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55 勇者の真意 その2

 リリザは腕を斜めに伸ばし上げ、今にも飛び跳ねんとばかりの嬉しさを表現している。


「うーん。それで、この中に入るの?」


「いえ、待ちましょ。もう夕方だし、そろそろ勇者様も戻ってくるに違いないわ。それよりパル、私の髪の毛おかしくないよね? ほらこことか」


 黒く長い髪。その先端が気にかかるようで、くるりとカールしている部分に指を伸ばすリリザ。


「大丈夫だよ。それさっきも言ってたよね。しっかりとボクが直したじゃないか。だいたいリリザ、出発しようってなってから、また髪が気になるから、お化粧がどうのこうの、服装がなんやかんやって、言って、結局こんな時間になったんじゃないか」


「だ、だってー、久しぶりに勇者様に会うのよ? 見違えたよ、美人になったね、って言って欲しいじゃない」


「はいはい。何度も聞きました。美人美人。リリザは美人だよ」


「何よそれ、心がこもってない! まあおこちゃまのパルには私の色気が分からないかもね」


「ボクは子供じゃない!」


「へー、じゃあ私の魅力、分かるんだ?」


「わ、分かるさ!」


「じゃあ言ってみてよ。3、2、1」


「ええーっと、強い?」


「ぶぶーっ、はずれです。パル選手一回戦敗退です。だいたい魅力を問われて強いって返すなんて、それじゃあ女の子にモテないわよ」


「うぐぐ」


 リリザの放った正論にパルが黙ってしまった。

 当のリリザもパルをからかい過ぎたと我に返る。ようやく勇者に会うことができるため相当に舞い上がっていたのだ。


 二人がそんなやり取りをしていると、洞窟の中から規則正しい金属音が反響して聞こえ始めた。

 その音はだんだんと大きくなって、やがて茜色の光が差し込む洞窟に二つの人影が現れる。


「勇者様!」


 現れたのは男と女の二人組。

 金色の髪と青い目をした美形の男。赤色に光る金属鎧で全身を固めている。特徴的なのは左右の小手の部分に小さめの金属板が二つ付いていることだ。光が反射して赤く輝くそれは小型の盾に見えなくもない。

 もう一人の女性は小柄で、白を基調としたローブを身に纏っている。装飾品の類は身に着けていないが、金色の髪が肩から胸元辺りにかかっており、そのつつましやかな体を装飾しているようにも見える。手に持つ杖は軽さを重視しているのか細身であり、先端部分には羽のような装飾が施されている。


「リリザか」


 男は足を止め、一言そう答えた。


 そんな様子はお構いなしに、リリザが走りだす。


「勇者様、お会いしたかったわ! 私の愛を受け取ってー!」


 先ほどまでのもじもじした態度は嘘のよう。

 腕を広げてそのまま勇者へと抱き着くように飛び込んだが、勇者はさっと身をひるがえしてリリザの動きを回避した。


「あん、どうしてお避けになるの?」


「魔物の血で汚れているからだ」


 金属鎧にはいくつもの血糊が付いている。リリザがそのまま抱き着けば汚れてしまっただろう。


「ああん、そんな所も大好きです」


 感極まったのか、頬に手を当てて体をくねくねと動かしている。


「リリザ、この人が勇者様?」


「ええ、私の大好きな勇者様! 勇者レオナード様よ」


 レオナードの横に立ったリリザは彼の方へ両手を向けてひらひらと動かし、近寄ってきたパルに紹介する。


「リリザ様、お久しぶりです」


 レオナードの横にいた女性がローブの裾を両手でスッと持ち上げて、見事な儀礼的なおじぎ(カーテシー)を披露する。


「マルガレッテも久しぶりー、元気してた?」


「はい、健やかに過ごしております」


「マルガレッテ、積もる話もあるだろうがそれは後だ。まずは拠点に戻ろう。リリザも一緒に来るといい。もちろんそこの子供もだ」


「子供! ボクはパルだ! 子供じゃない!」


「そうか。それでは行くぞ。ガ・ウワー・ルック・グロ・カスル・ギリンズ・クダ・マルケス・グルガ・ルー・ガヌレス・トマスクス。拠点転移(シベーラ)


 勇者が詠唱を終えると四人の体が聖なる光に覆われて空へと飛び上がる。一瞬空中で停止したかと思うと、その場から消えたかの様に見えるほどの高速で移動し始めた。


 空を駆ける流れ星のように夕暮れの空を飛ぶ4人。

 そんなに時間もかからずに、とある街の郊外にあるお屋敷にたどり着いた。


 二階建ての白壁の館。黒い鉄柵で囲まれた敷地内は庶民の家に比べると遥かに広いが、貴族の屋敷としてはこじんまりとしている。小さくまとまった庭にあるのは手入れの行き届いた花壇や噴水。それらが館の趣を深めている。


「お帰りなさいませレオナード様」


 帰還魔術の着地音を耳にした初老の使用人が館の玄関から現れ、主に向かって深々とお辞儀をする。


「ああローゼス、客だ。頼んだぞ」


「かしこまりました。お食事は後程。レオナード様とマルガレッテ様は先に湯浴みをなされてください」


「ああ」


 それだけ言うとレオナードは館に歩を進める。

 マルガレッテはリリザとパルにペコリと一礼をし、その後を追っていく。


「お嬢様、お坊ちゃま、わたくしめはローゼス。この館の執事をしております。以後お見知りおきを」


「初めましてローゼスさん。私はリリザ、こっちはパルよ。よろしくね」


「リリザ様、パル様ですね。それではお部屋までご案内いたします」

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