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53 強くなりたい その16

「ちょ、ちょっと、リリザ! ダメだよ、本当の名前、知られたら危ないってひいおばあちゃんが言ってたじゃないか!」


「いいの。パルになら教えてもいいの。ううん、パルには知っていて欲しいの。私の本当の名前を」


「リリザ……」


 アマガサキ、マヤ……。リリザの本当の名前。

 大切な大切な名前。


「それとね……」


 その後、ボクはリリザからいろいろな事を聞いた。

 暗黒教団の事、日本という国の事。異世界召喚の事。勇者の事……。

 いつも笑顔で活発なリリザの様子からは想像もできないような事情だった。


「パル、なによ、そんなしんみりした顔しちゃって、あ、そうだ。私の本当の名前を知ったからって、エッチなことに使ったらだめなんだからねっ!」


「エッチなこと?」


「お、おほんっ! なんでもないわ!」


「変なリリザ」


「でも、パルにだったら、ごにょごにょ」


 最後の方は聞き取れなかった。すごく眠くなってきたからだ。

 前にリリザが言っていた回復の眠りというやつだろう。

 急激な再生や回復の後は回復に使った体力を元に戻そうと眠りがやってくるって。


「リリザ……ちょっと、眠らせてもらうね……」


 もう目を開けてもいられない。


「うん。おやすみパル」


 まどろむような意識の中。ボクの頬に何かが触れた感じがした。


 ◆◆◆

 

「行くのか?」


「ええ、とてもお世話になったわ。ありがとう!」


 儀式が終わってから二日。

 ボクが丸一日寝てたので、起きてから旅支度。準備が整ってさあ出発だ、というシーンだ。

 エルフの里の外、そこでボク達とひいおばあちゃんが向かい合っている。

 リリザとおじいちゃんが壊した壁は元に戻っている。

 ボクが最初に見た光景と同じだ。


「すまんなリリザ」


「心配しないでおじいちゃん。私、ちゃんとやってみせるから!」


 おじいちゃんはボク達の対面、エルフの人たち側にいる。その横には女エルフさんが立っている。傷ついたおじいちゃんの治療をした人なんだって。


「グランドラ君のことは任せて。こんなおばあちゃんに若い子が求婚してくれるなんて光栄だわ」


 そう言いながら女エルフさんはおじいちゃんの頭を撫でている。


 女エルフさんは200歳を超えてるんだとか。ボクの目にはひいおばあちゃんと同じく若く見えるんだけど。おじいちゃんも未婚、女エルフさんも未婚で、どうやらお互いのニーズ、おじいちゃんから見たエルフさんの姿とエルフさんから見たおじいちゃんの魂の若さ、が一致したらしい。


「あのですね、ワシは人間では老齢なので子ども扱いはよして欲しいのですが……」


 ああ言っているけどおじいちゃんはまんざらではないみたい。

 二人ともお幸せにね!


「ひいおばあちゃん。行ってくるね。また来るから。その時はお父さんの事聞かせてね」


「ええ。待っています。いつでも戻っていらっしゃい」


「うん!」


 こうしてボク達はエルフの里を後にした。


 この後はとうとう勇者様とやらに会うのだ。

 リリザがいつも大好きだって言っている勇者様とやらに。


 好きな人と結ばれるのはいい事だ。父さんと母さんを見ていたからしみじみとそう思う。

 さっきのおじいちゃんと女エルフさんもそうだ。

 だからリリザもきっと幸せになれるはずだ。

 というか、リリザが勇者様とやらの話をするときはとても幸せそうな顔をしている。きっと幸せになれるだろう。


 だからいい事なんだ。


 なのになんだろう。このもやもやっとした感じ。

 リリザの喜ぶ顔を見たいのに、その光景を想像するのを止めてしまう。


 その原因に心当たりはある。

 リリザが勇者様と会うってことはつまり、リリザの旅は終わる。

 最初に出会った時に約束した。ボクは旅のお供。旅が終わればリリザはボクと一緒にいる必要はない。


 長かったようで短かった旅。

 オーガの里を出て、初めて人間の町に行って。ドラゴンは聞いてた以上に大きくて、だけどリリザはもっと強くて。海も初めて見た。魚介類は美味しい。港町ではお金に困った女の子エミィを助けたり、歩くと音がする鎧を着たホワニーに出会って。

 そしてリリザの師匠、グランドラおじいちゃんと再会して、封印を解くためにエルフの里に来て。


 リリザと一緒にいろんな事をしていろんな事を教えてもらって。


 その旅も終わる。

 それが寂しいからに違いない。


「どうしたのパル? また痛いの? 死者蘇生魔術かけようか?」


「違うよ。大丈夫」


 死者蘇生魔術って死んでしまった人でも復活させるような最高位治癒魔法でしょ?

 もうリリザが何をやっても驚かないけど。


「そだ! パルあれやろうよ。挨拶」


「挨拶?」


「そうそう。天狐封神流の挨拶!」


「ああ、それがね、おじいちゃんからは教わってないんだよね」


「じゃあ私が教えてあげるね! まずはこうして腕を交差させて――」


 何やら講義が始まった。

 笑顔を見せてくれるリリザに、いつのまにかボクの心のもやもやはどこかに行ってしまっていた。


 ◆◆◆


 ――どこかの場所 勇者レオナード


「むっ……」


「どうしましたかレオナード様」


「いや、なんでもない」


「それならばよろしいのですが。最近お疲れのご様子。お早めにお休みください」


「ああ、ありがとうマルガレッテ」


 なんでもない事ではないのだ。リリザに施していた封印が解かれたのだからな。

 対策を練らなくてはならない。今すぐにでも。


 まずは町に転移して、マルガレッテを安全な場所に……。


 この時のためにこれまで準備を重ねてきたのだから。

お読みいただきありがとうございます。

これにて第4話はおしまいとなります。

タイトルでネタバレしているのにまったく出てこなかった追放理由がここで明らかに。パルの過去、リリザの過去という重めのお話もつっこまれた今話でした。


次話、とうとう勇者様との再会! いったいどうなるのか。


面白い、続きを読みたい、と思われた方は、ブックマークや、この下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援ポイントを付けて頂けると作者はとても喜びます!


ちなみに「ゆうしゃさま」と呼称すると私は某魔法陣漫画を思い出します。

それでは引き続きお楽しみください!

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