
同時刻
禍々しい森の中を、人ならざるもの、魔王が歩いている。その先にあるのは闇に包まれた巨大な洋風の城だ。
城の中の待ち合わせていた場所に行くと、そこには三人の男女が腰を下ろしている。
「魔王様、こちらへ」
男が一人、立ち上がり、魔王を席へ案内する。
「うぬ。」
「お前達、今、【現界】で起きていることは把握しているな。」
「はい。まず、ユカイが勇者と共に旅をしており、二人目の勇者がいる場所へ向かっております。」
女が答え、
「そして、魔物を生み出している者や、次の王の器が決まろうとしています。」
先程とは違う男が答える。
「そうだ。いま現界では、こちらにとって、かなり厳しい状況になっている。」
「そして、こちらの【魔界】でも収容していた人間の脱走、戦力の不足、など様々な問題がある。」
「そのうえでお前達【四天王】に命を下す。現界に行き、王の器と勇者を全員抹殺せよ。」
「了」
「それでは解散だ。」
そうして散り散りになっていく四人。
魔界とは、四天王とは何なのか。それが明かされるのはまだ先の事だ…
数日後
五人の歩く先に揺らめく赤い光が見える。
「灯りだ!灯りが見える!」
アカリが興奮気味に言う。
「あれって…まさかっ!」
ユカイがはっとなり、走り出していたアカリを止めた。
「ダメです!あれはこのあたりを放浪している二つの部族が喧嘩を始める合図です!」
「二つの部族?」
「ええ、ここには力こそ全てと考える部族と猛獣と共に成長していく部族があります。その部族同士、とても仲が悪く、一説によれば百年以上前から喧嘩していると言われています。」
「なんつー部族…」
「しかも、以外と戦闘能力も高いので、油断していたら殺されるという事例も少なくないそうですよ。」
「じゃあ、あまり近づかないほうが良いよね。」
「はい。でも、かなり遠回りになりますよ。」
「大丈夫だ。それくらい。」
そうして大きく弧を描き、逃げようとしたのだが…




