第二話 感謝と旅立ち
40年前、【魔物】と言われる存在が、突如出現した。魔物は、この世界の生物を次々と殺戮し、破壊の限りを尽くしていた。
そう、10年前までは────
ハヤトがノゾミと過ごした一夜が明け、いよいよ旅立ちの瞬間が近づいてきた。
「おーい、ハヤトー!」
普段、お世話になっていた厩務員のおっちゃんがハヤトを呼ぶ。
「ハヤト、おめぇ旅に出るのは今日だったよな。せっかくだからおめぇにはこいつをやろうと思ってたんだ。」
そう言っておっちゃんはきれいな茶色の毛並みの馬につながっているリードをハヤトに渡した。
「こいつはおめぇが育てた馬だ。最後まで面倒みてやれ。」
確かにこの馬はハヤトが世話をした馬だ。が普段、無愛想にしているおっちゃんがテンションを上げてこんなことをすることに驚き、ハヤトは少し苦笑した。
次にきたのは農家のじいさん、ばあさんだった。
「旅に出るんだったら食料は多めに持っていったほうが良いよ。」
と言い、野菜やら米やらが入った俵を3俵ほどもってきた。
「まだまだ子供なんだからしっかり食べんさいよ。」
ばあさんがハヤトの背中を叩きながら言う。
じいさん、ばあさんの育てる食物はどれも一級品でとても美味しいが、これ、腐らないだろうか?
その後も世話になった人から道具やら武器やらをいくつも受け取った。
最後に来たのはノゾミだった。ノゾミは手の中に手編みのお守りをもっていた。
「これ、私だと思って大切に持っておいて。」
そう言ってノゾミは、お守りをハヤトに手渡した。
「ノゾミ、…ありがとう」
「それじゃあ、行ってくる!」
集まった村の皆に手を振って、生まれ育った故郷を後に父親探しの第一歩目を踏み出した。