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67 勇者の真意 その14

 『そうよパル。お母さまの言うとおりだわ』


 リリザ!?

 

 『殴って殴って殴って、ぶん殴って。最後まで立っていたものが勝者なのよ』


 母さんそんな事言ってなかったけど、幻だから支離滅裂だな。


 『ちょっとだけだけど教えてあげたよね。私のオリジナルの技。天狐封神流の技とは違う、私だけの技。魔術と体術を組み合わせた技』


 そうだ。リリザの封印が解けた後、ほんの少し教えてもらった。

 天狐封神流の挨拶のほかにもう一つ。


 『あの技は自分で言うのもなんだけど、かなりいい線行ってると思うのよね。だけどね、パルはもっと上に行けると思うのよね。ほら、エルフって魔力の扱いがうまいじゃない? だからね、波動と拳法と魔術。ほら、もう三つ全部ある』


 うん。三つあるね。でも相性の話は技と魔術と力だから。それに魔術の力は全然足りてないから。


 『大丈夫よ。波動だって目覚めたんだから。魔術だってちょちょいのちょいよ。ずっと私のそばにいたんだから。パルは本当は気づいているわ。自分の中の魔力の存在にも』


 うん。たぶん分かる。あの温かいやつ。

 リリザの近くにいると感じるあの温かいやつ。

 ボクの中にも小さいけどある。


 『じゃあ大丈夫ね。ほら、あとはぶちかますだけよ』


 うん。


 『リリザさんだっけ? ありがとね、パルにいろいろ教えてくれて』

 『いいんですよお母さま、私もパル君にはいろいろお世話になってますから。あんなこととかこんなこととか』


 ちょっと待って!? 人の幻想内で会話を始めないで!?


 『『あ~~~』』


 ボクは二人のイメージをかき消して気を取り直す。


 もう大丈夫だ。やることは一つ。

 波動と魔力を組み合わせた拳法であいつをぶっ倒す。


「……さま、……る……ま」


 声が聞こえる。

 マルガレッテがボクを呼んでる。


「パル様! パル様!」

「行かせはせんぞ、マルガレッテ」


 意識が覚醒する。

 とたんにわき腹の痛みが襲ってくる。

 血の流れ具合からして頭の中の幻想はほんの僅かな時の出来事だったようだ。


 落ち着いて。まずは痛みを何とかする。

 ボクはゆっくりと呼吸し、波動で痛みを和らげる。


 そしてもう一つ。

 リリザやマルガレッテの優しさ、温かさ、そんなふうに感じていた魔力。ボクの中にある同じようなモノを高めて、わき腹に集中する。


「パル様の傷が!」


「小僧、魔術も使えるというのか!?」


 とりあえず血を止めただけだ。

 全治というわけじゃない。だけど血は止まったし、痛みは気にならない程までやわらげた。

 さあ、あとはお前をぶっ倒すだけだ!


 ボクは立ち上がると静かにその言葉(・・・・)を口にする。


「ボクはお前をぶっ倒す。次の一撃で」


「くはははは! 何を馬鹿な事を。痛みで頭がおかしくなったのか?」


「油断してくれてもいい。だけど全力の一撃で来ることをお勧めする。全力を出さずに負けてしまったなんて、かっこ悪いだろ?」


「ふん。貴様ごとき小僧に全力を出すなど勇者の名が廃るというもの。だが、あえてそれを受けたいというのであれば応えんわけにはいかん。お望み通り最強の技を披露しようじゃないか。魔王ゲゼンガルズを打ち取った奥義をな!」


 そしてお互い距離を取る。

 己を高め、最高の技を出すためだ。


「マルガレッテ、離れていろ。俺の奥義の威力をキミなら知っていよう。その場所にいると小僧ごとキミを巻き込んでしまう」


「そうだ、こいつの言う通り、離れてて、ってさっきまでのボクなら言ったと思う。だけど、安心していい。そうはならないから」


「分かりました。パル様を信じます」


「マルガレッテ! キミは俺ではなくこの小僧を信じるというのか!?」


「そうです。先ほどお伝えしたばかりですよね。レオナード様のことは信じられないと」


「ええい、もういい! そこまで言うのならそこにいるがいい。マルガレッテは華麗に散ったと国王には報告しよう」


「華麗に散るのはお前の方だ!」


 勢いよく啖呵を切ったボクには、なぜか不思議な安心感があった。

 絶対にこいつには負けないであろうという安心感が。


 どんな敵も一撃で倒す拳聖グランドラの姿。絶対に揺るぎないその姿にボクの姿が重なって、さらに強大な相手も倒すイメージがはっきりと見えている。


 そんな風に落ち着いた心を目の前の敵を打ち倒すために高めていく。


 ヤツの周りに轟々と燃え上る8つの火柱が発生する。

 その火柱はヤツの周囲を回転しながら混ざり合い、そしてヤツの二本の剣と一つになる。


「塵一つ残さん。このレオナードの秘剣を食らうがいい!」


 敵さんの準備は完了したようだ。

 もちろんボクの方も完了している。


「「いざ!」」


 お互いの声が重なった。

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